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【連載】新任さんいらっしゃい 法学・松田浩道先生 前半

新しく赴任された先生を対象に行うインタビュー企画「新任さんいらっしゃい」。今回は、昨年度からICUに赴任された松田浩道先生にお話をうかがった。このインタビューでは松田先生が担当した2017春学期一般教育(GE)日本国憲法を実際に受講した記者が取材した。今回は、松田先生のご協力のもとで映画鑑賞会や読書会を企画・参加している学生との対談も含めた記事を、前編・後編に分けて公開する。

(※インタビューは再構成済み)

 

——赴任されて約1年間、ICUについてどう感じましたか?

学生が個性的で、非常に面白いと思います。しっかりと自分で考えようとする姿勢が素晴らしいですね。ICU生の皆さんの鋭い指摘にはいつも考えさせられ、研究につながるきっかけをたくさんいただいています。

特に嬉しいのは、私が授業で述べたことを鵜呑みにせず、コメントシートなどでしっかりと反論してくれることです。他大学では考えられないことですが、ICU生の皆さんのcritical thinking の能力は信頼できますから、授業では論争的なテーマについて様々な考え方の道筋を示した上で私自身の意見を述べ、それを皆さんの批判的検討に委ねて真剣勝負のディスカッションを展開してゆく授業が成り立ちます。ICU生と自由かつ徹底的に議論を交わし、皆さんが私の考え方を乗り越えてゆく過程を見守るのは本当に楽しいことです。読書会・映画上映などを自主的に開催する活動も盛んで、ICU生の主体的な学びを応援できるのはとても楽しいです。

そして、ICU生は極めて優秀です。私がICUに来てから取り組んでいる模擬裁判活動では全国大会でたくさん受賞していますし、Japan ICU Foundation の助成を受けて初出場したネルソンマンデラ世界人権法模擬裁判大会では、ICUチームは世界の法学部生やロースクール生と競い合って予選を突破し、ジュネーブ国連本部でアジア代表として弁論を行いました。ICU生は世界トップレベルの能力を持っていますから、それをしっかりと引き出し(educate)、どこまでも伸ばしてゆく教員の責務は極めて重いと感じます。

環境面では、ICUの豊かな自然はとても貴重だと思います。皆さんも卒業してICUを離れてみたらよく分かると思いますが、自然豊かな環境に囲まれてじっくり物事を考えるということは本当に大事なことですから、ぜひICUでの時間を大切にして欲しいと思います。この寮(取材場所は今年4月に開寮した楓・樅寮のリビング・ダイニング)や教室、オスマー図書館にも対話を通じて学ぶというICUの教育理念がよく表れており、気に入っています。図書館をはじめ、スタッフの皆さんも大変親切で、助かっています。

 

——ICUに赴任された経緯について教えてください。

それを話すと非常に長くなります…。本当に色々な経緯がありました。春学期の「一般教育 日本国憲法」では、「良心の自由」との関連で、かなり立ち入ったところまでお話しすることになりました。

 

——ICUを選ばれた理由を教えてください。

私は選んでいないのです……。ICUの法学は、日本はもちろん、世界的にみても超一流の伝統を有しています。私は、鵜飼信成先生、奥平康弘先生、山本草二先生、横田洋三先生、最上敏樹先生といった世界を代表する法学者の論文を読んでいますから、ICUの法学のポストはどう考えても私のような未熟者が引き受けて良いものではない、ということをよく分かっていました。

鵜飼先生にさかのぼるICU憲法学という超重要ポストに私が選ばれた理由は、いまだに全く分かりません。ただ、ICUで何をすべきか、何のためにここに呼ばれたのか、ずっと考え続けて、自分が果たすべき使命が少しずつ見えてきたような感覚はあります。

 

——使命というのは具体的には何ですか?

ICU生とともに献学の理念を探究することに尽きると思います。私はICU出身ではなく、外からの視点を持っていますので、良い点も悪い点も、ICUの中にいる人がなかなか気づかないようなことを新鮮な驚きを持ってみることができると思います。春学期の「一般教育 日本国憲法」の冒頭では、歴史史料室で探し出した1964年の新入生オリエンテーション資料「大学の理念とICUの教育 新入生のために」を読みました。当時の鵜飼信成学長を筆頭に、長清子先生、神田盾夫先生、Maurice Troyer先生、高山晟先生といった錚々たる顔ぶれによるメッセージは、すべてのICU関係者が何度でも熟読すべき名文です。ICUがどのような歴史的経緯のなか、どのような特別な思いによって献学されたかを踏まえ、「国際」・「基督教」・「大学」というそれぞれの観点から、ICUは何をすべきか、皆さんと一緒に考えたいと思います。

 

——法学を志したきっかけを教えてください。

高校生の頃、私は J.S.Bach 「平均律クラヴィーア曲集」、「ゴールドベルグ変奏曲」、「イギリス組曲」等に感銘を受け、作曲を学びたいと思っていました。音楽の先生に和声の初歩などを習って音楽を専攻する準備も少しばかりしていたのですが、あいにく才能が決定的に不足していました。音楽はまた後で帰ってくることもできるかも知れないと思い、高校の担任の助言もあって、まずは大学で歴史か法のどちらかを学ぼうと考えました。ゼミでデカルト、マックスウェーバー、J.S.ミル、ルソーなどを原語で読んだのは本当に楽しかったです。人権論には高校生の時に『社会契約論』などを読んで以来、一貫して関心を持っており、研究への関心はかなり早い時期からあったのですが、しばらく大学に行けなくなったりと、色んなことがありました。結局、学部卒業時には一番関心のあった法哲学を専攻するのではなく、法科大学院へ進学したのですが、その本当の理由は恥ずかしくてインタビューでは言えないです……。

 

——先生の研究分野について教えてください。

人権論を中心に、国際法と憲法の両方の観点から公法学を研究しています。アメリカ合衆国における人権法の父と呼ばれるLouis Henkin教授(Columbia Law School)による”Foreign Affairs and the U.S. Constitution”という古典的研究があるのですが、私は「対外関係と日本国憲法」に関する研究をまとめてみたいと思っています。さらに、ICUの授業におけるコメントシートのやりとりを基礎にして、現在の通説的見解に挑戦する憲法理論を探究してみたいと思っています。今後は、これまでの研究をまとめることに加え、矢内原忠雄、南原繁、新渡戸稲造、エーリッヒ・フロム、カール・ロジャーズなども本格的に研究したいと思っています。

 

——先生の研究は憲法秩序における国際規範とお聞きしたのですが、簡単に内容をお聞かせいただけますか?

日本の憲法秩序において、「国際規範は憲法98条2項によって国内法としての効力を持つ」とされますが、国際規範が実際にどのような法的効力を持つのか、当事者が裁判所においてどのように国際規範を用いることができるのか、非常にわかりにくい状況となっています。弁護士や公務員など、実務家の方々が国際規範を適切に用いることができるよう、理論的な整理を試みています。

 

——先生は多くの映像作品の鑑賞会を企画しておられますがその狙いは何ですか?

ほとんどの映画上映はICU生の皆さんが自主的に行っているもので、私も後ろで楽しく観ています。学生のうちに良い映画をたくさん観ておくことはその後の人生においてとても大切だと思います。卒業すると今よりずっと忙しくなり、ゆっくり映画を観て、じっくりと考え、友人と徹底的に議論をして、といった深い学びの機会を持つことは難しくなります。三鷹はスタジオジブリの地元ですし、新々寮のリビング・ダイニングでジブリアニメを上映するなどの企画は、留学生・四月入学生・九月入学生の交流のためにもおすすめです。雨の日に森に囲まれたICUのバス停で傘をさして待っていると、よくとなりにトトロが現れます(笑)。今後も、ICU生の皆さんの主体的な学びを応援したいです。

 

——鑑賞会に対する反響はどのようなものでしょうか?

上映後のディスカッションを聞いていると私も学ぶところが多く、とても良い学びの機会になっていると感じます。

 

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