ICUへの提言
〜コロナ禍とハウジングオフィス〜

 

 ワクチンの供給が始まり、収束への光がようやく見え始めたコロナ禍。その一方で、都内の感染者は増加傾向にあり、7月12日には4度目の緊急事態宣言が発令された。

情報統制か公開か 〜コロナウイルスの寮内感染を巡って〜(2021年3月20日掲載)

 このコロナ禍に際し、本紙は今年の3月に公開された上記の記事で、寮内感染の事実を学生に対して公開しようとしない大学側の対応を調査した。その記事の中で我々は、情報を公開せずに混乱を招くより、感染拡大を防ぐために学生が必要とする情報を提供すべきという意見を述べた。しかし、これは大学側には全くと言って良いほど響かなかったようだ。

 依然として学生側に十分な情報が伝えられない中、6月に某寮で新型コロナウイルスの感染者が発生した。これを受け、ハウジングオフィスは当該フロアのフロアリーダー、副フロアリーダーに電話で「感染の事実を同じフロアの学生に対して当分の間知らせないよう」に指示したという。

 

経緯

 上記のように、この感染の判明から間を空けずハウジングオフィスから当該フロアの副フロアリーダー、次いでフロアリーダーに電話があったという。その電話の中でハウジングオフィスは、学生の感染を伝えるとともにグループLINE等を通じて、フロア内の寮生にその情報を「まだ」共有しないよう求めた。

 しかし、結局情報共有の許可がハウジングオフィスから下りることはなかったようだ。関係学生は本紙の取材に対し、オフィスの人から「ハウジングの方から言えと強制はできない」と言われたと語った。そして「公式な機関から共有して良いという指示が出せないから、学生が自主的に決定したことにしたかったのだろうか」と推測した上で、「保健所との連携や感染した本人の希望もあるのかもしれないが、指示をもう少しはっきりして欲しかった」と語る。結果として、この電話からフロアへの共有までに丸一日かかり、その共有の判断も学生がしたという。

 

取材と対応

 この情報を得た本紙は、関係学生にインタビューした上で、ハウジングオフィスに事実確認のメールを送った。質問事項は以下の3つである。

質問①当該フロアの学生の感染が判明したあと、ハウジングオフィスの方から副フロア長及びフロア長に電話で「フロアのグループLINE等でその情報を共有しないように」という指示があったそうですが、これは事実でしょうか。
 
質問②それが事実だとしたら、その目的は何であったのか教えてください。また、情報を伏せておくことによって感染が拡大する可能性や不安が広がる可能性についてはどうお考えだったのかもお聞かせください。
 
質問③最終的にフロアへの共有の明確な許可はハウジングオフィスから出ることはなく、寮生が話し合った結果共有したということですが、これは事実でしょうか?(以降引用は原文ママ)

これに対するハウジングオフィス室長の返答は「どのような情報ソースをお使いになられているかわかりませんが、すべて事実ではありません」というものだった。

これを受け、本紙は「上述の情報に関しては、当該フロアの学生数名から得たものなのですが、それらは全て事実ではないということでしょうか?」という質問を送ったが、1週間たった現時点で回答は得られていない。

 

筆者からの提言

 当たり前だが、この記事の目的は感染した学生への非難ではない。さらに言えば、ハウジングオフィスが情報を同じフロアにも共有しないよう指示したことに対する非難でもない。誹謗中傷を受ける可能性のある学生を保護するのは、大学としては当たり前の行動だからだ。その方法に多少の問題がありそうだが、コロナ禍が始まってまだ1年とちょっと、政府ですら確立できていないノウハウが一私立大学にあるはずもない。今回、あくまでも筆者が強調したいのは以下の2点である。

 

①「自治させるのか管理するのかを明確に」

 本紙が得た情報が事実であるならば(オフィスには「全て事実ではない」ときっぱりと否定されてしまったが)、この一連の騒動の中でハウジングオフィスは感染判明時点で「感染の情報をまだ共有しないよう」指示を出している。だが、最終的に共有するかどうかは「ハウジングからは強制できない」として学生に判断を委ねている。それはおかしいのではないだろうか?

 冒頭で紹介した今年の3月の記事でPRオフィスに取材をした時、彼らは「感染者のプライバシー保護の観点から」情報を公開しないことに決めたと説明した。推測にはなるが、その方針が現在まで変わっていないとしたら、今回の「情報をまだ共有しないで欲しい」という指示も、同じ理由によるものだと思われる。しかし、一度学生側に指示を出したのであれば、大学部署として責任を持って、最後まで学生と連携しながら事態を管理し続けるべきである。その際には「まだ共有するな」と指示を出した明確な理由と、いつまでに情報共有の目途が立ちそうかというおおよその時期をはっきりと伝える必要があるだろう。また今回、仮にフロア内で対応を決めて欲しかったのならば、予め「共有するかどうかは本人と相談してから決めてほしい」という旨を学生側に伝えるべきであっただろう。そうすることでどちらにせよより良い対応ができたのではないだろうか。最初に指示を出してから「あとは学生で決めてください」と言うのは、およそ大学の公式機関がとる態度とは思えない上に、学生や関係者に混乱をもたらすだけのように見える。

 

②「学生と対話を」

 この言い方は語弊があるかもしれない。しかし、あえてこう言いたい。個人的に、上述のハウジングオフィスの室長からのメールを思い返すと「情報は絶対与えない」という謎の緊迫感と意思が感じられる。こちらが関係者に話を聞き、事実確認を行った上で送った質問に対しても、室長は「すべて事実ではありません」と非常にはっきりとその事実を否定した。 しかし、我々は何も大学やオフィスを目の敵にしてるわけでもなければ、有る事無い事書きたてて学生を煽ろうとしているのでもない。おかしいと思った点を調査し記事にすることでより良い大学を作ろうと「クリティカルシンキング」しているだけだ。この、質問を「事実ではない」と一刀両断してそれ以降の質問には答えないという態度は、まさに対話の拒否のように映る。もし全て事実ではないのなら、どこがどう違うのか、何が事実なのかを説明するべきだろう。公式ホームページのディプロマ・ポリシーに「自他に対する批判的思考力を基礎に、問題を発見し解決していく能力」を持った者に学位を与えると明記している大学が、このように学生に対して扉を閉ざすべきではない。

 

記事を書いて

 このような内容の記事を書くことには相応の配慮が求められるので、どう切り込むべきか大変に苦労した。重ねて言うが、この記事の主旨は感染者の批判ではない。そして我々が正義の立場に立ってハウジングオフィスを糾弾しているわけではないし、彼らが絶対悪なわけでもない。これは大学のやり方に対する提言である。

 私がうぃーじゃんの社員でなかったら、これを一学生としてハウジングオフィスに「提言」として送っていただろう。その際に大学はどのように反応していただろうか? 3月の記事はサイトに載せたきりであったので、大学側の人の目に届かなかった可能性もある。それを踏まえて、今回はこの記事を大学の各オフィスや可能なら学長にも送りたいと思う。それに対して反応があれば、また本紙で取り上げようと思う。【山本瑛】