ICU入試直前!ICU英語リスニングの傾向と対策
|<英語リスニングについて>
英語リスニングはICUの入試科目の「英語」に含まれる試験であるが、私立大学の入試で英語リスニングが課されることはあまりないため、事前に試験の形式や傾向を把握した上で試験に臨むことが重要である。ここでは受験者の多い共通テストの英語リスニングとの比較を含めて試験の特徴を把握し、対策法を考えていきたい。
<問題構成の確認>
ICUの英語リスニングは前半の会話パート(Part I, II)、後半の講義パート(Part III)から構成されている。問題数は30問で、試験時間は約30分である。
読み上げられる英文の量は、会話パートのPart I, IIは合わせて約1,000words, Part IIIは約2,000wordsである。
▼2022年度英語リスニングパートごとの単語数(words)
Part I(短い会話文) | Part II(長い会話文) | Part III(講義) | 合計 |
723 | 281 | 1,958 | 2,962 |
<共通テストとの比較>
ICUの英語リスニングの特徴や難度を把握するため、以下においては共通テストの英語リスニングと比較する。
・放送時間、単語数(words)の比較
▼英語リスニングの放送時間と放送された語数(2022年度)
ICU | 共通テスト | |
放送時間 | 33分28秒 | 30分55秒 |
語数(words) | 2,962 | 1,534 |
共通テストとICUの英語リスニングの放送時間はどちらも30分程度であるが、放送される英文の量は、共通テストが約1,500wordsであるのに対し、ICUの試験では約3,000wordsである。よって、ICUの英語リスニングで放送される英文の長さは共通テストのおよそ倍であると言える。
・スピードの比較
ICUの英語リスニングは共通テストよりも放送される英文の語数が多く、放送のスピードが速い。以下は、ICUと共通テストの英語リスニングで30秒以上の放送がある箇所のWPM(words per minute, 1分当たりの読み上げ語数)を表わしたものである。
▼ICU英語リスニングのWPM(2022年度)
問題 | 語数words | 放送時間 | WPM |
Part IIQ11-12 | 125 | 47秒 | 159.5 |
Part IIQ13-15 | 156 | 1分 | 156.0 |
Part III Lecture 1 | 656 | 5分6秒 | 128.6 |
Part III Lecture 2 | 698 | 4分46秒 | 146.4 |
Part III Lecture 3 | 604 | 4分31秒 | 133.7 |
*Part Iは各英文が30 秒未満のため除外
▼共通テスト英語リスニングのWPM(2022年度)
問題 | 語数words | 放送時間 | WPM |
問4 A 18 to 21 | 93 | 40秒 | 139.5 |
問4 A 22 to 25 | 78 | 39秒 | 120.0 |
問4 B | 161 | 1分24秒 | 115.0 |
問5 | 277 | 2分17秒 | 121.3 |
問6 | 228 | 2分49秒 | 116.9 |
*問1-3は各英文が30秒未満のため除外
共通テストの英語リスニングでは概ね120WPM程度のスピードで英文が読まれるが、ICUの英語リスニングは会話パートがWPM155-160程度、講義パートがWMP130-145程度で読まれている。共通テストと比較するとICUのリスニングは全般にスピードが速く、特に会話パートのスピードが速い。また、講義パートに関しては、同じ年度であっても話者によって読むスピードが異なる。
・語彙レベルの比較
以下のグラフはCVLA: CEFR-based Vocabulary Level Analyzer(https://cvla.langedu.jp/)を用いて、共通テストとICUの英語リスニングの放送内容の語彙レベル測定したものである。CEFR-JではPreA1~C2までの12段階で評価され、C2が最も高い(PreA1, A1.1, A1.2, A1.3, A2.1, A2.2, B1.1, B1.2, B2.1, B2.2, C1, C2)。
共通テスト英語リスニング(全パート、2022) Estimated Text Level: B1.1
*グラフは放送された語のCEFRレベルと登場回数を示す(以下同じ)
ICU英語リスニング会話パート(Q1-Q15 2022) Estimated Text Level A2.1
ICU英語リスニング講義パート(Q16-Q30 2022) Estimated Text Level C2
上記のように、ICUの英語リスニングの会話パートでは、共通テストの英語リスニング全体の語彙レベルよりもやや簡単なレベルのものが出題されていると推定される。一方、講義パートは高難度のC2と判定されており、リスニングとしては難度が高い。
<比較のまとめ>
以上をまとめると、ICUの英語リスニングの前半の会話パートの語彙は比較的簡単であるが、読み上げのスピードが非常に速い。また、後半の講義パートは語彙レベルが非常に高く、読み上げのスピードは会話パートよりは遅いものの、共通テストの読み上げスピードより速い。また、ICUの英語リスニングは放送される英文が長く、全体として共通テストの約2倍の語数がある。特に講義パートは放送される語数が多く、講義パートだけでも共通テスト英語リスニング全体の語数より多い。
▼英語リスニング比較表(2022年度)
語数(words) | 放送時間 | WPM(スピード) | CEFR-J(語彙レベル) | |
共通テスト英語リスニング | 約1,500 | 約30分 | 120前後 | B1.1 |
ICU会話パート(Q1-15) | 約1,000 | 約10分 | 155-160 | A2.1 |
ICU講義パート(Q16-30) | 約2,000 | 約20分 | 130-145 | C2 |
以下の図はこれらの比較を踏まえて、各試験の特徴をチャートで示したものである。
<対策>
・会話パート(Part I, II)対策を中心に得点アップを狙う
上記のチャートに示されるように、ICU英語リスニングの講義パート(Part III)は分量が多く語彙レベルが高い。一方、前半の会話パート(Part I, II)は、スピードこそ速いものの、語彙のレベルはさほど高くなく、放送される英文も比較的短い。よって、ICU英語リスニングの会話パートはスピードにさえ対応できれば後半の講義パートより得点しやすい。
さらに、Part I, IIの会話文は、大学生活に関連した内容を中心に出題されており、過去の年度と類似した会話文も登場する。ICU英語リスニングの過去問の演習を行うことで効果的に対策ができる。
以上の傾向から、特に直前期からICUの英語リスニングの対策を行う場合は、Part I, IIの会話文対策を中心に行うと短期間での得点の改善が期待できる。
Part IIIの講義パートは語彙のレベルが高く、放送される英文が長い。こちらは全問正解を目指すのではなく、分かる問題を確実に解くことが大切である。Part IIIでは基本的に3つの講義が出題され、そのうち1つは自然科学分野から、その他2つは人文・社会科学分野から出題される傾向があるので覚えておくとよいだろう。
また、少なくとも一度は英語リスニングの過去問の演習を行って、試験の形式を把握しておくとよい。昨年度の過去問はICUのWebサイトで閲覧可能である(リスニングのスクリプトは非公開)。
https://www.icu.ac.jp/admissions/undergraduate/exam/general/
問題を解く際はあらかじめ問題冊子を印刷し、音声ファイルの指示に従って解いてくことで、試験本番を想定した演習ができる。
共通テスト英語リスニングは専用のICプレイヤーを各自で操作し、イヤホンを用いてリスニング試験が実施されるが、ICUの英語リスニングの場合は各教室に設置されたスピーカーを用いて一斉放送で試験が行われる。よって、スピーカーを用いた練習も行っておくとよいだろう。
<追加の対策は>
ICUの英語リスニングは、放送内容のスクリプトが公式サイトでは公開されておらず、赤本にもリスニングのスクリプトや解答・解説が掲載されていない。
しかし、リスニングは慣れがものをいう試験である。特に、前半の会話パートに関しては大学生活に限定した会話文という枠組みの中から出題されることから、頻出のパターンも存在する。もし時間があるのであれば、ICU対策講座を活用して、リスニングの過去問を遡って演習を行うと効果的である。ICU入試情報サイトBUCHO.NETのオンラインレクチャーでは過去に出題された英語リスニング(スクリプト、解答・解説を含む)や総合教養を含め、過去30年以上のICU入試の過去問の演習が可能である。
(筆者はWG OBでICU入試情報サイト「BUCHOのICU受験対策」(https://icu.bucho.net/)を運営「ICU BUCHO」で検索)。【BUCHO】