ICU生の就活事情に迫る(1)
<就活ではなく院進を選んだその理由とは?>

 3月1日、22卒を対象とした就職活動が遂に解禁された。コロナ禍という異例な状況下での就活となる今年、どのような流れで就活を進めていくべきか悩む学生も多いことだろう。そこで今回、既に就職活動を終え進路が決まっているID21のICU生にインタビューを行い、ICU生の就活事情について、生の声を聞かせてもらった。

 

Aさん 

 

【基本情報】

メジャー経営学と経済学のダブルメジャー
志望していた業界コンサル、証券
最終進路東京大学修士課程進学
その他内定企業大手IT会社R、大手証券会社N、
大手証券会社D、証券会社O
OB/OG訪問1人
ES10社程度提出→7、8割通過
内定4社

 

――就活ではなく院進を選んだ理由はなんですか?

 就活を進める中で、自分のやりたいことが見つからなかったからです。自分としては就活をするために、進路を決めるのではなく、やりたいことを決めた上で、初めて進路を定めるべきなのではないかと考えました。自分は大学3、4年生になって就活が始まっても、自分のやりたいことが何も決められていなかったので、時間が欲しいと思ったんです。そしてやはり、現状の限られた選択肢の中からとりあえず進路を選ばなくてはいけないことに戸惑いもありました。そんな訳で、自分が何に興味を持つのか見定めるために大学院に進もう決めました。

 現在は戦略コンサルを考えていて、大学院に入り、もう一回就活をやり直そうと思っています。大学院に通ってから、外資の証券会社か戦略コンサルに就職して、会社のお金で*MBAを取りにいくというプランを立てています。

*経営学修士。大学院で経営学を履修した人に与えられる学位のこと

 

――就活を通して感じたことは何ですか。

 就活を経験して感じたことは、学歴があると就活が圧倒的に楽になるということです。ぽっと出のICU生が外資のコンサルになろうとしても、どうしてもハードルが高いなと思いました。例えば、東大や京大出身者は選考フローをポンポン進んでいく。そこにICU生が戦いに行くのはとても厳しいと感じました。ICU卒でロンドンビジネススクールに通っている先輩からも同じ話を聞いたことから、東大大学院への受験を決めました。

 

――ICUでは、どんな学生生活を送っていましたか。

 学業:部活・サークル:遊び・バイト=6:3:1くらいでした。学業に関してはGPAは必ず3.6以上を取るようにしていました。理由は特にありませんが、普通にちゃんと勉強して何かを学ぼうと思っていたからです。そもそも大学はそういう場所だと思いますし、そこはぶれませんでした。部活・サークルに関しては比重的には3でしたが、文化祭実行委員会やICUの某音楽系団体、国際系団体など色々なものに入って活動していました。所属していたのは、どれも何かを表現する団体であり、そこには人の感情を動かすことをしたいという思いがありました。もちろん、適度に遊びを楽しんだり、バイトに勤しんだりしていましたが、それらが生活の中心にはならないように心がけていました。

 ちなみに、成績に関しては一度就活中に聞かれました。証券会社の面接で「GPAって把握してますかね?」と聞かれたため、「3.7ですかね」と答えたら、すごく驚かれました。

 

――就活の軸はなんでしたか?

 本音としては、就活を早く終わらせたいという思いが一番強かったです。しかし実際にその質問を聞かれたときには、自分の持っている武器を活かすことができる業種に就きたいと言っていました。面接官に「それってどういうこと?」と尋ねられたときには、「実は証券取引をしていまして……」や「ビジネスをやっていまして……」と答えていました。狙って作った軸だったものの、面接官にはそれが結構刺さっていた印象でした。

 また、見ていた業界としては、コンサルと証券でした。この二つの業界ならば、これまでの経験やスキルを活かすことができ、自分に素質があるのではないかと感じていたからです。

 

――就活はいつぐらいから、どのように進めましたか?

 3年の夏頃でした。その頃周囲が長期や3、4日のインターンに行っていると聞いて、焦り始め、合同企業説明会や1日のインターンに参加し始めました。そこから、インターンのハードルの低さに気が付き、3、4日のインターンに参加し始めました。しかし、3年の秋冬は特に何もしていなかった気がします。

 そして3年の1、2月から就活に再び取り組むようになりました。その頃から、自己分析やESなど本選考に向けて準備していきました。学内の就活相談グループでどんなインターンがあるのかを聞いてみたり、面接練習やESの添削をしてもらったりもしました。また、就職相談グループのオフィスにある本を有効活用しました。OB訪問を行ったのは1月頃で、学内説明会で知り合ったOBのリクルーターの方から話があったのがきっかけでした。ちなみに、その某大手総合コンサルティングファームの場合、選考までにどれくらいOB/OG訪問したかを数えており、その後のフローに乗るには一回OB/OG訪問を行ったことにしないといけませんでした。

 3月から5月にかけてはESを提出し、面接が始まりました。コンサルは比較的、就活が始まる時期が早い印象があります。最終的に内定が出たのは7、8月頃のことでした。

 

――自己PRはどのようなものでしたか。

 自己PRとしては、掲げた目標を実現できるということを言っていました。具体的なエピソードとしては、文化祭実行委員で企画を行う際に、経営学で学んだ分析やフレームワークを用いて、最初に掲げた目標集客数を達成できたという経験を話しました。これをESや面接でガクチカとして使っていました。

 

――ICU生の就職活動の特徴は何ですか?

 全く情報が出回ってこなかったため、あまり知りません。自分は結構知り合いがいる方ですが、友人との会話の中で気軽に、知り合いの内定先や就職先などの情報を、話題に挙げることはやはり難しいです。そのため、就活において、ICU生が一緒に同じ業界を目指して切磋琢磨するといったことはありえないと思います。ESを何枚書いて提出しただとか、どこどこのインターンや合同説明会に行ったなんていう話も全くしませんでした。他大だと、情報が回ってくるかもしれませんが、ICU生は就活に関して、基本的に個人プレーだという印象が強いです。周りの進捗状況などもわからないため、孤独に感じるICU生も多くいることでしょう。また、ICU生の中には、世間では一般的なことに対して強く疑問を抱く人も多く、「なんでスーツを着なくちゃいけないのか」や「なんで働かなければいけないのか」などと嘆く人もいます。ある意味、クリティカルシンキングが効いているのかもしれません。そのため、比較的ICU生は、就活で心を病んでしまう人が多いと感じました。いわゆる「就活ガチ勢」と呼ばれるような人はごく一部で、彼らはお互いに集まって情報交換をしていました。こういった集まりは、エンカレッジやサークルを通じたつながりから生じていました。先輩付き合いが良い人は就活が早かったですし、やはり先輩との関係は大事なんだと思います。

 

――ICU生はどんな企業に就職しているのでしょうか?

 情報があまり回ってこなかったため自分の独断と偏見かもしれませんが、大手志望ではない人がそれなりにいると思います。ICU生の就活の大まかな傾向として、大手や外資が一定の割合を占めているため、それらがトレンドのように見えます。しかし、私の体感では大手が6割、それ以外が4割といった感じで、両者の割合にはそこまで差がないと感じました。また、自分が経済メジャーだったこともあり、偏りがあるかもしれませんが、特にコンサルや金融(銀行、外資銀行、証券)を志望する人が多かった印象があります。

 

――就活をする上でのICU生の弱みと強みは何ですか?

 ICUは企業からあまり知られていません。というのも、大学名が知られていない訳ではなく、ちゃんとした大学としてのイメージが持たれていない印象があります。おそらくなんとなく英語を使うんだろうなと思われている以外は、「イメージがないというイメージ」なのだと思います。やはり、ICU生の卒業生や在校生の母数が少ないということもあり、面接官からすると、「早稲田ね」「ああ慶應ね」といった中で「んん、あれICU……、なんだろう、なんか英語できそうだけどね」といったぼんやりとしたイメージしか持たれていないのだと思います。

 しかし強みもあり、ICU生は他の大学生と比べて、論理力があると思います。例えば「僕はこう思います。なぜならこうです」と因果関係を正しく把握して発言する傾向があります。他の大学の学生だと、意見だけの人、根拠だけの人、データだけをいう人も多いです。あとICU生は議論を進めるのがうまいです。そのため、ディスカッションなどで、ちょうどいい潤滑油になり得ます。また、学生の母数が少ないことが、かえってプラスに転じる場合もあり、企業にとって貴重な存在として重宝される面もあります。

 

――就活の情報収集で使ったツールは何ですか?

 企業に関する情報は9割インターネットを使って調べていましたが、たまに合同企業説明会やインターンでも情報収集を行なっていました。使っていた具体的なプラットフォームは「リクナビ」と「マイナビ」、使っていて役立った就活アプリは「就活会議」「外資就活」でした。特に説明会などの開催スケジュールや、いろんな人のES・面接の内容を知ることができるといった意味で「マイナビ」や「就活会議」をよく使っていました。

 

――新型コロナウイルスの影響はありましたか?

 確かに影響はありましたが、面接がオンラインになって家で面接試験などを行ったため、かえってリラックスできました。また、わざわざスーツを着て会社まで行かなくて良いこともメリットでした。正直自分は、コロナ禍の恩恵を受けることができたと思います。

 

――これから就職活動を迎える後輩へメッセージはありますか?

 自分、他人、企業、そして世界に素直になることです。あと、早めに就活を始めることだと思います。先に就活をスタートさせておくと、良い意味で余裕が生まれます。それがとても大事で、周りに差もつけられます。また、とりあえず、あまり深く考えすぎずにジャンプインすることも大切だと思います。「インターンって何?」「ウェブテって何?」といったように、全然知らない世界に飛び込むことは、抵抗のあることだと思いますが、挑戦する経験ができることはとても価値のあることです。元々は「就活なんてしょーもな」と思ってた人間でしたが、やってみて発見することもあって、そういう意味でも自分はもう一度就活してみたいと思い、大学院進学という選択肢を選びました。

 就活をしている中でくじけそうになることもあると思いますが、その経験が自分を強くしてくれます。なので精一杯、自分ができることを少しずつでいいので、始めてみるのが大事だと思います。

 

 今回は就活と大学院進学を両立してきたたID21の先輩にインタビューをさせていただいた。筆者はインタビューすることで、先輩の就活での実体験やICU生の就活事情が見ることができた。この記事が皆様の就活の参考となれば幸いだ。

【あまちゃん】