ICUにはなぜミスコンがないのか――その歴史的な経緯 前編

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多くの大学の学園祭の中で特に目立つ企画といえば、ミス・コンテストやミスター・コンテスト(以下ミスコン、ミスターコン)である。ブリタニカ国際大百科事典によると、「ミスコンテスト」は「主催者による一定の基準にふさわしい,未婚の女性を選ぶ審査会」だとされており、近年では、多くの企業から協賛を集め、優勝者に外車やティアラが贈られるケースもある。

しかし、ICU祭ではミスコン、ミスターコンやそれに類似したイベントが行われていない。最近では2011年にミスコンを開催しようという動きがあったようだが、開催はされなかった。

これはなぜなのか。学生の間では疑問の声もしばしば聞かれる。そこで、この記事では、ICUで過去にミスコンが企画された際にどのような議論がなされ、どのような結果になったのかをまとめてみたい。

1986年

ミスコンに関する議論で、確認できる最も古いものは1986年のものだ。当時のThe Weekly GIANTSの記事によると、1986年のICU祭において「ミスコンテスト」が企画されたものの、告知のために貼りだされたポスターに「女性蔑視」などの落書きがされたところから、ミスコンに関する議論が始まったようだ。

この時は「社会のまど」という学内のフリーペーパーと、ICU祭実行委員会が発行していた「中小企画新報」という冊子で主に議論がされており、そこから派生してWeekly GIANTS Co.でもミスコンに関する座談会やインタビュー調査を行っていたようだ。

1986年10月23日に発行された弊誌297号に掲載されたインタビュー調査の結果を見ると、調査方法に疑問の余地はあるものの、60%以上の回答者がミスコンに賛成したことが分かる。その際に集められたコメントには「出たい人が出るんだからいい」「みっともない」「ミスターICUもやればいい」といったものがあった。

2008年

それから20年以上が経った2008年、もう一度ICU祭でのミスコンが企画された。

弊誌956号によると、ICU祭の盛り上げのためにミス・ミスターコンが企画されたが、ICU祭実行委員会内にもミス・ミスターコンの開催に異議を唱える委員がおり、ジェンダー研究センター(以下CGS)に相談することになったとのことだ。

ICU祭実行委員会の担当者とCGSのスタッフ数名による当時の座談会の記録がCGSのウェブサイトに掲載されている。座談会ではまず、ICU祭実行委員会側から、ミスコンを企画するに至った経緯の説明があり、次にCGSの側から、ミスコン開催への懸念について説明がなされた。問題点としては、社会で流通している「美」についての価値観を強化してしまうことや、性別をはっきりと分けてしまうことが挙げられている。

結果、ミスコンの実施は難しいということになり、the Person of ICUという「ICU生らしさ」を競う企画が代わりに立てられたが、これもミスコンと同じ問題をはらんでいるという指摘がされた。最終的に、芸の面白さのみを競う「一芸選手権」の案が出されたものの、企画の立案が時期的にICU祭には間に合わなかったとのことだ。

 

後編では、実現に最も近づき、その結果として反対運動も大きくなった2011年のミスコン企画について見ていく。

参考文献

「ミスコンテスト」コトバンク

「ICU祭でミスコン?!―ICU祭実行委員とCGSスタッフが、改めてミスコンについて語り合います」CGS Online

The Weekly GIANTS 297号,298号,956号