話題沸騰の「誰も借りてくれない本フェア」、面白い企画がICU図書館で生まれる理由
|学生1人当たりの年間平均貸出冊数が49.9冊にものぼるICU図書館で「誰も借りてくれない本フェア」というインパクトの強いユニークな企画展示が行われている。連日、ネットやテレビ、新聞、そしてラジオといったありとあらゆる媒体で取り上げられたこの企画展示の趣旨や、こういった企画がICU図書館で生まれる理由について、フェアの担当者である相徳さん(以下:相)と紀平さん(以下:紀)にお話をうかがった。
(※インタビューは再構成済み)
――今回の企画展示の趣旨とはなんでしょうか。
相:学生にもっとICU図書館を利用してもらおうと考えたのがそもそもの趣旨です。実はここ数年ICU図書館の貸出冊数と入館者数が減っています。その理由を調べてみたところ新入生が本を借りてきていないということが分かりました。ICU図書館では学内や学外からもアクセスできるオンライン・データベースの充実を行っていますので、実際に図書館へ足を運ぶ必要性を感じなくなっている学生が多いのではないかと考えました。そこで、ICU図書館ではこういった企画展示にも力を入れるようになりました。
――今回のフェアの経緯について教えてください。
相:今年の1月にカレントアウェアネス・ポータルという図書館に関する最新情報を配信している国立国会図書館のサイトで苫小牧市立中央図書館が「誰も読んでない本」という企画展示をやっているというのを見つけまして、これは面白いと思い、ICU図書館でもやってみようと思い、紀平さんと一緒に進めてきました。「誰も借りてくれない本フェア」というコピーも彼女が考えてくれました。
――ICU図書館ではこれまでも「スカベンジャー・ハント」といったユニークな企画が行われていますが、こういった企画はどういったプロセスを経て立てられているのでしょうか。
相:企画を思いついた人がスタッフミーティングで提案を行って、そこで全員で検討をして、最終的に図書館長のゴーサインが出れば、実際に行うという流れになります。例えばTwitterでの新着図書のつぶやきや、図書館本館月例展示や新着図書展示からピックアップした本を紹介しているブクログ、Facebookを用いた広報もこうしたプロセスを経ました。
紀:企画を提案してダメって言われることはほとんどないですね(笑)。
相:そうですね、みなさん新しいもの好きなのか、チャレンジングなのか、よっぽどのことがない限り提案した企画は通りますね(笑)。そういう風土がICU図書館にはあると思います。
紀:また、企画に対してICU図書館の館員の方々はとても協力的です。今回のフェアに使ったポップも図書館長をはじめ館員全員で書きました。
相:自分がポップを書いた本が借りられると凄く嬉しいですね。
紀:嬉しいですよね。
相:また、ポップだけでも全部読みたいというリプライをTwitterで頂きました。
――今回の企画展示に出されている本に新書が多いように感じられたのですが、それには理由があるのでしょうか。
相:貸出回数が0回の本と言っても古いものから、出たばかりでまだ知られていない新しい本もあります。今回の企画展示では最近出た本を多めにしました。新書が多いのは今回の展示のターゲットが学部1年生から大学院生までという幅広い層の方々だからです。専門書ですと、どうしてもその分野の方しか読む機会がないと思うのですが、新書の場合は入門書のような側面もあるので、どういった分野の人でも取っ付き易いのではないかと考えました。
――「新書はラインナップ全てを購入する」というICU図書館のツイートを読んだのですが、その理由について教えてください。
新書はラインナップ全てを購入するので、大学生にはちょっと早い内容のものも入ってくるんですよね…。例えばこの3きょうだい(3冊)。決して本が悪いのではなく、ターゲット層がね…若干ね…(¯―¯٥) ・・・ポップで勝負するしかない。 pic.twitter.com/sJDYaJPD35
— ICU図書館 (@ICU_Lib) June 19, 2014
相:主だったレーベルから出されている新書は継続発注をしていまして、刊行されればICU図書館に納品されることになっています。これは新書というのは先ほども言ったように入門書であったり、刊行された時に話題だった事柄について専門家の方がわかりやすく説明していたり、一流の学者の方が研究者以外の人に自分が専門とする分野についてわかりやすく伝えるために書いているものが多く、取っ掛かりとして最適だからです。利用者の興味関心に幅広く対応するため、講談社現代新書、講談社ブルーバックス、岩波新書、朝日選書、NHKブックス、中公新書、新潮選書はラインナップ全てを購入しています。
――今後、予定されている企画展示があればお聞かせください。
紀:今は頭の中が嵐のように考えが巡っているので。また落ち着いた頃に、次回こういうのはどうですかって言ってみようと思っている企画はあります。
相:私も今考えている企画があるので、またスタッフミーティングで提案をして、館長のゴーサインが出ればやろうと思っています。
紀:ということで、まだ秘密です(笑)。
――ありがとうございました。
大学図書館ランキングの常連であるICU図書館に貸出冊数、入館者数の減少という意外な悩みを抱えていることが今回のインタビューで明らかになった。リザーブブック制度や自動化書庫、ラーニング・コモンズの導入といった先駆的な取り組みの数々を行ってきたICU図書館がこの課題をどう解決していくのか、今後行われる企画展示同様目が離せない。
企画展示「誰も借りてくれない本フェア」概要
期間 | 6月16日~7月4日 7月19日(ICUオープンキャンパス) |
場所 | 図書館本館1階展示コーナー |
ICU図書館に入館できる方 | ICU関係者及びこちらに該当する方 一般及び受験生の方は7月19日(土)に開催されるオープンキャンパスにてICU図書館にご入館いただけます。オープンキャンパスについて詳しくはこちら |
ICU図書館公式サイト | http://www-lib.icu.ac.jp/ |
ICU図書館公式Twitter | @ICU_Lib |