【受験生必見】ICU推薦入学者対談
|秋から年末にかけて、各種の推薦入試が行われる。毎年この時期になると、当時をなつかしく思い返す読者も多いはずだ。筆者もそのうちの一人である。本記事は、ICUに推薦入学した3人の学生(と1人の外野)が、受験生時代を振り返って対談した様子をまとめたものである。当時への郷愁に浸るのも良いし、今まさに推薦入試に臨む受験生にとっても、有益であろうと思う。
(※対談内容は再構成済み)
――まず最初に、それぞれが利用した受験制度について教えてください。
グラサン――僕は指定校推薦で入学しました。通っていた高校とICUが連携しており、ICUの指定校推薦枠は2つありました。条件は評定平均が規定以上であることだけで、それを満たすと、教員の話し合いで内定者が決まります。それに選ばれると、志望動機などを記した願書をICUに提出して、いよいよ試験に進むことができます。試験は小論文と面接です。小論文では、長文を読んでから、5つの設問に答えます。一般受験の人文・社会科学の問題を、マークから筆記に変えたようなものです。それが終わると面接に移ります。複数の教員と複数の受験生が集団で面接します。面接といっても、あくまで為人を見るためのもので、ふるいにかけるような厳しいものではなかったです。
うじ――僕はキリスト教推薦で入学しました。基本的には、指定校推薦と同じプロセスでしたが、一つだけ違うところがあります。それは、高校の評定平均以外にも、キリスト教徒であること、もしくは1年間教会に通うことが条件になるということでした。僕は1年間教会に通う方を選びました。この条件を満たすと、高校の校長先生と面談をして推薦の内定をもらい、ICUでの試験に進むことができます。試験内容は、指定校推薦と全く同じです。
外野――なんでキリスト教推薦を選んだのですか。
うじ――直接の理由は、僕が高1のとき、先生からICUを勧められたことです。通っていた高校に、キリスト教推薦の枠が1つあったので、それを目指しました。教会に通い始めたのも、それが理由です。
外野――では、ICUに入るためだけに教会に通い始めたということですか。
うじ――それもありますが、キリスト教の教会がどのようなものなのかを体験してみたかったという理由もあります。一年間通ってみて社会勉強になりました。でも、キリスト教徒になろうとは思いませんでした。今は教会に通っていません。
Sさん――私は特別入学選考(AO入試)です。AO入試は、文系のAカテゴリーと理系のBカテゴリーに分かれていて、私はAカテゴリ-を受験しました。試験は、1次試験の出願書類と2次試験のグループディスカッションです。1次試験では、願書と一緒に、小論文や自己分析を提出します。また、TOEICかTOEFL,IELTS,英検のうち、いずれかの試験結果を提出する必要もありました。それ以外にも、高校の評定平均が4.1以上であることが求められます。2次試験では、教員の前で受験生がグループディスカッションをします。
グラサン――ディスカッションでは、受験生は協力関係にあるのですか。それとも、互いの間違いを指摘しあう敵対関係にあるのですか。
Sさん――このディスカッションは、あくまでディベートではないので、敵対関係にあると話ができません。私のグループは、とても柔らかい雰囲気で話ができました。まず、ディスカッションテーマに関連する参考資料が配られます。私のグループは環境問題がテーマで、配られたプリントにはそれに関する図表などが載っていました。次に、その資料から読み取れることを、教員が受験生一人ずつに質問していきます。たとえば、どの地域にどういった環境被害が出ているのかや、近年の傾向はどうなっているか、といった具合です。全員が回答し終えると、教員からお題が出されて、いよいよグループディスカッションが始まります。教員はその様子を観察して、受験生を評価します。
――大学受験に向けてどのような対策をしましたか。
うじ――僕の高校から、キリスト教推薦でICUに入学した先輩たちがいたため、その人たちが残してくれたデータを参考にしました。面接でどんな質問をされたかとか、小論文の試験でどんな問題が出たかなどです。あとは、学校の先生と面接の練習をしたり、小論文を書いて添削をしてもらいました。それらの対策を始めたのは高3の夏休みくらいです。
グラサン――とはいえ、キリスト教推薦だと、教会に1年間通わないといけないから、大変ではないですか。
うじ――そうですね。かなり早い段階から、推薦に向けて具体的な行動をとる必要があります。それに、評定平均を維持するためにも、日々の勉強を頑張って定期考査でしっかりと成績をおさめるよう頑張りました。
Sさん――直近で私の高校からICUに進学した人は8年程も前だったので、全然データがありませんでした。なので、トフルゼミナールという塾で、ICUのAO入試を専門にしている対策講座を受講しました。そこで願書や小論文の面倒を見てもらいました。ディスカッションに関しては自己流でも対策することにして、本を読んだりニュースを追っていました。
グラサン――僕は、夏休み明けから対策を始めました。対策の内容は、うじ君がやったことと同じで、小論文や面接の練習などです。もともと地元の国立大学に一般受験することしか考えていなかったので、指定校の対策を始めたのはかなり遅かったです。そもそも、担任の先生からICUの推薦を勧められるまで、ICUの名前すら知りませんでした。ただ、幸運にも評定平均が要求を上回っていたので、受験直前に推薦に切り替えました。
――高校の時に力を入れたことを教えてください。
Sさん――私が力を入れたのは留学です。高2の8月から高3の6月までフィンランドに行きました。通っていた高校の制度で、新しく国際交流コースが設立されて、私はその一期生として留学しました。そのコースでは、クラスメイト全員が海外留学することになっています。留学団体は、学内外問わずどれを利用しても良かったので、私は学外の団体でフィンランドへ行くことにしました。
グラサン――ICUの受験を考えていたなら、フィンランドでなく英語圏へ行こうとは考えなかったのですか。
Sさん――留学から帰ってくるのが受験シーズンなので、はなから一般受験は考えていなくて、推薦を利用するつもりでした。なので、推薦で入れる大学に入ろうと考えていました。そもそも、日本社会が異常にこだわる英語に、私はそれほど興味を持てなかったというのもあります。
うじ――高校三年間を通してずっと同じ先生が担任で、その先生が生徒にかけてくるプレッシャーがすごくて、僕はいつもそれに怯えながら勉強していました。テストや模試などの前になると尚更です。その先生は英語教師だったので、僕はテスト前になると教科書の試験範囲にある文章を全て暗記していたほどです。とはいえ、そのおかげで、良い成績をおさめることができて推薦につながったことも事実ですし、大学でエッセイを書くときにも、当時覚えた表現が役立っています。
グラサン――僕も似たような状況で、先生ではなくて父親が元凶でした。父親にどつかれるのが怖くて、とりあえず格好だけでも勉強するふりをしていました。だから、自分の意志で勉強してはいなかったです。
うじ――定期テストを頑張るモチベーションって何でしたか。
Sさん――私も恐怖が大きかったです。
グラサン――あとは周囲からのプレッシャーです。一回いい成績を取ってしまうと、周りから可愛がられるかわりに、それを裏切るまいと努力せざるを得なくなります。
Sさん――テスト結果の順位とかが発表されるともうがんばるしかなくなります。
うじ――僕は高1のスタートダッシュを頑張りすぎて、それ以降手を抜けなくなりました。
外野――俺はスタートダッシュ失敗したけどね。
――推薦やAO入試は早くに受験が終わりますが、それによってプレッシャーから解放されましたか。
うじ――高3になると、ひょっとすると推薦でも落とされるのではないかという不安が次第に増しました。なので、合格したときは安心しました。でも今度は、はたして大学の勉強についていけるかなという新たな不安が出てきましたけど。
グラサン――受験が近づくにつれて、普通はプレッシャーをより強く感じるようになると思うんですが、僕はかえって解放されました。というのも、いきたい大学という目標ができたので、日々の勉強に意味を見出せるようになったからです。以前までの、父親の恐怖とプレッシャーではなく、自分の意志で勉強できるようになりました。
――合格してから入学までの間に何をして過ごしましたか。
Sさん――私のクラスは推薦で早くに合格が決まっている生徒が多かったので、合格後も学校で授業がありましたし、課題も出されました。自分で課題を発展させて、関連する本を読んだりもしていました。あとは漢検の勉強と、ELAのストリーム分けに備えてTOEFLの勉強です。
グラサン――僕はスタートアッププログラムで知り合った人たちから強烈に刺激を受けて、彼らから勧められた本を読んでいました。その代わり、英語の勉強は一切しなかったです。
外野――だからお前はスト4なんだよ。
うじ――スタートアッププログラムは僕も楽しかったです。こんな感じでICUの授業は進んでいくんだなと実感できました。
――大学入学後に、一般受験生との違いを感じることはありますか。
うじ――やはり、一般受験の人は勉強してきたんだなと感じます。ディスカッションしているとき、知識量の多さに圧倒されることがあります。AO入試はさておき、受験シーズン中の大変さで言えば、指定校推薦などは一般受験に比べると楽であることは事実だろうと思います。
グラサン――僕も大学入学当初は、一般組はすごいなと考えていました。一般組は最後まで努力して、まっとうな手段で入学している。他方で、推薦は出来レースです。受験シーズン半ばで合格が決まるので、少しずるいことをしているようで、一般組に気後れしていました。
Sさん――私の場合は、留学先のフィンランドでは、自分で好きな科目を選択することもできたりと、よい成績をとることは日本の学校ほど難しくなかったです。それでも、全く知らない土地に留学しているので、ただ生きていくだけでも大変でした。よく、一般受験より推薦は楽して入学していると言われますが、私はそう思いません。推薦には一般受験とは違う形の苦労があると思います。
外野――俺は、推薦組と一般受験組の違いは感じないです。そもそも、ICUの試験自体が特殊だから、一般受験もまっとうではないと思います。