野党支持率80%以上?WG社員で衆院選について話してみた

 先月末に行われた、衆議院選挙と最高裁裁判官の国民審査。本記事は、選挙後に行われたWeekly GIANTS Co.の社員5人による座談会を再構成したものである。

今回の座談会に参加した人

A: ID22. 東京21区 – 小選挙区:大河原まさこ(立憲)、比例代表:れいわ

「政治には自分の権利を阻害されたくないという観点から関わっているので、倫理的な面を第一に考えている。立憲の候補は、去年身体障がいを患った当事者意識の強い人だった。ICU卒っていうのにも親近感を感じた。比例は、立憲かれいわで迷った。立憲は前世代的組織で魅力を感じなかったし、全体としてリベラル的な上から目線の立場から語っているように感じた。一方でれいわは当事者と言われるような人達が多くいたりと、下の方から底上げしていこうというような雰囲気があって、好意を持った」

(B: 確かに、純粋バイオみたいな政治家が多い自民党や他の野党と比較して、れいわは参院選でも障がい当事者の候補を出していた。そういうアプローチの違いがあるよね。)

B: ID22. 東京22区 – 山花郁夫(立憲)、れいわ

「ここの選挙区では自民・立憲・れいわの人が立候補していたのだけど、実質的には自民と立憲が競り合ってる構図だった。れいわと立憲で迷った末、とにかく野党に勢力を伸ばして欲しかったので、当選確率の高そうな立憲の人に入れた。結局は自民の候補が当選したけど、リベラル票が割れていなければ立憲の人が勝っていたんだよね。比例票を稼ぐためだったのかもしれないけれど、野党は候補者を一本化すべきだったと思う。比例は、人権感覚や民主主義のルールを守るという倫理的な側面で自民、公明、維新は受け入れられない。野党のうちで一番魅力的なのがれいわだった。れいわは民主主義を体現している。演説や支持の集め方を見ていても、組織票頼りや組織の論理ではない。山本太郎が聴衆からの質問に何時間も答え続けるというのもそうだし、個人献金でやっているというところもだね」

C: ID24. 東京22区 – 山花郁夫(立憲)、立憲

最大野党っていうのが、小さくはない理由かな。立憲とか自民のように、選挙公報で枠の大きいような、政党としてでかい方が政策において多方面を考えていると思った。個人的に自民はイメージが悪い。れいわと少し迷ったけれど、耳目を引くためかやや極端に聞こえる。政権交代は起こらないだろうけど、ちょっとずつ伸びていかないかなって比例も立憲にした」

D: ID25. 東京22区 – 櫛渕万里(れいわ)、立憲

「小選挙区は立憲と迷った。れいわはすごくプログレッシブで通らないかなとも思っていたんです。でも、ゼロエミッションを目指すかどうかというアンケートに、れいわは完全にゼロにすると言った。無理かもしれないが、それを目指している方が良いと思って」

E: ID25. 千葉2区 – 小林鷹之(自民)、野党

「小選挙区は、昔から親とつながりのある人で、その候補が誠実だと聞いていたから。ただ、それは客観的に判断できているとは言えないのかも。比例は、ネットで公約を調べて決めた。でも、今まであまり考えてこなかったので消去法的になった」

(B: 自民党の強さってそこだよね。まさにどぶ板選挙。

C: でも、俺が立憲にいれたのもバイト先でつながりがあったからかも。)

政治の話をするのは「過剰」?どうやって議論しようか

C: うーん。どうやって話始めようか。皆投票先とか明かして良いのかな。

B: 確かに、なんとなく友達と政治の話はしにくい。じゃあ、それはなぜなのかってことから話し始めようか。まず、俺が思うに、昔は皆同じテレビや新聞でニュースを見て、事実認識を共有した上で、それぞれの価値観によって投票先を決めていた。だから議論もできたのだと思う。今は皆ネットで自分の好きなものしか見ていないから、人によって事実認識が違ったりする。例えば、トランプが選挙に勝ったというフェイクニュースを信じてる人が大量にいたりする。そうすると、対話が成り立たないよね。

C: 確かに。事実認識が共有できていなければ、「なんであいつにはわからないんだ?」で対話が終わっても仕方なくなる。でも、ICU生のなかでも事実認識ってそんなに異なるんだろうか。自分にも他人にも考えがあるということは、皆わかるのではないかと感じる。

B: まあ、アメリカで起こってるようなそういう問題は、日本ではまだそれほどないかもね。もう一つの原因として、不和の原因になる自分と相手の間の違いが顕在化することが嫌われる傾向はあると思う。あるあるネタとかではすごく盛り上がるけど、皆が楽しめない政治の話とかはそもそもしない。高校までの友人とはそうだったかな。

E: そうですね。違う意見同士で調整しようというより、初めから対立しないようにしようと思ってしまう。

C: そもそも、高校で政治の話をするのはKYだったかな。

B: 政治の話って「過剰」だと捉えられる。特に高校のときなんて、脱力して何にも関心がないというような人がかっこいいとされていた。そんな「さとり世代」のなかでめちゃくちゃ熱心に政治のこと話していたら、「過剰だよ」「気楽にいこうぜ」と言われてしまう気がする。ジェンダーの話も多分そうだよね。日常会話で突然「同性愛者の権利ってどう思いますか」とか言っても、過剰と捉えられるよね。

C: 自分もジェンダーについては色々考えているけれど、インスタのプロフィール欄に「he/him」とか書くのは過剰に感じる。そういう感覚なのかな。

ICUは巨大なエコーチェンバー

B: 今日のメンバーだと、野党支持率が80%超えてるね。SNSって自分の好きな情報しか目に入れなくなるから、自分の思っていることを皆思っているみたいな勘違いがあって、それをエコーチェンバー現象って言う。ICUでは、現実世界でまさに同じことが起こっているなって思って。ここにいると、あたかも世間の人は皆ジェンダーや環境問題のことを考えて、それに従って投票するんじゃないかという錯覚に陥ってしまう。それって本当にエコーチェンバーで、実際は学外とのギャップがあるわけじゃん。だから、そのギャップをどう考えるかだよね。

C: Aは立憲の立場に上から目線の様なところがあるって言っていたじゃん。そのとき、俺たちと同じだなって思った。ICU生は自分に余裕があって、その立場でのみ考えがち。

A: リベラルがもうそうだよね。

B: そうそう。はっきり言って、ICUには裕福な家庭で育った人が多いし、経済についてそこまで切実さがないと思うんだよね。「就活?やらね~」みたいな人も多い。世間の大学生にとっては、新卒の有効求人倍率がどう変化するかとかが一番重要だったりする。自分も就活しているときにすごく感じた。

 若者は右傾化してるから自民党支持率が高いとか言われるけど、そんなことは全くないと思う。世論調査をやると、夫婦別姓とか同性婚も賛成が圧倒的多数になる。むしろ、若者より野党支持率が高い高齢者層が、そういうことに関しては一番保守的。なのに、なんで多くの若者が自民党に入れるかというと、安定的に経済を運営してくれるのは誰かなって考えたときに自民党だということになるのだと思う。夫婦別姓とかは優先順位が低い。

 野党はアピールが下手。安倍さんは経済でずっと選挙に勝ち続けていたから、安保法制とか本当に自分のやりたいことを無理にでもできたわけじゃん。野党もさ、本当にジェンダーとかやりたいなら、まず経済で勝てよと思う。そのしたたかさが立憲とかからは感じられない。むしろ、維新やれいわがそれを見せているのかなと思う。

投票にどうやって臨んだ?

C: リベラル寄りの自民党員とか、右寄りの立憲党員とかいる訳だよね。自分は大枠でしか考えられていなかった気がする。俺は広報とは別に、イメージで決めた部分もだいぶ大きかった。自民党は、安倍前首相のニュースでネガティブなイメージ。ニュース番組のネガキャンに自分が誘導されていないとも言い切れない。選挙始まる前から公約とは別の力学が働いていて、それがかなり大きかった。そういうことを考えると、自分はどういうふうに選挙に臨めば良いかなって考える。皆は普段からどうやって情報収集しているの?

B: 俺は普段から政治ニュースをよく見ているから、いつも選挙広報が送られてくる前から投票先は固まっているかな。選挙公報とか見なくても、各党の向いてる方向性とかは大体わかる。

A: 私はニュースか、新聞のデジタル版とかかな。

B: あと、選挙前にメディアがやる候補者アンケートとかね。

A: 最近はそういうのがきちんと見えるかたちであるよね。ボートマッチも役立ったかも。

C: ボートマッチ俺もやった。ただ、政策とか論点をきちんとわかっていないと、その場で判断して選ぶの難しいよね。

B: それもあるし、あれ怖くない?中でどういう判定がされているかってブラックボックスじゃん。世論誘導に使われそう。それに、単純な4択問題ばかりで作られてるのも、雑だなと思っちゃう。それじゃあ、細かいニュアンスとかはわからないよね。

A: そうだね。SNSで、ボランティア団体とかがやってる候補者アンケートを見たときも、似たことを思ったな。マルバツの二択はわかりやすいけれど、自民党が全てバツを付けているような項目だけを選んでサムネイル画像にされているような、恣意的に構成されてるんじゃないかというようなものも見かけた。

D: 確かに、バツだけでは理由がわからないですよね。単純化しすぎかも。

なんで投票に行った?

E: 行かないと、若い世代の声が届かない。若者も政治を意識しているということを伝えなければと思って。

C: 家でごみの分別をきちんとやるのと同じ、責任を果たす意味で。あとは、よく考えてから行動するのでなくとも、行動すれば必然的に考えるという面もある。投票に行くという事実だけでも結構大切なのかも。

B: そうだね。デモに参加しても、歩いているうちに「なんでこんなことやっているんだろう」って考えたり、それを一緒に参加している周りの人と色々話したりすることがあるらしい。よく分からないから何もしないんじゃなくて、分からないからまず行動してみる。行動するなかで思想ができてくるというのがあるよね。

D: 私は投票に行くのが当たり前だと思っていた。アメリカの政治が好きで。意見があって投票することはここでも普通なのかなと思う。

A: バイト先やICUでの友人とは政治の話をしたりと、投票するのが当たり前な環境だから。あと、現状が嫌だから行かずにはいられないということもある。

B: 俺もそうだな。自己表現というか、意思表示をする場が選挙ぐらいしかない。溜まっている考えを、発散するような場かも。

C: 選挙は共通言語としての意思表示になり得る。

B: そうだし、選挙に行くと社会と繋がっているなって感じがする。投票所でも、「俺たちは同じ市民だ」みたいな一体感を感じる。

C: 俺も選挙の列で同じようなこと考えてたわ。

衆院選の結果どうだった?

A: エコーチェンバーの話があったけれど、私の周りには立憲やれいわ支持者が少なからずいたから、選挙の結果は全国が真っ赤(自民党)で正直びっくりした。

B: 一定の変化を望む層っていうのはいたと思う。でもそれは与党から野党への変化ではなく、与野党問わず、重鎮やベテランから若い人への移行だった。自民だと甘利さんや平井さん、「桜田問題外の変」の桜田元五輪大臣、野党系だと小沢さんや中村さん。政策云々より前に、「変えてくれそうだ」という期待感をもたせるのが重要だったのかなと。維新も候補者に若い人が多かった。

C: 俺結果あまり見てない。当然のように立憲負けたなとしか思わなかったな。

B: 選挙は、結果を見るのが一番楽しいじゃん!8時からの選挙特番とか見てると、自分の推し候補がどうなったかとかが気になって、スポーツ観戦でもしてる気分になる。

E: 結果見ちゃうと、自分が行っても変わらないかなとか少し感じてしまう。

B: 投票率を上げるには、「行ったらこういう良いことがありますよ」みたいなこと言ってもダメだよね。もっと実利を超えたところに、モラルアウトレイジとか、責任、規範みたいなのがなくちゃいけないと思う。根付かせるのは難しいかもしれないけど。

C: 俺は流される側にいたくないからみたいなところあるかもな。

B: 現状追認側にはつきたくない。そこから自分を切り離すためにせめて投票には行こうという感じ。

最高裁国民審査、バツつけた?

B: ああ、俺は「長岡村の林は深い」(長嶺、岡村、林、深山)って憶えていったね。夫婦別姓を認めないのは「合憲」と判断したり、国権側に立った判決ばかりする4人。全国でも、その4人の罷免を求める割合が高くなっていた。

A: 私も3人ぐらい付けた。

C: いざ自分の番がくる手前で、調べてこなかったって悔しい気持ちになった。

B: 大半の人は、最高裁の方には全く関心持ってないと思う。広報を見ても、「中大法学部卒」とかしか書いてない。制度が空洞化している証拠。

E: 今までに罷免された人っていないらしいですね。

B: でも、今回は例の4人だけバツの割合が高いし、意思表示はできていたよね。この点は重要だと思う。メディアもきちんと報道していないところが多い。「今回11人の裁判官全員罷免されず」とか当たり前で、そんなのはニュースでも何でもないから。思考停止せずに、その4人の罷免を求める割合の高さを示してほしい。

投票に行かない人と、選挙についてどうやって話す?

A: 選挙について話すときに、誰とどういう風に話せば良いのだろうというもやもやが残った。

B: 選挙が全く話題に挙がらない人たちにとって、投票の行為って何だろうね。「マイナンバーカードを作りに行く」みたいなのと同じ感覚なのかな。マイナンバーの話は日頃しないじゃん。一応作ることが推奨されているけど、俺は興味がないから作っていないし。

A: 私は選挙に行くだけで良いのかなっていう疑問がある。一方で投票を呼び掛ける、SNSのアカウントやキャンペーンみたいなものにも抵抗があって。いい子ぶっていて嫌とかでなく、自分のしていることを間違いなく正しいと思っている、啓蒙的な態度が気になるんだよね。じゃあ、自分はどうしたら良いのかなと思って。地元で話したときに、友人は選挙とか行かないって言っていた。しかし、その友人こそ経済や雇用の影響を私より直接的に受ける立場にいたんだよね。どうやって話せば良いのだろうとわからなくなった。

B: さっき言ったように、実利的な理由で投票を呼び掛けるのは限界があると思う。そこはもう、教育で育まれる規範とか、感情の問題なんじゃないのかな。公共社会の一員として良心に基づいて行動しようというのが、内発的にできるような教育をしなければいけないと思う。家族や友人、その先にある社会との関わりの希薄さも関係しているだろうし。短期的に変えられるような話ではないよ。取りあえず、俺たちにできるのは手が届く範囲から始めることだよね。こうして話してみることも、そういう意味では意義があったんじゃないかな。

【Sylvie】

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