連載コラム第1回 ICUのIー国際性ー その実態は?
|国際基督教大学(International Christian University)は、国際性への使命(I)、キリスト教への使命(C)、そして学問への使命(U)を掲げており、その広大なキャンパスでは日々学生たちがリベラルアーツ教育を通して学生生活を謳歌している。ICUはいったいどんな大学なのか、独特の校風から連想されることは多種多様である。そこで今回Weekly GIANTS Co.では全3回に渡って、ICUを構成する3つの単語”International” “Christian” “University”をテーマに、ICUを様々な角度からあらためて見つめるコラムを連載する。
ICUの国際性は誤解されている。ICU生なら誰しも一度は学外の人に「ICU生なんだ、じゃあ英語ペラペラなんだね」などと言われたことがあるのではないだろうか。その言葉に、己の英語力に実力以上の期待をかけられていると感じる人もいる。ICUの授業は全て英語で開講されていると親戚に思われていた人もいると聞く。この記事ではICU(生)の国際性について学外の人が持つイメージの典型例を紹介し、その真偽を述べていく。
ICU生はみんな英語がペラペラ?
このイメージは正しくない。多くのICU生が他大の学生並みの英語運用能力を持ってICUに入学するし、卒業するときにネイティブレベルの英会話力を得ている生徒はひと握りだ。確かに一部のICU生はICUに入学するまでに英語圏で暮らした経験を持っており、ネイティブ並みの英語運用能力を持っている人もいる。こういった帰国生は確かにみんな英語がペラペラだ。しかし、一般的なICU生は日本で人生の大半を費やし、普通に受験英語を勉強した程度にすぎないのである。また、ICUの4月入学生が全員受講するEnglish for Liberal Arts Program(ELA)も生徒の英会話力をネイティブレベルまで引き上げるかは怪しい。なぜなら元来、ELAの目的は学生の英会話力をネイティブ並みに引き上げることではなく、学術的な環境で必要な英語運用能力を身に付けさせることにあるからだ。ELAで主に学ぶことは、学術的な文章を英語で読み書きする方法や英語でのプレゼンテーションの方法なのだ。
確かにICU生の英語力は一定程度の水準は保証されているかもしれないが、決して全ての学生が英会話に堪能という訳ではないのである。このイメージは英語が上手な一部のICU生と、キラキラした学校紹介によって生じた誤解だ。
ICUの授業は全部英語?
これも誤解である。必修である前述のELAを修了すれば、英語開講の科目は卒業要件で求められている単位数を取る必要があるにすぎない。多くの4月入学生は、すべて英語の授業どころか、日本語で開講される科目だけで一学期の時間割を組むことすらある。だが、英語開講であれ日本語開講であれ、その言語だけを使うとは限らないということには留意しなければならない。英語開講の授業のなかには、全然英語ができない学生のために日本語の解説を交えることもあるのだ。たとえば、重要な用語に日本語での言い方も付けることで日本語話者にも分かりやすい授業を提供してくれる教員も多い。
一方、日本語開講の科目といっても英語を使わなくて済むわけではない。「次の授業までに英語の文献を読んでくること」、「レポートは英語で書いてください」などといった課題が出されることはICUにおいて珍しいことではない。また、教員が呼んできたゲストスピーカーが英語で講義したなんてこともよくある話だ。
ICUの授業は全部英語で行われるというのは間違いで、「ICUでは多くの授業がバイリンガルで行われる」と言った方が正確だろう。
ICUは留学生がいっぱい?
これは正しい。ICUを歩けば留学生に当たると言っても過言ではないだろう。学校の公式サイトによれば、ICUの留学生の数は全学部生の9.6%になるそうだ(2016年10月1日現在)。つまりICU生のおよそ十人に一人は留学生ということだ。昼下がりのICUの学内を歩けば日本語と英語を交えて会話する留学生の姿を見ることができるだろう。
ICUでは英語ができないと生活できない?
これも正しい。ICUでは学生生活に関わる重要な用語が英語で表されることが多い。学生同士の普段の会話の中でも、他大では1年生(回生)、2年生(回生)と呼ぶところをfreshman、sophomoreと称し、課題の締め切りはdueと呼ぶ。また、履修登録のサイトはほぼ英語のみが使われているなど、学生生活の重要なインフラが英語になっている。英語が苦手な学生はどうやって生活するのかと思われた読者もいるかもしれないが、ICUはそのような学生を入学試験の時にふるい落としているし、英語に難のある学生が入学した場合も、学生生活に必要な英語はELAでいやというほど訓練されるのだ。
このように、ICUの国際性については多少行き過ぎた言説もあるかもしれないが、ICUは確かに国際的な大学なのだ。その国際性の淵源は、学生を英語や特定の文化だけに染めるのではなく、多様性のある環境に置くべきという使命感ではないのだろうか。