「すれすれのところで踏みとどまっているような状況」私の生理と授業

 私はGPAが低い。これは主に授業の出席率によるものである。春学期はそれぞれの科目を二、三回ずつ休み、特に一週間に一度しかないゴロチ(567限に開講される4時間程の授業)を休んだりすると、すぐに単位の取得が危ぶまれる状況に陥った。ところで、私のこの出席率の低さは、大学生特有の睡眠力と怠惰、そしてPMS*からきている。

 小中高校、大学と学校が好きであったことは殆どなかったが、学校に行きたくないのは勿論、人と会えないというような日が度々あった。そんな日は大抵、生理前の期間である。ただ、今もそうであるように、私の通っていた学校は生理休暇など設けておらず、また親も生理やPMSを理由にした欠席を許すようなこともなかった(そもそも私は自身が辛いということを伝えられていなかった)。私は通学電車での、誰とも知れない人の視線に傷ついて涙を流したり、授業で取り扱われる時事問題に見える人間の悪意に絶望したり、興味の持てない内容をつらつらと続ける教師を睨んだりしていた。本当に些細なことで、今何故生きているのか、死んでしまいたいという堂々巡りの思考のスイッチが押されてしまう。いつもすれすれのところで踏みとどまっているような状況であった。

 私のPMSは大学二年になって一人暮らしを始めると、成績に顕著に表れるようになった。以前は親に理解してもらえないからと、泣いたり睨んだりしながら無理に登校していたところを、休むようになったからだ。無理に登校しても、荒んだ状態で授業は耳に入ってこない。それに、無理をすると状態が悪化することは、経験からわかっている。それなら、けじめをつけて無理な日は休むが、無理のない日はきちんと出席できるようにしようという意図だ。ただ、そうして自身で休むことを選択してはいるが、公には生理を理由に休むことは認められていない。本当は休んではいけないのに、休んでいるという意識はPMSで極限まで引き下げられた自己肯定感を更に傷つけるものであった。

 小中高校生が生理で辛い思いをしても休まずに登校しているのだから、大学生にできないはずがないだろうというような意見には、私は納得がいかない。生理休暇に拘わらず、大学はより良い教育の場の形成のために、積極的に試験的な取り組みを行うべきである。例えば、小中高校がしているのに大学では対面授業ができないのはおかしいのではなく、大学では感染リスクを抑えたオンライン授業を採用し、その上でどう有意義な学習の場を作れるのかということを探っていく。オールジェンダートイレもそうだ。トイレを使いにくい学生が、小中高校で「できていた」からといって、大学でもそれを強制するべきでない。公立小学校より、ICUでそれを作る方が容易であるはずであり、率先してそれを行うべきである。

 私を今回の記事を執筆させるに至ったのは、今学期履修した授業に、生理休暇を設けているものがあったことである。ICUで学ぶのは三年目であるが、生理休暇のルールがこうして公開されているのを見るのは初めてであった。そこで、当授業の先生に質問をして、その経緯を尋ねてみた。羅一等先生へのインタビューは、次の記事で掲載する。【Sylvie】


*PMS 月経前症候群(Premenstrual syndrome)。月経前の約3-10日の期間に発生し、月経開始時におさまる身体的・精神的症状。発症の有無、症状には個人差がある。(参照:公益社団法人 日本産婦人科学会ホームページ)

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