【新入生歓迎特集】講座選びのコツ・おすすめ講座
|新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。さて、新型コロナウイルスの影響により、初っ端からオンライン授業という不運に見舞われた皆様だが、履修計画は始めているだろうか。筆者の経験からすると、どう履修して良いのか、さっぱりわからない方も多いのではないかと思う。そこで今回は、ささやかながら先輩ICU生からの入学祝いとして、講座選びのコツ、およびおすすめ講座を紹介したい。
今年度は、講座の形態自体に多少の変更があるかもしれない。そのため、来たる講座の実態と異なる部分があった場合は申し訳ないが、そこは無視して頂きたい。けれども、履修の基本はそう変わらないはずである。もし質問などがあれば、遠慮なく私達Weekly GIANTS Co.(以下WG)にメール(weeklygiantsco@gmail.com)して頂いても構わない。またICUには、IBS(ICU Brothers & Sisters)という学生スタッフが履修相談などに応じてくれるありがたい団体も存在する。この団体を頼るのも手であろう。
さて、履修の手順自体は散々説明されているはず(わからなければ先述のIBSのTwitter¹に実際の履修例などが掲載されていたので、そちらを見て頂くのが良いだろう)ので、WGでは講座を選ぶコツだけ説明したい。1年生はまず体育科目を登録したら、後はとにかく好きな講座で埋めて構わない。1年生向けとして開講されている講座は、主にファンデ(Foundationの略称。基礎科目のこと。)という授業番号が100番台の科目、およびジェネ(General Educationの略称。教養科目のこと。)である。これらのどちらかであれば、「難しすぎてついていけない!」などということは「基本」起こらない(後で紹介する「美術の世界」は例外である)。興味のある分野から、好きな講座を選ぶとよい。
ICUでは2年終了時まで専攻を決めない。このことに象徴される様に、ICUは学生が「自分が本当に興味あること」を見極める時間を与えてくれる大学である。よって、1年生の間は「ちょっと興味あるな」程度の軽い気持ちで履修しても大丈夫だ。1年生春学期の履修が原因で後に困るということは基本無い。怖ければ先ほど述べたファンデおよびジェネを取っておけば間違いないだろう。
また、200番台、300番台の講座は2年生以上を対象に開講されてはいるが、200番台の授業の難易度は100番台と大幅に変わるわけではない。そのため、どうしても気になる講座が200番台である場合は、履修してみても良いだろう。しかし、講座によっては難しい場合もあるので、シラバスをしっかりチェックすべきである。300番台の授業を1年生の間に取ることはおすすめしないが、WG社員の中にいきなり1年生で300番台E(英語)開講を履修し、単位を取得した猛者もいるにはいるので、どうしても取りたい場合は検討してみても良いだろう。しかし、1年生の最初の履修では大人しくファンデかジェネを取っておくのが無難である。
また、新入生の方の中には、E開講に対して戦々恐々としている方もいるかもしれない。けれども、E開講を恐れることはない。人によりはするが、教授は基本的に分かり易い英語で話して下さるので、授業内容が全く理解できないということはあまり起こらない。特に、1年生向けに開講されている講座では、よりわかりやすく話して下さる教授が多いと個人的には感じる。また、ICUの入試を突破した皆様なので、英語ができないと思っていても意外と大丈夫なものである。ただ、1年生必修のELAは、英語での授業、ディスカッションの仕方、および英語でのレポートの書き方を習うものなので、ELAを1学期でも履修してからの方が、E開講は楽になるだろう。つまり、取りたい講座がE開講だったからといって諦める必要はないのだが、もしそうで無い場合は秋学期以降に履修した方が楽になるのである。
以上が、ざっくりではあるが講座選びのコツである。そして以下に続くのは、WG社員による1年生向けおすすめ講座の紹介だ。参考にして頂ければ幸いである。
【まっくろくろすけ】
おすすめ講座①:GEH002「H1:美術の世界」
「美術の世界」は、美術研究・考古学を主に扱う一般教養科目の講義である。担当教員は「ICUのEazy-E」こと、伊藤亜紀教授だ。ラップが上手いからではなく、成績評価が非常に厳しい(簡単にEが取れてしまう)ため、このような異名を取っている。成績評価に関してだけでなく、講義中の電子機器の使用を禁止するなど、講義に関する厳しいルールが定められている。この旨は初回の講義で説明されるのだが、毎年その厳しさに恐れ慄いた多くの学生が初回講義終了直後に履修登録を外すことを、教授本人はいつもネタにしている。
講義内容は、近世ヨーロッパの絵画作品に図像学的な考察を加えるというものである。筆者が受講した一昨年の講義では、ボッティチェリやヤン・ファン・エイクなどの作品が扱われたと記憶している。講義の難易度は、一般教養科目にしてはかなり高いと言える。講義内容を十分に理解するには、ある程度の予備知識が求められるため、学生は各自で文献等を読むなどして予習をしなければならない。講義時間外での学習無くしては、良い成績はまず期待できないと言って良いだろう。
その他の講義の特色としては、学生参加の機会が皆無であること、そして尋常ではない量のスライドが使われることなどが挙げられる。基本的に、講義中に学生が発言や議論をすることを求められることは一切なく、講義時間は全て教授が一方的なレクチャーを行う。大量のスライドを用いて美術作品が解説され、それらがオンラインにアップロードされることもないため、ノートを死ぬ気で取ることが不可欠となる。筆者は、どの作品にどのような解説がなされたかを記録するために、紹介される作品を全てノートに簡単に描き写していた。ノートを取った量は、筆者がこれまでに取った講義の中でもダントツの一番である。一般教養科目だからといってナメてかかると痛い目に遭うだろう。
また、中間・期末のテスト中も気を抜くことはできない。伊藤教授は、テスト中などにバカなことをしている学生を見つけると、そのことへの愚痴を自身のFacebookに投稿するのだ。筆者が受講した年には、テスト中に居眠りか何かをしていた学生のことが書かれていたのを憶えている。教授はいつもテスト中は、分厚い本に目を落としていて、こちらを見ている様子は全く無かったのだが、意外にも学生の様子をよく観察しているようである。もしかすると、前頭のあたりにセンサーでもついているのかもしれない。
総合すると、「美術の世界」は一般教養科目にしてはかなり難易度が高く、成績評価も厳しいため、受講を決めるには勇気が必要な講義であると言える。大学は遊びに行く場所だなどと思っている学生は受講すべきではないだろう。しかし、上述の通り学生の積極参加は一切要求されないため、コミュニケーションを取るのが苦手な学生には向いているのかもしれない。いずれにせよ、この過酷な講義で及第点を取れるならば、他のどの講義も怖くはないだろう。新入生諸君は、腕試しのつもりで一度受講してみるのも良いのではないだろうか。
【RAN】
おすすめ講座②:GEH031「H1:哲学の世界」
GEH031「哲学の世界」こそ、興味のあるメジャーにかかわらず、全ての新入生がはじめに履修すべき講座だ。私が1年生の春学期に感銘を受けたこの講座は、その後の2年間で履修したものの中でも、圧倒的に良い印象の残るものである。
本講座は、西洋哲学の起源とされる初期ギリシャ哲学から、近代形而上学までを体系的に扱う。詳しい内容はシラバスを確認してもらいたいが、簡潔に言えば哲学史のおおまかな流れをたどるものである。高校の倫理の授業でやった、或いは哲学に関心があるからという理由で、既に知っている内容が多いと感じる新入生もいるかもしれない。しかし、ソクラテスはまだしも、エピキュロス、形而上学……と、慣れない語句に怖気づく方もいるだろう。少なくとも、私は後者の一人であった。「倫理っていまいちしっくりこなかった」「そもそも授業がなかった」「ソクラテスやデカルトって分野を限らずに様々な本に出てくるけれど、なんだっけ」……。哲学史と言うと肩に力が入りがちだが、この講座は柔らかい頭で考える練習をしよう。期末テストがあるため、ある程度の名前や思想は覚えなければならない。しかし、まずは講義やディスカッションを通して、教授や他の学生と1つの課題をほぐして考察していってみよう。そんな雰囲気の講座であった。
この点において、冒頭で言及した通り、本講座は哲学・宗教学メジャーに関心のない学生にも充分勧められる。ICUでの学習における基礎となるであろう、考えるということ、言うなれば「批判的精神」に触れることができる講座だからだ。
そんな「哲学の世界」を担当するのは、矢嶋直規先生。時に面白いとは言い難い冗談を混ぜつつ、簡潔な解説を行う講義には定評があり、ガッキ(学生食堂)ではゼミ生と談笑する姿も見られる。質問にも真摯に対応し、ICUの教授陣でも最も信頼の置ける先生の一人だ。
「哲学の世界」を受講することで、講座で扱う哲学史に関する知識は勿論のこと、ICUにおける学習の方法を学ぶこともできる。皆さんにも、新しいスタートに本講座を是非履修してもらいたい。
【Sylvie】
おすすめ講座③:GES062 「S2:人間と平和 」
※こちらの講座につきましては、2020年度は開講されない模様です。こちらの確認不足でした。大変申し訳ありません。しかし来年度以降に開講される可能性も踏まえ、掲載させて頂きたいと思います。
平和を願うこと、これはおそらく万人に共通する思いであるだろう。しかし、果たして人々は、世界中で起きている非平和なことに向き合っているのだろうか? ここでいう「非平和」とはインドのスガタ・ダスグプタ という平和研究者が唱えたものである。スガタは「南の世界(開発途上国)においては戦争がないからといって平和とは言えない、戦争が存在しないとしても数えきれない死者がいる」と指摘し、この状態をピースレスネス(peacelessness)=「非平和」と定義した²。
本講座で取り扱う内容は、世界ではどのような非人道的・非平和なことが起こっているのかを知ることに始まる。そして、それはなぜ起ったのか、どうすればそれを克服し、平和を実践していけるのかを究明するのである。本講座は、「総論」「事象」「人間」の3つのパートから構成される。第1部「総論」では、主に国際関係学の視点から平和にまつわる観念や理論を整理する。第2部「事象」では、紛争、差別、貧困を個別の事例を挙げながら学ぶ。そして、第3部「人間」では、歴史的・国際的背景 を念頭に置きつつ、ガンジーやマザー・テレサといった人物の生き方に触れることで、彼らの思考・行動から「平和」の意味について考える。
筆者は、本講座を昨年受講し、平和と人権に関して数多くのことを学んだ。中でも印象に残っているのは、第1部で学んだ、そもそも「平和」には2つの定義がある、ということである。この定義は平和学の第一人者であるヨハン・ガルトゥングにより提唱され、彼によると「平和」には、「消極的平和」と「積極的平和」の2種類が存在するという。前者は、「暴力状況あるいは暴力の発生を避ける」という意味での「平和」であり、その意味するところは戦争がないということである。後者は、自国のみならず国際社会の平和と安全の実現のために、動的・積極的に行動を起こすことを意味する。
ガルトゥングの考え方は、筆者にとってまさに目から鱗であった。今までは、ガルトゥングの言う消極的平和のみが私の中の「平和」だった。そのため、より能動的・積極的な行動を伴う実践的な意味での平和を考えたことは正直無かったのである。
我々の住む日本は第二次世界大戦で原爆投下を含む甚大な被害を受けた国ではあるが、その一方でアジア諸国を侵略した歴史も持つ国である。この様な背景から、日本は世界のどの国の人々よりも戦争の悲惨さを知っているだろう。本講座を通じて筆者は、国際社会の場において日本は世界平和に何らかの形で積極的に参加していかなければならないと思った。日本は、日本国憲法第9条で「戦争を永久に放棄する」と定めており、同条は世界に類を見ない素晴らしいものだと思う。であるからこそ、戦後70年以上に渡っていかに現行(日本国)憲法を守り続けてきたのかを考えること、また、戦力の放棄を掲げる同憲法について、世界に問い、考え、他の国々に伝えていくことは、平和構築に繋がるのではないかと思う。
平和研究に関するトピックに関心のある人、平和研究に触れてみたいという人たちには是非とも、おすすめしたい。この授業は一般教養科目(通称ジェネ、ジェネード)である。いきなり、100番台や200番台を取るのをためらう人は、まずはジェネでとってみるのも一つの手ではないだろうか。
【あまちゃん】
おすすめ講座④:GEN023「N1:情報科学概論」
大学生になって、強く感じるようになった欲求がある。それは、小・中・高のときの様にただ学習指導要領に従って決められた授業を受けるのではなく、自分の関心にあった学びを得られる授業を取りたいというものである。筆者は入学当初、そんな思いを胸に、初めて自分で授業の履修を決めた。そして、それらの授業の中で、特に筆者の関心に合致した授業が「情報科学概論」だった。
この授業の特徴は、情報科学メジャーの教授ら3人が、交代で講義を行うことだ。第1部では、太田啓路教授がARやVRなどの最新の映像メディア技術を紹介し、第2部ではクティチネ・マツ・アンドレア教授が画像処理を中心としたマルチメディアシステムを解説、第3部ではピフル・ルカーシュ教授がコンピューターの仕組みや情報処理についての説明をした。最終的な成績はそれぞれの部の成績の平均値で決まる。
映像技術やメディアに興味のあった筆者にとってはこれらはとても興味深いトピックであり、この授業での学びに当初はかなり期待していた。しかし、実際の授業は、期待外れなものであった。確かに、第1部の映像メディアに関する講義は、最新のARやVR技術の展望や応用について学ぶことができ、さらに、実際にVRなどの技術を体験する機会もあって大変興味深かった。しかし、第2部以降の内容は、コンピューターの「システム」に焦点を当てた講義で、筆者の興味からは少しそれた内容であった上に、数学的な概念なども登場し、高校時代から文系だった筆者には難しく感じられた。
その上、成績も第1部が2本の簡単な小レポート(50%)と出席(50%)のみで評価されるため、負担がかなり少ないのに対し、第2部は出席(20%)と宿題・小テスト(80%)、第3部はクイズ(60%)とテスト(40%)、出席による加点の合計での評価となり、試験による評価が大部分を占めることから、内容についていけていないと高い成績を取ることは難しくなる。さらに、日英バイリンガルを謳っているICUでありながら、レジュメに日本語表記がなかったほか、第3部は試験の問題文さえも英語で(解答は日英どちらでも可)記載されていることなどから、英語があまり得意でない者にとっては厳しいと感じる要素が多い。なお、これらの感想は昨年の授業内容に基づくため、今年は若干の違いがあるかもしれないことはご了承いただきたい。
以上の様に、この授業は、筆者にとっては正直期待外れなものであった。けれども、内容自体は情報科学の基礎を学ぶことができるものであり、情報科学という分野に関心のある人にはおすすめできる授業である。だが、この授業を含め他の授業についても、それぞれシラバスを良く読み、実際に授業を履修した先輩などの感想を聞いた上で、慎重に履修を決めることをおすすめする。さもなければ、筆者のように期待外れの授業をとってしまうことになるかもしれない。新入生の皆さんが大学生活のより良いスタートをきれることを願っている。
【うじ】
¹ ICU Brothers & Sisters 公式Twitter
²Sugata Dasgupta, “Peacelessness and Maldevelopment”, IPRA Studies in Peace Research, Proceedings of the IPRA Second Conference, vol. II, 1968.