次期学長になにを求めるのか?次期学長の使命に関する意見聴取会開催
|10月21日(火)15時30分、H-304教室で「次期学長の使命に関する意見聴取」が行われた。
常務理事の山本和さん、理事会に設置された小委員会からの理事2名、学生が7名参加したこの聴取会は、学生が次期学長に対して「大学のリーダーシップを執る際に期待していること」を聞き、その使命を文書にして理事に提出するために開催されたという。学生からは、次期学長に関して主に6つの意見が出された。
1.ICUのコミュニケーション体制について
まず、今のICUには双方向のコミュニケーションが足りないという学生の意見があった。
今回の聴取会も広報をしているのにも関わらず、参加者が少なく、学生は学生、教員は教員で固まってしまっていると指摘した。また、ICUはオフィシャルサイト(http://www.icu.ac.jp/)とICU Portalに情報が分散しており、ICU Portalには各部署からのお知らせしか掲載されておらず、学生からのお知らせが掲載できない。従来の学生からのお知らせも掲載できたW3を復活させようとする動きもあるが、進展がみられないと述べた。
2.ICUの理念と先生に求められていることについて
別の学生は、ICUは「他の大学とは違う」と主張しているが、国際化、グローバル化を掲げた大学が台頭しつつあり、他大学との差がなくなりつつあると述べた。もっとICUが掲げる理念を学生に浸透させるべきではないか、と語った。
また、歴史資料室の湯浅八郎に関する特別展の情報も学生にあまり伝わっておらず、理念を共有するためには関心のある教員を増やすべきだと主張した。また、授業中だけでなく授業以外のコミュニケーションも重要であり、教員は、「なぜこの職に就いたのか?」といった問いなど、学生とのさまざま対話を通して人間性を学生に伝えていく必要があるのではないかとのことだ。
3.ELAと他大学の比較について
ID:18の学生は、ELA(リベラルアーツ英語プログラム)ではCritical Thinking(批判的思考)が大切と教えられているが、ICUではCritical Thinkingが実践できていないと批判した。ELAでは議論の勉強はしているが実際の議論はしていないと主張した。
それに加え、他大学との比較ができておらず、ブランドだけで勝負しているのではないかとも指摘した。ICU以外の大学でも、徹底した英語教育などは行っているのに、ICU生は自身を批判的に検証していないとのことである。ICUは、周囲から孤立しているため他大学のサークルにも参加しにくいという問題点を挙げ、学生や教員はもっと他大学との比較を徹底すべきと提案した。
4.学長と接する機会と学長の業務について
とある学生は、日比谷先生とは食事をするなど人としては積極的に関わってきたが、学長としての業務については詳しく知る機会なかったと発言し、もっとそういった機会を増やして欲しいと要望した。
さらに別の学生からは、学生と学長が触れ合う機会が少ないために、学校と共有したいプロジェクトがあっても実行に移せず、なかなか良いアイデアを持っていてもチャレンジできないと発言し、学長との距離が遠く、もっと近づくべきだと指摘した。
5.学内における国際的な場の必要性と先生との関わりについて
ある学生は、4月生が9月生やOYRと出会う場がないため、E開講の授業を履修するまで4月生以外の友人ができなかったという自身の経験を語り、もっと交流する機会が欲しいと主張した。学内でも国際的な体験ができるはずであり、もっと環境を活かすべきだとのことだ。
また、教員への面会は、オフィスアワーを調べてアポイントメントを取ってからでないとできず、行動に移せる学生はなかなかいないのではないかと指摘した。物理学メジャーが以前バーベキューを実施したように、メジャーごとに先生が集まる機会があってもよいのではないか、という提案もなされた。
6.大学ブランドイメージについて
最後に学生からは、新学長の任期中には、新本館、新々寮、スーパーグローバル大学、入試の新科目「総合教養(ATLAS)」など様々な新プロジェクトがあるにも関わらず、統一したブランドイメージが確立していないという意見があった。60周年記念事業の際にフォントカラーやロゴを定めたように、ICUの全事業に共通する理念やイメージを決める必要があるのではないか、と指摘した。
7.まとめ
聴取会に理事の方が3名も出席することは、めったにない機会だ。それにも関わらず、授業と重なってしまったこともあってか、本聴取会への学生参加人数はあまり多くなかった。ICU Portalには告知が何度か出ていたが、この聴取会の目的や現在ICUが抱えている問題点なども記載するなど、もっと情報を発信する必要があったのではないだろうか。
理事の方は「ICU生は卒業後様々に活躍しており、今回の聴取会でもICU生らしいレベルの高いコメントが出た」と語ってはいるものの、それは、単にICUが大学として学生の教育のために努力をしてきたからにすぎない。学生の意見にもあるように、ICUが井の中の蛙になってしまい、画一したブランドしたイメージを喪失してしまえば、今までのように優秀な人材を社会に供給することはできなくなるはずだ。だからといって、ICUにおいてキリスト教が他の要素を差し置いて大学の柱となり、キリスト教系大学として歩むというのも難しいだろう。新学長選定を前にして、ICUは「何を残し、何を育てていくのか」という問いに答える必要があるのではないだろうか。