新一般入試科目「総合教養(ATLAS)」、 その傾向と対策は?
|ICUの一般入試は2015年度より一新される。今までの「リベラル・アーツ学習適性」が廃止され新たに「総合教養(ATLAS)」という科目が加わる。また、「人文科学」と「社会科学」は統合され「人文・社会科学」になり受験生は「人文・社会科学」または「自然科学」のどちらか一つを選択することになる。
新入試制度1年目であるため、何をすればよいのか不安な受験生諸君も多いだろう。特に「総合教養(ATLAS)」は今までにないかなり変わった入試科目だ。そこで、筆者がICUの公式サイトで公開されている総合教養(ATLAS)のサンプル問題に挑戦し、その傾向と対策を分析した。本稿は諸君がサンプル問題を解いたことがあるという前提で解説しているので、まだ中身を見たことがないという方は、問題に取り組んでから読むことを勧める。
2014年度までの一般入試科目 | 2015年度からの一般入試科目 |
---|---|
リベラル・アーツ学習適性 | 総合教養(ATLAS) |
人文科学 | 人文・社会科学または自然科学 |
社会科学または自然科学 | 英語(リスニング含む) |
英語(リスニング含む) |
※入学試験の詳細は、必ず入学試験要項などの国際基督教大学が公式に発表している情報をご確認ください。
1.「総合教養(ATLAS)」試験の概要
「総合教養(ATLAS)」試験は、講義が15分~20分ほど流されてから、4パート(講義内容の理解、人文科学、社会科学、自然科学)から構成された選択式の試験に1時間~1時間5分ほどで答える形式になっている。Webサイトのサンプル問題は、講義の長さは16分33秒とほぼ本番の試験通りであると思われる。
一方で、予想問題は各パート3問ずつしか明らかにされておらず、アドミッションズ・センターが問題数は40~45であると発表していることより推測すると、実際の試験では、評論の長さと設問数はサンプル問題の3倍程度であると予想される。論説はある程度の長さがあるので、日本語の速読ができるようになりたい。予想問題のテーマが「ワイン」であることから、受験生にはあまり馴染みが無く、人文科学、社会科学、自然科学の各領域からバランス良く設問が出せる題材が本番の試験でも選ばれるはずだ。
2.講義内容の理解パート
講義内容の理解パートでは、内容の大筋をつかむ問題が出されると思われる。メモ用の用紙は配布されたとしてもA4の白紙1枚程度である可能性が高く、タブレット椅子の机は非常に小さいので、メモが取れるといっても過剰に期待しないほうがよいだろう。キーワードだけ押さえておけば、あとは問題文から推測できるはずだ。講義の音声は聞き取りやすいがやや単調であるため、集中力を後半まで維持できるよう注意する必要がある。
3.人文科学、社会科学、自然科学パート
人文科学、社会科学、自然科学の各パートでは、評論が数ページ掲載され、その主題に即した設問が課される。まずは全パートの知識問題を解き、その後パートごとに本文をざっと読んでから残りの設問に取り組むのが望ましい。人文科学分野であっても単純な知識で解ける問題があるので、見落とさないようにしたい。
サンプル問題では、講義内容の理解パート以外で講義内容そのものが聞かれる設問はあまりなく、人文科学、社会科学パートは従来の入試で課されていた人文科学、社会科学科目のショートバージョンになっている。「総合教養」は新しい科目であるが、部分的には入試の過去問を使って対策できるだろう。抽象的な評論が苦手な諸君は、人文科学科目の過去問に取り組み、論述の文章になれておくとよい。まだ2年生以下であれば、受験とは直接関わりのない科目であっても授業をしっかり受け、学力に偏りを作らないようにすると受験生になっても慌てずに済む。
4.理系受験生の試験対策
理系受験生にとっては、今までとは異なり、社会科学分野の準備をする必要がある。しかし、各科目の配点がほぼ同じと考えると、全体の1/12でしかない部分のために割ける時間は限られている。私大受験や国公立受験でも日本史選択の場合は、世界史の中でも西洋史(特にキリスト教に関わる箇所)と近現代史、政治経済を中心に学習することを勧める。またヨーロッパの地理を簡単に把握しておくと望ましい。本文を読めば分かる問題もあるため、効率的に対策したい。
5.文系受験生の試験対策
文系受験生にとって鬼門となるのが、最後の自然科学パートである。今の現役生であれば物理、化学、生物、地学の各基礎科目が必須になっているはずなので、それらの教科で重要なポイントは押さえたい。浪人生や再受験生で中学レベルの内容すら忘れてしまった場合は、上記理科の各基礎科目に関する薄い参考書に目を通しておけば、対策に時間を掛けずに済む。
また、指数や三角比など評論と絡めて出題される可能性のある数学分野も復習しておくとよいだろう。目安としては数学IとA、「リベラル・アーツ学習適性」の過去問で出された領域の簡単な問題は解答できるくらいの実力が欲しい。サンプル問題の傾向から推測すると「類似の記号を選べ」や「数字の法則性を探せ」といった知能テストのような設問が出題される可能性は低くなったため、昨年度までとは力点を変えて対策する必要がある。文系の受験生が対策する際には、必要以上に時間を掛けないように注意すること。
6.まとめ
最後に、これは一般入試全般に言えることであるが、あまりICU対策ばかりに特化するのではなく、国公立を併願するのであればセンター試験や二次試験、私立大学を併願するのであれば英語長文や小論文対策も同時並行で進めてほしい。
聞き取り試験や文系にとっては自然科学分野の設問など特殊な面に目が向きがちであるが、「総合教養」で問われているのは大学生としての基礎学力である。バランス良く実力をつけていけば、結果は自然と伴ってくるはずだ。
・ICU公式サイト-新入試 科目「総合教養(ATLAS)」のサンプル問題を掲載しました
・BUCHO.NET ICU入試情報ブログ-ICU総合教養対策(ATLAS)