ICU入試体験記PartⅡ
【首都圏以外の場合】

 

 ついに入試間近となり、読者の皆さんも緊張していることだろう。もしかしたら、武者震いをしている方や、別にICUは第一志望じゃないからどうでもいいと思っている方もいるかもしれない。筆者はID20で1年次の夏にはSEAプログラムを利用してイギリスへ行き、3年次の途中から4年次の半ばまでアメリカで交換留学をしていた。こうして過去のことを振り返るといかに入学してから時間の流れがいかに速かったことだろうと思ってしまう。この記事では、とある地方都市の高校生によるICUの受験対策とその経緯、受験当日についてお話ししたい。

 筆者は同級生の中でただ一人ICUに合格した。筆者が通っていた中高一貫校はプロテスタント系で、毎年大体1名は入学する「キリスト教推薦」という枠が存在していた。しかし、中学受験を終えたあと筆者は気を抜きまくっていた。適当に授業を受け、なんとなく気が向かないだけで布団の中から欠席の連絡を親に頼んだり、始業時間に起きた結果遅刻したり、授業中に居眠りしたりしていた筆者は「評定平均」や「内申点」というものが後々どういう影響を及ぼすのか全く知らなかった。一言でいうと、評定平均値や日ごろの行いが推薦に値するほどの生徒ではなかったということだ。さて、その事実に直面したのは高3の夏休みに入る直前だった。そもそも、ICUは「なんとなく行きたい」程度で、学費が安く済む地方の旧帝国大学(と呼ばれるであろう国立大学)の文学部か人間科学部か国語学部に行きたいと思っていた。筆者の出身地は地元志向が強かったので、周りにICUという大学の名前を知っている人もほぼいなかった。こうして書くと照れくさいが、筆者が尊敬していた英語教師がICUに在籍していたという事実を知ったとき、「なんとなく」の憧れが確実なものに変わり、国立大学志望コースに在籍しながら、自分の心の中でICUを第一志望とすることにしたのだった。

 受験対策としては英検準一級レベルの単語をひたすら覚えること(英英辞典で単語の意味を調べて単語帳に書いていくと頭に入る)や、元々夏休み前から、BUCHOのICU入試対策楮オンラインレクチャーに申し込み、過去問をぼつぼつ解き始めていた。なので、現在の問題形式に似た試験になった1989年から、ALTASが加わった2015年度までの入試問題をすべて解き、分からなかった箇所や覚えていない知識についてオレンジのペンで問題用紙に書き込み、赤い透明なシートで見直しながら勉強をした。あとは、楽しむ気持ちで問題を解いていた。BUCHOのオンラインレクチャーでは、過去にこの問題を解いた人たちのランキングと点数を見ることができる。そこで、適当にライバルを見つけて次は絶対にこの人に勝つと決めて解くと、会ったこともない人になんとなく親近感すら覚える。適当なたとえではないかもしれないが、ソシャゲで推しのキャラクターのカードのためにイベントを走っているときに近い楽しさや、頭をひねって答案を絞り出すことでアドレナリンが放出されるような感覚さえ覚えるようになる。勉強することが苦しいと思わなくなってからが本番ではないだろうか? とは言っても筆者はとても成績がいいとは言えなかったと思うし、英語も高校生当時のTOEICスコアは670点程度だった。加えて、TOEFLを模したものである(と筆者は思っている)ICUの英語の入試問題は非常に難しいので、正直今でも満点を取ることはできないと思う。

 受験当日は、朝一人で起きる自信がなかったので、前日に東京に向かい、父とホテルに泊まり、タクシーで大学に向かった。受験料に加えて宿泊費と新幹線代がかかるのが地方の受験生の悲しいところである。受験前夜、ほうじ茶を飲みまくりカフェインで目がギンギンに覚めてしまい緊張感で4時間弱しか眠れなかった。完全に失敗だった。筆者は気合を入れて試験を受けるとき、制服のほうがなんとなく落ち着くので、制服を着ていったことを覚えている。試験監督の先生も穏やかで、よく通る声でテキパキと進行していた。入試問題も慣れた問題形式(なにしろ全て解いたし、何回も読み返したので)の新作をわくわくした気持ちで解いた。合格するということが一番大事なことなのはわかるが、まずは「ICUらしさ」を存分に浴びて楽しんでほしい。

 さて、合格発表はインターネットで確認したのだが、筆者はアクセスしたURLが間違っていたため発表予定の時間になっても全く変化が起きず、困惑していた。読者の皆さんはそのようなことをするとは思えないが、念のため、記しておく。地方出身だとICUの名前すら知らず、国公立大に行くことだけが素晴らしいと生徒に説き続ける予備校のチューター(ワニの学長がいる大学)に「ICUを志望しています」と言っても鼻で笑われることがあった。家族にもお前みたいな怠け者が合格できるはずがないと言われていたらしい(合格後に本音をぽろっとこぼしていた)が、なんにせよやり切って今ここにいる。受験生の皆さん、輝かしい未来に向かって頑張ってください。 【めがまっくす】