情報統制か公開か
〜コロナウイルスの寮内感染を巡って〜

 昨今世界中で猛威をふるっている新型コロナウイルス(COVID-19)に関して、感染防止と並んで大学側が最も苦心したのは感染者情報の扱い方であろう。この記事では大学による感染者情報の統制について調べた。

 ICUはパンデミックの発生後しばらくしてから、公式ホームページで関係者の感染情報を発表してきた。しかし、昨年12月18日、学内では初となる大学寮内での陽性者が発生したあと、そのホームページにあった「感染者が寮生か否か」の項目を削除した。これに関し本紙がPRオフィスに取材したところ「感染者のプライバシー保護のため」との説明を受けた。

プライバシー保護か情報の透明性か?

  

以下の資料1のように、従来のICUの公式ホームページ上の感染者情報では、感染者が学内在住か学外在住かの欄があった。

資料1・公式ホームページにおける12月15日の発表

 しかし12月18日の寮内での感染を公表した際には、居住場所の表記がなくなっていることが分かる。(資料2)

資料2・公式ホームページにおける12月24日の発表

 これを受けてPRオフィスに変更の理由を問い合わせたところ、

「感染者情報については、感染者のプライバシー保護の観点から、居住場所は掲載しないことを大学行政者で決定しました。ただし、感染情報が必要と思われる関係者とは、詳細まで情報共有しております。(原文ママ)」

という回答を得た。

 しかし、これではなぜ「寮内感染が発生してから」表記を変更したのかの説明になっていない。感染者のプライバシー保護を目的にするなら、最初から居住場所については書かなければ良いからだ。その点が疑問であったため、続けて以下の二点を質問した。

①なぜ感染者情報のホームページが作成された時点では居住場所の表記欄があったのか。

その回答は

「感染者の居住場所が学内でないことを示しても、感染者を特定することにはつながらないため、大学関係者の人権を充分守れると判断しました。」というものだった。

 しかし、「感染者が学内在住ではない」ことを示せばプライバシー保護ができる、ということなら、学内で感染者が出たら表記を変更することはその時点(ホームページ作成の時点)で既に決まっていたということになってしまう。それは正確な情報を提供するホームページとしては不誠実ではないだろうか。

 そして

②なぜ初の寮内感染者が出た時点で表記の変更を決定したのか。

それに対する回答は

「感染者を探し出すような動きが見受けられたため、表記の変更を決めました。大学関係者の人権が侵害される危惧のある時にこれを守るのは、大学の義務と考えます。」というものだった。

 もちろん感染者のプライバシー保護は重要なことであり、感染者特定の動きが生じるようなことは防がなければいけない。しかし、「寮で感染があった」という事実は授業のプレゼンで題材にされるなど(西尾隆教授の行政学(PPL204)の授業で寮内感染に関しての発表があったと言う)、既に多くの学生に知られている。そういった噂による不正確な情報で混乱を招くよりも、大学公式の情報として正確かつ必要最小限の情報を公開する方が、感染者のプライバシーを守ることにつながるのではないだろうか。

 今年1月12日に大学側が改訂した「新型コロナウイルス感染拡大防止のための行動指針」によれば、「寮生は希望する場合一時退去を認める」とある。そして、一寮生にとってその一時退去の必要性を判断する際に最も重要になる情報のひとつが、身の回りでの感染の情報である。ましてや、自分の暮らすキャンパスの中で感染者が出たならばそれは大きな判断材料になりうるだろう。

 感染者の人権保護と同時に、他の学生が身を守るため情報を公開することも安全・安心な学生生活を提供するのに必須だと思われる。もちろん大学の学生保護のための慎重さは理解できるが、情報を公開せずに混乱を招くよりは、むしろ感染拡大を防ぐために学生が必要とする情報を提供すべきではないだろうか。【ゑゐ】