続・ICUへの提言

 先だって公開した記事「ICUへの提言〜コロナ禍とハウジングオフィス〜」(2021年7月22日掲載)で、私たちはハウジングオフィスが寮内感染の情報を同じフロアの学生にも教えないように指示したとされる件について調査し、その結果として①「自治させるのか管理するのかを明確に」②「学生と対話を」という2つの提言を行った。そして記事に書いた通り、この記事をハウジングオフィスと岩切学長に送付したところ、光永雅子ハウジングオフィス室長(以下、ハウジング室長)、稲田聡学生サービス部長(以下、学生サービス部長)、加藤恵津子学生部長(以下、学生部長)、花田太郎WG編集長と筆者の5人でZoom会談をさせていただく運びとなった。本記事ではその顛末と結論を報告する。上記の記事の続報であるため、未読の方はそちらも一読することをおすすめする。

※本記事は8月13日に行われたZoom会談を再構成したものである。

感染情報を広めないよう指示したとされる件について

 今回の提言記事の発端となったこの件について、ハウジング室長は「私たちは陽性となった寮生に『自分が陽性になったということを他のフロアの人に個人名を出して伝えていいか』ということを必ず確認をしている。今回の件については当該の学生が名前を出してほしくない、という意向を示したため、名前を出さないことを目的に情報を止めるよう伝えた事実はあるけれども、感染したという事実を言うな、という指示は出していない。ちょっとした行き違いかと思う」と改めて説明した。

 こちらからの、「同じ内容を問うた私たちからの取材メールに『全て事実ではない』という返事をされたが、その時点でこの説明をしていれば事実と異なる推測を含んだ記事を発表されることはなかったのではないか」という問いに対しては「言いたいことはわかるが、どうしても忙しくて丁寧に時間が取れないこともある。返事がなければ根気強くリマインドして欲しい。今後、忙しい場合は、今忙しいからまた後日にしてくれということははっきり伝えたいと思う」(ハウジング室長)という回答であった。

2つの提言について

 提言その1「自治させるのか管理させるのかを明確に」については、「もちろん私たちとしてもフロアが各種対応を自主判断し主体的に進められるということも想定はしているが、今までの事例ではだいたい初めてのことで混乱するので、少なくとも今は両者で相談をしながら対策を実施をしている。そういう意味では、寮生側との対話は本当に密にしながら進めている。ハウジングとしてはさまざまなサジェスチョンを行ったり相談に乗ったりして、共同で二次感染を防いでいると言うのが実際のところである」(ハウジング室長)という回答であった。

 それに対して「取材をした関係者である学生は『ハウジングには指示をもっとはっきりして欲しかった』と言っており、そちらが言うように『密』な環境ではないのではないか」と質問したところ、「そこのところはコミュニケーション不足だったのかもしれないが、ではこれ(上記の「ICUへの提言」の記事)が事実ではなかったという訂正はするのか?」(学生サービス部長)という返答であり、明確な返答は得られなかった。

 提言その2「学生と対話を」について、学生サービス部長からは「対話を密にして欲しいという提言をいただいているが、一学生としてはどうすれば大学と学生の双方でコミュニケーションがなされると思うか。理想でも構わない」と提案を求められた。それに対して筆者は(新聞部員としてではなく寮生として)「生徒もオフィスもお互い顔も知らないし、住んでいる環境が違うから、伝えたいことが違うように解釈されるのではないか。気軽に顔を見て、わからなかったら質問をしやすいようなZoom、対面形式があればな、と思う」と回答した。

 それに対する返答は「まさしくそこだろう。メールだと、どんな人と話しているのかわからずいろんな想像が働いてしまう。取材もメールではなくて、Zoomではどうか。そのアポイントメントに対しても例えば『今は忙しいから候補日をあげて対応する』と返事をするなど、お互いが話しやすい状況を作るのは大学、ハウジングとしてやぶさかではない。提言としては正しいのではないか。お互い協力してやっていこう」(学生サービス部長)という趣旨のものであった。

大学による記事のチェックについて

 私たちからの感染情報の管理に関する2度目の問い合わせメールに返事がなかった件について、「メールを見落としていたことは謝罪するが、通常は記事になる前に『こういう記事を出しますよ』という事実確認をするというステップがあるという認識をしていた。後から、行き違いがあって確認をしないまま記事になってしまったんだな、とわかった。今回残念だったのは、私の見落としから始まり、新聞部による確認作業がなかった結果、『ICUは対話をしない』という認識で記事を書かれてしまったこと」(ハウジングオフィス室長)との回答があった。

 また、Weekly GIANTS Co.の取材姿勢に関して、「私たちの過失もあるかもしれないが、やはり記事の確認を端折ってしまったら、それはSNSで自分の意見で言っているようなのと違いはないのではないだろうか。取材を受けた大学の部署による記事の確認は今までやっていたが、引き継がなかったのか」(学生サービス部長)、「記事の内容の正確性の問題から、ジャーナリズムというのは正確な情報に基づいて書かれるべきだと思う。記者のあなたの意見を大学ががチェックする必要はなくとも、『この箇所を引用するが誤りはないか』といったことを聞くのは報道の必須条件ではないかと思う」(学生部長)などの意見が寄せられた。

 これに関して補足すると、我々Weekly GIANTS Co.には、記事を発表する前に取材をした相手に内容に誤りがないかチェックしてもらう「先方チェック」というシステムが存在した。しかしこれでは取材相手にとって不都合な記述が修正されてしまう可能性があり、編集会議での議論を経て「原則的に先方チェックは廃止」とした。原則、というのがどこまでなのかはいまだ議論が続くものの、「ICUへの提言」のための取材を行ったのはこのシステムの変更が行われた後である。

取材を終えて

 自分のインタビュアーとしての力量不足もあるのは確かだが、全体として回答をはぐらかされたように感じた。提言1において、大学側は「コミュニケーション不足かもしれない」と認めはしたものの、すぐに主題ではない「前回の記事が誤報であったかどうか」に議論がうつってしまったように感じる。提言2においても、議論は「『一寮生として』どう考えるか」ということに始まったにも拘わらず、結論は「今後は『新聞部は』取材もメールではなくZoom等を使うことにしてはどうか」となっており、筆者の提言としての真意は伝わらなかったように感じる。さらに付け加えると、学生サービス部長は「誤報として訂正記事は出すのか」と言われたが、前回の記事は足りない情報こそあったとはいえ誤報であったとは考えていない。そしてその情報の不足もコミュニケーション不足に起因するものであったため、この記事での追加の情報発信をもって訂正記事に代えたいと思う。

 もちろん成果もあった。目標としていた対話がなされたのも確かだし、今まではお互い顔も知らない状況でメールのみによる事務的なやりとりでの取材しか行ってこなかったが、今後Zoom等を使用することによって、今回のような情報が少ないままに書かれる記事も減らせることと思う。また、大学によるチェックのステップを省いたことについても、「確認作業がなかったから訂正ができず記事に誤りが生じた」という指摘は当てはまらないにせよ、今後の大学によるチェックのシステムに「記事全ての大学によるチェックはなくとも、発言の引用のみはチェックが可能」という新しい基準を作れたことは大きな成果だと考える。

 彼らは「WGとは良い関係を望んでいる」(ハウジングオフィス室長)、「こちらとしても隠し立てすることはない。大学側から正確に情報を伝えることは難しいこともあるので、学生新聞があれば助かる点もある」(学生部長)と言っており、それは私たちも同じ意見である。そして今回のように批判的記事を書く際にも、情報不足で主題とずれた議論をすることがあってはならないため、これを機に公的機関としての各オフィスとは近すぎず遠すぎない関係性を維持するようにし、さらに質の高い記事を書けるようにしたい。

 【山本瑛】