トランスファーのススメ
|2015年も既に10月に入り、今月下旬にはICUの入試要項が公開される。ICUの入試制度はいくつかあるが、その中でも転編入学試験についての情報は非常に少ない。そこで今回は、2015年度編入学者である筆者が、自身の体験に基づいてICUの転編入学試験を紹介したい。
編入学試験はICU以外にも複数の大学で実施されているが、それらの編入試験は非常に取り組みづらい。一般的に編入試験は外国語試験、本人が希望する学部の専門試験、面接、志願書などをもとに選考が行われる。こうした編入試験に取り組みづらい理由はいくつかある。
1つ目は、選考の明確な基準がほとんど公開されておらず、対策を練りにくいこと。面接や非常に長い志願書などは、対策に時間がかかるにもかかわらず、どの程度重点を置くべきなのか分からないのだ。
2つ目は、一般入試に比べると公開されている過去問の数が極端に少なく、演習がしづらいということだ。3ヵ年分ほどしか公開されていない大学も多く、赤本のように解答・解説が付いているわけでもない。こうなると独学で対策を練るのは難しくなってしまう。
3つ目は、何年も合格者が出ていない状態が続いているような、極端に合格者が少ない大学も少なくないということだ。在籍している大学に通いながら試験対策をしなければならない場合、編入を目指すというのは大きな決断である。強く志望する大学があっても、毎年ほとんど合格者が出ていないような編入試験に一縷の望みをかけて勉強するのはつらいだろう。
このように取り組みづらい編入試験であるが、編入学入試専門の塾に頼るという手もある。しかし、現在在籍している大学の学費を払いながら塾の学費も払うのは、なかなか苦しいのではないだろうか。
それに比べると、ICUの転編入学試験は非常に良心的である。他大学の編入試験とは異なり、その年の受験生と同じ一般入試を受験し、合格すればよいのだ。また、合否判定は一般入学試験の受験者と同じように行われる旨が公式ホームページにも記載されており、合格者も毎年ある程度出ている。もちろん、在籍している大学の成績書など、編入学者だけに求められるものも僅かにあるが、大きな負担にはならないだろう。これだけでもICUの編入試験を受けてみようと思う方も多いのではないだろうか。
しかし、公式ホームページの受験型別受験者数・合格者数を見ると、転編入学試験の倍率が他の入試より高いため、心配する方もいるかもしれない。だが、これは意識の差から来るものだと筆者は考えている。大学生が他大学に在学しながら受験するのと、現役の高校生が受験するのとでは危機感が違うからだ。
一般入試を受験すればよいとは言っても、ICUの入試は少し特殊なので対策を練りづらいという意見もあるだろう。しかし、ICUの入試が求めているのは広範な教養であり、実は一般的な大学入試よりも大学生活と両立した対策がとりやすい。
筆者が特にお勧めするのは、在籍している大学の一般教養科目を最大限活用する方法だ。ICUの入試に出そうな、自分の詳しくない分野の科目を履修し、真面目に講義を聴くのだ。例えばキリスト教主義の大学に在籍している人には、ぜひキリスト教概論を履修してもらいたい。2015年度一般入試に登場した、聖書の記述と環境問題を絡ませる問題などは即答できるようになるはずだ。他にも、経済学、政治学、憲法学などは政経分野として入試に役立った。この対策方法ならば、在籍している大学で成績を保ちながら編入を目指すことができる。もし編入試験に合格できなかった場合でも、修正が効くのだ。
ICUに編入学する理由は学生によりさまざまだろうが、筆者はこの大学に編入して満足している。特に評価できる点は2点ある。1つは、毎年一定数の編入生を受け入れているからだろうか、大学側の受け入れ態勢がしっかりしているということだ。単位編入手続きなどについても、こまめに案内が出され、窓口での相談も丁寧に行われる。また、編入生は転編入から1年でメジャー選択を迫られることになるわけだが、それについても編入生向けのメールが送られて来るため、気軽に相談に行くことができた。
もう1つは、この大学の自由度の高い履修制度である。この大学の履修制度は筆者の編入動機の一つではあったが、実際に入学してみると、その解放感に驚きを覚える。筆者のように一般的な学部制の大学から編入するのならば、この気持ちはよく理解していただけるだろう。狭い必修科目の中で履修に悩んでいた頃を思い出すと、編入して良かったと実感する。
この記事を読んで少しでも興味を抱いた方には、ぜひICUの転編入学試験を受けてほしい。2016年度の大学ガイドブックの裏表紙にはラテン語でこう記されている。叩けよ、さらば開かれん。