トランスファー生座談会 〜ICUの転編入制度の本質に迫る〜
|ICUには、トランスファー生という学生がいる。つまりは、他大学からICUへ編入してきた学生のことだ。小中学校、高校での「転校」とは異なる、大学での「転編入」とは何なのだろうか。今回は筆者を含む、2016年度ICU転編入本科学生の3人の体験談を通して、その実態を明かしていく。
そもそもICUの転編入制度は、以下の点で他大学の編入制度の仕組みと大きく異なる。
- 一般受験生と同じ入試を受験し、同じ評価基準で合否が決定されること。
- 日本または外国の大学で本科学生として1年以上在学(見込みも含む)すれば受験できること。
- 入学後、前大学での英語科目単位が編入されないこと。
(http://www.icu.ac.jp/admissions/april/transfer/)
このように、様々な大学生に門戸が開かれていることにより、毎年の受験生は70人から80人と多く、倍率は約7〜10倍と、一見厳しい闘いのようにみえる。いまこの記事を読んでいる読者にも、倍率を気にして、一般生と転編入生のどちらで受験するかで迷っている人は多いはずだ。しかし実際は、既に大学生であることに甘んじて、真剣に対策を講じ、入試当日を迎える受験生は多くはないと筆者は感じた。再入学と転編入の大きな違いは、2点ある。
①編入生は3年で卒業できるのに対して、再入学の場合は最低4年間ICUに在学しなければならないこと。
②編入生は60単位まで転編入できるのに対して、再入学の場合は転編入できる単位数が30単位までであること。(外部ではあまり知られていないが、再入学の場合でも前大学で取得した単位の編入が認められることがある。)
※今年度のケースに対する筆者の個人的経験、ICUハンドブックより。
これらを考慮した上で、一般生と転編入生、どちらで受験するかを決めるといいだろう。
以下の座談会における体験談は、既に様々なところで講じられているICU受験対策だけでなく、去年他大学からICUへ編入し、春学期の1学期間を過ごした転編入本科学生の3人が感じた、前大学とICUの違い、具体的な志望動機についてフォーカスしたものだ。当事者として、この記事がICUに入試直前3ヶ月前の悩める未来のICU編入生の参考になれば幸いだ。
ーー以前の大学と学部、在学年数について聞かせてください。また、ICUでは何を専門にする予定ですか?
A:S大学経済学部に1年間通っていました。ICUでは引き続き経済学を勉強する予定です。
B:A大学文学部英米文学科に1年間通っていました。ICUでは言語学と人類学メジャーに興味があります。
C:N大学法学部法律学科法職課程で2年間過ごしました。ICUでは人類学と社会学メジャーのどちらかひとつを専攻しようと思っています。
ーー以前通っていた大学で満足できなかったことは何でしょうか?
A:なにひとつ満足していませんでした。
B:取れる授業が限られていたのが大きな点です。教授陣の講義に対する熱意の差も気になりました。気軽に教授に話に行ったりも出来ない環境でしたし。
C:私は、法曹になるためのコースの学生だったので、ずっと法律の詰め込み教育をされていて、段々とそれに飽きていきましたね。あとは、受験に失敗した感覚を引きずって、前の大学にいた頃は友達を作らないって決めていたので、友達も全然いなくて本当につまらなかったです。
B:私の大学にもよくいた。大学生になって、それで満足している人たち。
A:単位を取って卒業すればそれでいい、みたいな人が多かったですね。あとはバイトするか、部活するか、飲んで遊ぶかという感じで。学業がメインな人なんていなかった(笑)。
B:そういう大学生を批判する気はないけれど、なんだか合わなかったよね。
ーーICUと、以前の大学での生活の大きな違いは? 転編入後に気持ちの変化はありましたか?
A:リベラル・アーツ教育。私は1年間経済学を学んでみて、1つの学問領域だけでは解決できない問題が世界にはたくさんあるなと感じました。例えば行動経済学みたいに、心理学と経済学を学ばないと深く追究できない学問もあって。そういう学問を究めるために、他分野に渡って同時に勉強できる環境が整っているのがICUだと思います。
B:私はAさんとは逆に、やりたい学問を突き詰めるためのリベラル・アーツというよりは、色々な分野を少しずつ齧って、将来的にどれを学習したいのか身を引いて考え直すためのものだというような気がしています。気持ちの変化としては、アイデンティティが増えた気がしています。A大学で学生だった自分と、ICU生としての自分がいるので。編入をしたことで自分のバックグラウンドが少し複雑になったので、複雑なバックグラウンドを持つ人に対して、寛容になれました。
C:圧倒的に異なるのは、ICUは詰め込み教育の機会が少ないということですね。他には、自分の行動に責任を持つことが求められる代わりに、思い切り自由が与えられているところ。履修に関しても、自分でやりたいことをやりなさいというICUのスタンスが表れていると思います。
ーー以前の大学での交友関係について教えてください。
B:私は仲のいい子もできて、楽しかったです。この夏休みの間も以前の大学の友達とよく遊んでいました。
A:今でも会ったりはする。ただ、副部長を任されるはずだったサークルを、編入にあたって突然辞めてしまったので、それはちょっと申し訳なく思っています。
ーーICU受験は何回目でしたか? 転編入受験を決めたきっかけは?
B:私は、現役時代を含めて2回目。編入してからわかったことだけれど、リベンジする生徒は珍しいみたいですね。きっかけは、高校1年生のときにICUのELA(http://www.icu.ac.jp/liberalarts/collegewide/ela/)、メジャー制度、芝生に惚れ込んだこと。芝生の上で本を読んでみたかったんです。自分にとっての正しい大学生のスタイルな気がして(笑)。
C:確かに、広大な敷地に芝生……アメリカの大学みたいな感じで、ちょっと憧れますよね。
A:私は、1回目でしたね。編入はしたいと思っていて、色々な大学をみていたんですが、上位の私立で、経済が勉強できて、2年次編入ができる大学はICUしかなかったんですよ。それが決め手です。
C:私も同じく1回目でした。現役時代は法学部のある大学しか受験しなかったので、ICUは候補になかったんです。編入しようと思ったきっかけは、ICUを訪れる機会がよくあり、都会を少し離れたところでのびのび自然に囲まれながら過ごす大学生活に憧れたからですね。以前の大学がビルだったのもあって、のびのびしたキャンパスライフというものを経験したことがなくて。私は以前の大学に所属しながら、上智大学のインカレの英語ディベート部に参加していたんですが、ディベートの大会でICUを訪れるたびに、なんとなくいいなあって思っていました。
ーーICU受験を決めたのはいつ頃でしたか?
C:10月の終わりですね。ICU祭2日目の帰り道に決めました。だから、今この記事を読んでいる人も、きっと間に合う(笑)。
B:私も10月くらいから考えていたかな。
A:私は夏休み頃です。
ーーどう対策しましたか?
B:ICU日曜講座のテストを1回だけ受けました。あとは赤本とリンガメタリカですね。ATLASはICUが公表している模擬問題だけで対策しました。実際の試験よりも随分と短かったけれど。
C:BUCHOのオンラインレクチャーを11月の始めから、12月末まで集中的に利用しました。オンレクは解説にICU関連の豆知識がついていたから、リスニングの第1問とかにすごく役に立ちましたね。編入ならば1つの大学の入試に集中すればいいから、その大学専用の対策を講じてくれるところにお世話になるのがおすすめです。
学校の図書館の個室にこもって、思いっきり勉強していました。ICU受験まで12週間しかなくて(笑)。だいたい大学の授業が18時に終わるのですが、そのあとすぐ個室にこもって、22時までオンレクの過去問を解き続ける毎日だったかな。時間がそれしか取れなかったので本当に集中していました。すきま時間には、ICUの教授の著作とかも調べて、少しだけ読んだりしましたね。
A:対策は夏くらいから始めました。留学も視野に入れていたのでICUの勉強も兼ねてTOEFLの対策をしていました。勉強は主に授業中とかにしていましたね。
ーー再受験することは周りの知人・友人・両親に話していましたか?
B:基本的に、すごく仲いい子だけにはばらしたかな。以前の大学でいちばん仲が良かった子も編入を目指していたから、一緒に鼓舞しあっていました。親にはもちろん話して、応援してくれていました。
A:親にも、友人にも言わなかった。合格してから話したので、皆すごく驚いていましたね。運良く奨学生になれたので、入学金もかからず、迷惑はかけなかったと思います。
C:以前の大学にはすごく仲がいい友達もいなかったし、ある程度距離を取られていたので、言うタイミングもなかったですね。でも友達なんていらない! みたいな私の態度が、かえって編入を考えていることを暗に示していたかなとは思います(笑)。母には話していましたけれど、父には合格してから伝えました。私は大学生を合計5年間することになったので、学費の面で申し訳ないとは思います。
ーー単位換算・転編入について教えてください。
A:以前の大学では、約40単位取得しました。編入できたのは30単位くらいですかね。
B:私も40単位くらい取得したのですが、編入できたのは20単位でした。少ないですよね。以前の大学は英語にフォーカスした学習をしていたので、多くの単位は英語科目で、ICUには持ち込めませんでした。あと、単位編入の際に以前の大学の評価基準がわかる書類や、受講していた講義のシラバスが必要なので、取っておくとよいと思います。
C:私は2年いたので、94単位ありましたね。上限の60単位ぴったりをICUをに編入しました。特に、ICUは3年間体育科目をコンスタントに取っても4単位にしかならないので、以前の大学で体育科目(実技+保健)を4単位取得しておいてよかったと思いました。他に留意すべきところを挙げるならば、ICUの評価基準でC以下の成績を取ってしまった単位分は編入できないということです。
ーー転編入生は卒業まで3年しかありませんが、それは長いのでしょうか、短いのでしょうか?
A&B:短いです! 3年で足りない100単位は取れるかもしれませんけど、就活も同時進行するとなると本当に大変かなって。むしろ4年在学できる経済力と気持ちの余裕があるならば、編入じゃなくて再入学でもいいのではないかと思います。
C:私はできることならば2年で卒業したいくらいですね。単位数も結構余裕があるし。2年次転編入と、3年次転編入だと大きな差がありそう。
ーーありがとうございました!