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ICU祭ラグビー部OBOG会支部主催イベントに参加してー日本ラグビー界のこれから

2019年秋、翌年に東京オリンピックを控えたこの年に、一大スポーツイベントが日本で開催されることをみなさんはご存じだろうか。ラグビーのワールドカップである。日本のラグビー関係者にとって10年越しの悲願であった、日本でのワールドカップの開催。2015年、弱小国と言われ続けてきた日本がラグビー強豪国の南アフリカに逆転勝利をおさめ、日本中が歓喜に沸いたことは記憶に新しい。ラグビーは、いま最も“アツい”スポーツなのである。

そんな中、去る10月21日に雨天のICU祭の中で「ラグビー部OBOG会支部主催イベント」が開催された。イベントは、2部構成となっており、前半はラグビー体験会、後半はTeam Japan 2020ラグビー男女7人制総監督である岩渕健輔氏とアジアラグビー会長である徳増浩司氏という豪華ゲストを迎えてのトークイベントが行われた。徳増氏はICUの卒業生であり、和気あいあいとした雰囲気の中イベントが進んだのが印象的であった。

前半のラグビー体験会は人工芝フィールドで行われる予定であったが、天気はあいにくの雨。C-Gymに場所を移して開催された。決して広いとはいえないC-Gymに総勢40名ほどの人々が集まり、見学をしていた筆者も汗ばむほどの熱気が参加者からは発せられていた。

その中でも特筆すべきは、子どもと女性の参加者の数である。それぞれ10人ほどが参加しており、合計すると半分が女性と子供の参加者となる。先入観ではあるが、ラグビーに「男っぽいイメージ」を抱いていた筆者にとって、この参加者の人数比は新鮮な驚きであった。男性の参加者は経験者が多かったようで、久しぶりに触れるラグビーボールの感触に笑みをこぼしていた。

体験会は、ラグビーの社会人チーム「調布三鷹オールカマーズ」が参加者に稽古をつけるという形で進み、子供たちが全力で人に体当たりをしてはボールを受け渡す様は爽快であった。初めて紡錘状のボールに触る子供たちは、思い通りにいかないボールの軌道に驚きながらもパスの練習を重ね、社会人選手たちの胸をかりてのびのびと練習を続けた。

この体験会で、ラグビー経験者にとってはラグビーへの熱い思いをよみがえらせることができたとともに、ラグビー未経験者にとってはラグビーへの興味という新しい扉が開かれたのではないだろうか。

続くトークイベントでは、ダイアログハウスにて岩渕氏と徳増氏が日本ラグビーの現状について軽妙なトークを交わした。そこで語られたのは、日本のラグビー界の現状とラグビーワールドカップ日本招致への苦労である。

そもそも、かつて日本のラグビーチームは世界に歯が立たない状態であった。それをどのようにして「勝つ」チームへと引き上げることができたのか。「勝ったことのないチーム」を勝たせるためにはなにが必要だったのか。

岩渕氏は以下のように語った。

「まず、監督にエディー=ジョーンズを迎えたこと。彼はとにかく厳しいコーチで、選手たちに現状を伝えられる人物でした。さらに、今までは相手にもしてもらえなかった強豪チームとの試合を組みました。それでも試合数は他国に比べると十分ではありませんでしたが、試合が少ないのを逆手にとって合宿を繰り返しました。4年間で500日を超えるハイペースで合宿を入れたんです。合宿では前提条件を疑う過酷なトレーニングを行いました。朝5:50から練習をし続けた結果、選手の体つきにも劇的な変化が現れました」

さらに、ただ練習量を増やしただけではないと岩渕氏は語る。

「相手を徹底的に分析しました。次の試合の審判が分かると、その審判で練習試合も行いました。電子書籍を作り、選手の間で戦術の共有を徹底したのも工夫のひとつです。また、選手の自主的な判断を重んじました。監督であるエディー=ジョーンズは世界の大物です。しかし、試合中にその監督の指示に逆らってでも選手が自分たちの意志を貫いたことで勝利につながった場面もあります」

改革と手を抜かない練習が日本のチームを着実に強くしたことが分かる。

では、なぜ力を蓄えつつも強豪国とは言い難い日本でワールドカップの開催が決まったのだろうか。

立役者である徳増氏は語る。

「2003年から招致運動を始めたものの、はじめは全く相手にされませんでした。日本はIRB(国際ラグビーボード)の理事国ではありましたが、まったく蚊帳の外の存在。というのも、ラグビーの世界ではイングランドをはじめとする伝統国の存在がとても大きいんです。ワールドカップの開催地も伝統国が独占している状態で、日本で開催ができるなんて誰も思っていませんでした。まず、彼らのコミュニティに入ることも難しい状態で、他のラグビー関係者とfirst nameで呼べる仲になるのが第一という状態でした。しかし、ラグビーが伝統国だけで独占されている状態に問題意識が向いている時期でもありました。オリンピックにラグビーが採用されないのはグローバル化が進んでいないから、という指摘があったんです。そうして、長い交渉と苦労のすえに日本でのワールドカップが決定しました。これは初めての伝統国以外での開催であり、アジア初の開催でもあります」

ラグビー界で、伝統国とその他の国との隔たりは深刻なものであるようだ。岩渕氏も、イギリスで就学しラグビーチームに所属していたころ、日本人である自分になかなかパスが来ないなど、学生チームの中でさえ排他的な動きがあったという苦労話を披露した。その中で日本でのワールドカップの開催。ひとえに日本でラグビーワールドカップを開きたいという関係者の熱意の賜物であるといえるだろう。

そんな進化し続ける日本ラグビー界であるが、次の目標はなんだろうか。

「ラグビーのグローバル化を手掛けたいと思っています。特に、アジアでの人口を増やしたいですね。いま、アジア1ミリオンプロジェクトという活動を行っていて、ラオス・ベトナムなどでも普及運動などを実施しています。さらに、このほど、日本でも小中学生を対象にインターナショナルスクールと日本の子どもたちが一緒に英語でラグビーをする教室を始め、そうやってラグビーを通じて国際交流の機会を作っていきたいと考えています(徳増氏)」

トークイベントの終了後、筆者は彼らに、ICU生に向けたメッセージを伺った。

岩渕氏「日本ラグビーワールドカップは調布市の味の素スタジアムで行われる予定です。味の素スタジアムと立地の近いICU生にはぜひ協力してほしいと思っています。ICUには語学が堪能な学生が多いでしょうから、いろいろな角度からワールドカップと関わって当事者になってもらいたいです。ラグビーの問題点はラグビーをどうやって知ってもらうかです。なので、大学終わりにでも試合を観に来て欲しいですね」

徳増氏「ラグビーワールドカップは20カ国が参加する大会で、国際的に大きな機会です。この国際交流のチャンスをICU生に利用してもらいたいです。ラグビーに興味がなくても、国際機関で働きたい人は、語学ボランティアも募集するのでぜひ参加してほしいです」

トークイベントでは、今まで知ることのできなかったラグビー界の現状を知ることができた。日本のラグビー界の抱える問題とその発展の歴史。ラグビーがさらに日本、そしてアジアにとって身近な存在になることを願ってやまない。