【宣伝記事】劇団黄河砂2018年卒業公演『ないのあしあと』の全貌に迫る

1月10日(水)から15日(月)までの6日間、新D館1階多目的ホールにて「劇団黄河砂2018年卒業公演『ないのあしあと』」が上演中だ。今回、劇団関係者の協力の下、本誌記者がゲネプロ(最終リハーサル)に潜入取材。公演の全貌や魅力に迫った。

物語の舞台は現代の日本。冒頭、がんで亡くなってしまう津村朝子を中心とした複雑に絡み合う人間関係の中で、登場人物たちの感情、葛藤が交錯する。弁当屋の店員・光恵との仲を深めるも、朝子の喪失が受け入れきれず、思い悩む朝子の夫・成久。器用すぎる性格がゆえ、周囲から朝子と比較される度に傷つくも、それを押し込めてしまう娘の小春。光恵の同級生で、かつて子育てや自身の出自に悩んでいたときに、ママ友だった朝子の一言で救われた玲子。そして、玲子の息子で、小春の高校の同級生でもある悠都。他にも数多くのキャラクターが登場し、関わり合い、物語を彩る。

観劇して、「群像劇」と言ってもいいほど多くのキャラクターが登場するのに、埋没したキャラクターはひとりとして存在しないという感想を持った。それは、各登場人物の人となりや気持ちの揺れが丁寧に表現されていたからだろう。まさしく、質の高い役者と脚本、劇を引き立てる優しいBGMや、素朴な衣装と舞台美術の賜物であると思う。

どこにでもいそうで、だからこそ愛おしいキャラクターたちが紡ぎ出す、ハートフル・ストーリー。18の卒業公演としてふさわしい舞台であると感じることができた。

 

ゲネプロ終了後、劇団関係者に取材を敢行し、意気込みを伺った。
梅津さん:本公演で演出を担当している梅津ゆりと申します。演出とは、映画で言う監督のようなポジションで、劇の中身を作ってきました。

――今回の劇の内容を『ないのあしあと』に決められたのも梅津さんですか?
梅津さん:そうです。

――その理由を教えていただけますか?
梅津さん:(黄河砂の)18メンバーに個性的な人たちが多いので、その人たちそれぞれの生き方を引き出し、生かせるような作品を選びたいなあと思い、この作品にしようと決めました。

作中、登場人物たちはそれぞれに色々な「ない」、つまり喪失感を抱えています。それとどう向き合って、どういう風に立ち向かっていくのか、どういう風に生きていくかということを考えて、役と卒業する18たちが生きていってほしいなあということで選びました。

堂本さん:この公演で主演と演出補佐を務めている、堂本一幸と申します。主演ということで役者でもあるんですけれど、演出補佐として「梅津が伝えたいこと」が脚本の中にあって、それを梅津なりに伝えようとするときに手段を提供しています。「役者にこうやってしゃべらせればいいんじゃないか」とか、「間をこれくらい作ったらどうか」とか、実践的なアイデアを出すのが僕の仕事です。

――主演ということですが、どのようなキャラクターを演じられているのですか?
堂本さん:僕の演じるのは津村成久という役です。10年前に妻の朝子をがんで亡くしていて、それから10年間、親から受け継いだ地元の不動産事務所で忙しく働きながら、ひとり娘の小春を何とか育てている、というキャラクターです。

――役に対して思い入れなどありますか?
堂本さん:成久は、すぐに物事に向き合えないところがある人間で、本人なりに、一般的にできる範囲のことはしているんだけど「もっと出来たんじゃないか」と心残りを感じてしまうタイプの人間です。成久も僕自身も、物事を後回しにしてしまいがちなところがあり、そういうところは似ているなあと感じています。

――今回はダブルキャスト公演(一部キャストが日によって変更される)ということですが、違いなどはあるのですが?
堂本さん:僕は、「感情に達するまでの導線」は人によって違うと思っています。瞬発的なのか、じわじわ持っていくのかも違うし、それは人柄から違ってくるものだと感じます。同じキャラクターとして成立はしているけど、並べてみたら全然違う人間。それは、心の動きが違うからだと思います。そこの比較を楽しんでいただければ嬉しいです。

▲主演・演出補佐の堂本一幸さん(左)、演出の梅津ゆりさん(右)

――最後に、公演直前の意気込みをお聞かせください!
梅津さん:どの角度から見ても、何かひとつは思うことがあるようなお芝居になってるんじゃないかなあと思うので、自分なりの目線で楽しんでいただけたら幸いです。ぜひ、会場まで足を運んでいただけたら嬉しいです。

堂本さん:この劇のタイトルは『ないのあしあと』ですが、劇の外でも色々な喪失ってあると思うんですよね。たとえば、東日本大震災で多くの人が亡くなったあと、それぞれの「日常的なもの」が失われてしまったと思います。もう会えなくなることもそうですし、味噌汁の味が変わるとか、そういう些細なことも含めて喪失だと感じます。

そして、そういう喪失って誰でも味わうことではないでしょうか。引っ越しても喪失ってあるし、進学しても喪失ってあるし。新しいものを得るときには、裏側に必ず喪失があると思います。18だったら、これから就職や進学をするときに大学を喪失しますよね。その喪失とどう向き合って生きていくのかということを感じ取ってもらえる芝居にしたいです。僕個人にとっては、演劇を7年間やってきた集大成になるので、ぜひ観に来ていただきたいと思っています。

 

4年間、ICUの演劇界を盛り上げてきた黄河砂18の集大成。ぜひ、その目で確かめてみてほしい。公演の詳細は以下の通りである。

公演名劇団黄河砂2018年卒業公演『ないのあしあと』
場所国際基督教大学ディッフェンドルファー記念館ホール西棟 多目的ホール
日時1月10日(水)19:00開場 19:20開演
1月11日(木)19:00開場 19:20開演
1月12日(金)19:00開場 19:20開演 
1月13日(土)13:00開場 13:20開演 
1月13日(土)16:00開場 16:20開演 
1月14日(日)14:00開場 14:20開演 
1月15日(月)19:00開場 19:20開演 

 

▲冒頭で亡くなる朝子だが、物語において重要な枠割を果たす

 

▲時にすれ違い、時に支え合う成久・小春親子

 

▲高校生になった小春を取り巻く人間関係も、物語の中核を成していく