「Learning for All 子どもたちの未来に責任を持ち、一緒に進み続ける」 ボランティア教師の藤田さんにインタビュー

この記事は、特定NPO法人Learning for Allからの寄稿です。

 

日本の子どもたちの7人に1人が貧困状態にあることを、皆さんはご存知でしょうか。厚生労働省の調査によると、実に日本の子どもの13.9%、約7人に1人が、相対的貧困状態(※1)にあります。さらに、ひとり親世帯の子どもの貧困率は50.8%と、OECD加盟国の中で最低の水準です。

また、貧困世帯の子どもたちは、低学年のうちには大きな学力差がなくても、学年が上がるにつれて他の世帯の子どもたちよりも遅れが出ることが調査(※2)によって明らかになっています。学力の差は進路の差につながり、進路の差は将来の収入の差につながります。

つまり、世代を超えて貧困が連鎖してしまっているのです。

このような状況を変えるために、近年は民間団体等による「子ども食堂」や無料の塾での支援が広まりつつあります。

そうした支援の中の一つとして、私たちLearning for Allは2010年から都内で活動を続けています。Learning for All(以下LFA)は、「すべての子どもたちが自分の可能性を信じ、自分の力で人生を切り拓くことのできる社会の実現」を目指し、困難を抱える子どもたちに「質の高い」支援を提供しています。また、ボランティア教師として経験を積んだ大学生たちが将来、教育現場やビジネスの分野でリーダーシップを発揮し、社会課題を根本から解決できるような人材育成をLFAは行っています。

そのような活動が評価され、今年1月には「『エクセレントNPO』をめざそう市民会議」の主催で行われる「エクセレントNPO大賞」において、156団体の中から課題解決力賞及び大賞をいただきました。

 

LFAではICU生も活躍していますが、まだ「子どもの貧困」自体やLFAの活動についてもICUでの知名度が低いのが現状です。

 

そこで今回は、子どもを取り巻く実情やICU生の皆さんにできる支援の中身について知っていただきたく、2016年5月から2年2カ月にわたってLFAの学習支援事業でボランティア教師・拠点運営スタッフと子どもたちの学びを支援している、ICUの4年生の藤田愛加さんにお話を伺いました。

▲研修中の藤田愛加さん

――まず、藤田さんがLFAに参加した理由をお聞かせください。

 

私が最初にLFAに参加を決めた理由は「困難を抱える子どもたちを救いたい」という、大きな思いがあったからです。私は母子家庭出身ですが、大学に通えていますし、自分の家庭が貧困家庭だという認識はありませんでした。しかし、図書館で読んだ本で「子どもの貧困」という社会課題と母子家庭には特に貧困層が多いという事実を初めて知り、どうしても他人事には思えず、ずっとこの問題に関心を持ち続けていました。家が貧乏だから、家庭環境が悪いから、そんな子ども自身には変えられない要因によって、子どもたちの将来の可能性が狭められている社会は絶対に許せないと、怒りに似た感情を持ち、なんとかしなければという思いがありました。社会全体の課題である「子どもの貧困」の解決のために、大学生である自分にできることはちっぽけなことかもしれません。けれども、大学で授業を受けているだけではなく、社会の課題を自分のこととして捉えて子どもたちを直接支援し、少しでも多くの子どもたちを救うことこそ私が今できることだと思い、LFAに参加することを決意しました。

 

――LFAの一員として活動する中で、最も印象的だった出来事はなんですか?

 

最も印象に残っているのは、私が中学1年生の女の子を指導していた時の出来事です。その子はもともと勉強が苦手で、自信がなく、指導時間の最後に行う小テストでも6割取れればいいや、というような子でした。それから私はその女の子と3ヶ月間向き合い続けました。彼女は苦手だった英語の単元を少しずつ理解して、小テストで満点を取るなどの成功体験を積み重ねました。そして最終日には「事後テスト(指導最終日 に行うまとめテスト)で絶対満点取れると思う!」と宣言してくれるぐらい自信を持ち、そして実際に9割以上という高得点を取りながらも、「100点取れなかった……」と、とても悔しそうな顔をする女の子に変わりました。

 

この経験を通して私はとても大事なことを学びました。それは、本気で寄り添う人がいると子どもは絶対に変わる、ということです。子どもは本当に大きな可能性の塊であり、子どもの可能性は、どんな理由によっても絶対に狭められるべきではないと、改めて強く思った出来事でした。

 

――活動を続ける中で、自分が変わったと思うのはどのような点ですか?

 

私がLFA参加前の自分と一番変わったのは、「子どもの成長を支援するためには、自分がまず変わらなくてはいけない」という意識を強く持てるようになった点です。私は子どもたちの前に立つ以上、良くも悪くも少なからず彼らに影響を与えています。その私自身が変わらない限り、子どもたちの成長にも繋がらないのでは、ということに気づくことができました。私たちはLFAでの活動の中で、子どもたちの様々な課題と向き合います。私はそのような様々な課題の要因を子どものせいにすることなく、自分自身に帰着させ、解決のために自分がまず変容・成長するという気持ちを強く持って活動しています。そしてLFAには、子どもの成長を促すために、自分自身も変容し続けることをいとわない、素敵な仲間がたくさんいます。そんな魅力的な環境だからこそ、私はこのような意識を持つことができ、子どもにも成長を届けられたと思っています。

 

――最後に、ICU生へのメッセージをお願いします!

私はLFAに出会う前、正直言ってICUで強く学びたいことがありませんでした。しかし、LFAで子どもたちに出会い、子どもたちの人生に正面から向き合う経験を通して、この子たちが自分自身で人生を切り拓いていけるような社会を実現するために、ICUで学びたいことや、今後やりたいことがたくさんできました。

今やりたいことがわからないICU生、逆にやりたいことがたくさんあるICU生が、LFAで子どもたちと向き合うことは、子どもたちの人生にとっても、みなさんの人生にとっても、とても大きな変化をもたらすことになると思います。

 

Learning for Allでは、学習支援プログラムのボランティア教師、子どもの家プログラムのボランティアスタッフを募集しています。(※3)

少しでも興味をお持ちいただいた方は、まずはぜひお気軽に説明会へお越しください!

 

▼プログラムの詳細及び説明会のご予約はこちら

http://saiyou.learningforall.or.jp/

※説明会日程は随時更新しております。

 

※1 等価可処分所得の中央値の半分以下で生活している状態のこと。たとえば親子2人世帯(ひとり親世帯)の場合、月約14万円以下で暮らしている子どもたちを指しています。この金額では最低限の食・住は満たす事が出来ても、子どもの教育や将来への投資に充てる余裕はありません。

※2 日本財団「家庭の経済格差と 子どもの認知能力・非認知能力格差の 関係分析」(2018年)

※3 春夏秋冬、すべての時期にプログラムを実施しています。夏のみ8月中に研修と指導の全ての日程が終了する短期のプログラムで、春・秋・冬は3カ月間、毎週土曜日の指導です。夏期の募集は7月20日までです。