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【ここでしかできない留学】タイ・タマサート大学 市川裕太郎さん

ICUには海外の提携校で1年間学ぶことができるという交換留学制度があり、現在も多くのICU生が世界中の大学で勉強している。皆それぞれが現地でしかできない経験をして多くの刺激を受けていることだろう。そこで、これから約1年間Weekly GIANTS Co.の記者が「ここでしかできない留学」をテーマに世界中に留学しているICU生へのインタビュー企画をお届けする。その記念すべき第一号はタイのタマサート大学に留学中の市川裕太郎(ID20)さんだ。(※インタビューは再構成済み)

▲タマサート大学のDomeの前で制服を着た裕太郎さん

ーー最初にタイの魅力について教えて下さい。

豊富な自然やリゾート、古代遺跡、グルメなどで有名なタイ。一つの国を一言で記述するのは大変難しいですが、生活しているうえで強く感じる特徴を挙げるとすれば「王国」かつ「仏教国」といったところでしょうか。まず、タイは日本同様に、立憲君主国ですが、国王に対する国民の尊敬度は、圧倒的に日本以上です。タイといえば映画『王様と私』を思い浮かべる人も多いと思います(ちなみにこの映画は、王室に対する不敬罪に当たるため、タイでは上映禁止です)。日常生活においては、道路・家・レストランをはじめ、至る所に、国王や王妃の肖像画が飾られています。また、映画館では本編上映前に国王の映像とともに国王賛歌が流れ、その間、観客は起立しなければなりません。それと同時に仏教国であるということも大きな特徴です。国民の95%は仏教徒であり、街中にある仏教の祠に人々は献花します。長時間お祈りをしている方を見かけるのも珍しくありません。信仰はかなり篤い印象です。

タイの魅力は、暮らしやすいところです。これは世界中から集まる留学生が異口同音に唱えることですので、世界的にも生活しやすい国と言って差し支えないでしょう。ではどういったところが暮らしやすいのかというと、第一にはその国民性が挙げられます。タイを形容する言葉に「The land of smile(微笑みの国)」がありますが、言い得て妙なりで、老若男女、基本的にニコニコしているという感じがします。第二に、その気候です。年間の平均気温は29℃と典型的な熱帯気候であるため、一年を通してTシャツに短パンで過ごすことができます。そして、第三に、大学生にとって何よりありがたいのはその物価の低さでしょう。タイの物価は日本の約1/3。家賃は2万円代から探すことが可能ですし、食費もすべて外食でも1日1000円あれば十分すぎるくらいです。その他、生活用品・交通費も、しかるべき場所・手段で購入すれば価格は日本の1/3となります。タイへの留学生に対するJASSOの奨学金は7万円/月ですので、質素倹約に努めれば奨学金のみで暮らすこともできるのではないでしょうか。

 

ーータマサート大学の魅力を教えてください。

タマサート大学は1934年に設立されたタイで2番目の歴史を持つ国立大学です。校風は一言でいえば「自由」。ただ、この大学の「自由」は一味違います。

代表的なタイの大学としてチュラロンコン大学がありますが、チュラロンコン大学は1917年に当時の王ラーマ6世によって直々に設立されたタイ初の大学で、もとは官僚養成のための大学でした。どちらかといえば、保守的な大学といえるでしょう。対してタマサート大学は、王政から民主主義体制に移行した2年後の1934年に、「タイ民主主義の父」と称される政治家プリーディー・パノムヨン氏によって設立されました。つまり、タマサート大学は民主主義的な新しい国家づくりを担う人材を育成することを目的に設立されたのです

タイの政治は1932年の立憲革命以後、たびたび軍事クーデターが起こっているので、軍政と民政の間を行ったり来たりしています(ちなみに今は軍事政権)。タマサート大学はそのような歴史の中で、民主化を求める運動の中心的な役割を果たしてきました。詳しい歴史は割愛しますが、代表的な出来事が2つあります。まず1つ目は、1973年の学生決起です。タマサート大学の学生が中心となって起きた学生決起によって、政治は軍政から民政へ移行しました。2つ目の出来事は、その3年後に起こります。学生決起以降、長らく続いていた保守派・右派と左派(主にタマサート大学生)の対立が頂点に達し、タマサート大学は襲撃され、構内では多くの学生が虐殺されました。この一幕を写した写真家Neal Ulevichは1977年のピューリッツァー賞を受賞しています。

このように、タマサート大学の歴史とタイの近現代の歴史は密接な関係があり、それらは学園の校風に大きな影響を与えていると言っていいと思います。身近な例でいえば、チュラロンコン大学やその他の大学には学生が毎日制服を着用するルールがあるのですが、タマサート大学では制服着用の義務は公式行事に出席する際のみに限ります。

ちなみにロケーションですが、南に王宮・バンコク三大寺院、北にカオサンロードと、バンコクの観光地のど真ん中にあります。毎日にぎやかで、飽きることは全くありません。

 

ーー現地での学びについて教えて下さい。

留学先としてタイを選んだ理由は、「東南アジアの経済・文化・政治について、現地で学ぶため」でした。ICUでのメジャーは開発学ですが、留学先での所属は経済学部です。今期、僕の取っている授業は「タイ経済」「開発のマクロ経済学」「産業経済学」「環境経済学」の4つです。「タイ経済」「開発のマクロ経済学」では、タイや周辺の東南アジア諸国の例が頻繁に出てくるため、当地域への理解がとても深まります。また、大学での学び以外にも、フィールドトリップやボランティアなど、課外活動の機会が豊富にあります。僕は先日、環境系NGOの主催する、熱帯雨林のフィールドトリップに参加してきましたが、日本にいてそれらを映像で観るのとは全く違った経験を得ることが出来ました。タイでの体験の例を挙げると、野生ゾウの減少とそれに伴う生態系の悪化・森林伐採など様々な現象が起こっています。日本にいても、それらはどこか遠い国のおとぎ話のような感じがしましたが、実際に自分の目でそれらを複合的に見て初めてその程度を実感しました。話は少しそれましたが、このように、タイにはここでしかできないことが豊富にあります。よって、東南アジアやタイについてそこで学びたい!という人におすすめです。

 

ーータイに留学するにあたり、注意すべき点を教えてください。

まず、英語力の向上を留学の為の条件において、優先順位を高くつけるなら、タイはお勧めできません。僕の所属する経済学部インターナショナルプログラムには今学期24名の留学生がいますが、本科生の数は473名なので留学生の割合はかなり低いです。基本的に留学生は同じ授業をとる傾向があるので、正直なところ毎日英語漬け、というわけにもいきません。授業や友達とのコミュニケーションでは英語を使いますが、ネイティヴ並の英語力をつけたいのであれば、かなり限界があるといえるでしょう。

また、留学先での勉強に何を求めるかによりますが、例えば開発学といえば本場はイギリスです。僕の所属する経済学部には開発経済を専門とする教授は相当数いますが、彼らの出身大学を見てみるとやはりイギリスをはじめとした欧米の大学・大学院ばかりです。彼らの授業はタイや東南アジアにおける経済発展という文脈で授業が展開されるため、僕としてはかなり面白いですが、ここは開発学部ではありません。幸いなことに、ICUは彼らの出身の名門開発学部を持つ大学と多く交換留学の提携を結んでいます。手っ取り早くそれらを学びたいということであれば、欧米の大学に留学することを目指すのが吉といえるでしょう。

 

ーー最後に、読者に向け一言お願いします。

いかがでしたでしょうか。特に、後半は留学を考えている後輩の方々へ向けて伝えたかったことです。しかし、ここでお伝えしたことはあくまで僕の意見です。例えば留学に申し込む動機は千差万別ですし、交換留学を経て「英語力の向上」を求めている人には、タマサート大学はあまりおすすめできないというのは先ほどお伝えした通りです。ですが、ここでしか経験することが出来ないものがあるというのもまた事実です。そのため、僕の話が読者の方の留学について参考になれば幸いです。

 

ーーありがとうございました。

 

次回は、カリフォルニア大学サンタバーバラ校に留学しているICU生へのインタビューをお届けする予定だ。乞うご期待。