第1回ICU世論調査 内閣支持率、衝撃の15.7%

 Weekly GIANTS Co.(以下WG)は、2020年1月下旬から3月上旬にかけて、ICUの学生を対象に無記名アンケート方式の世論調査を実施した。調査は、WG部員が対面で筆記アンケートを直接配布する形式で、新旧D館、大学食堂、本館前広場、本館、理学館、ILC、学生寮において行われた。調査対象者は、ICUに在籍している学生(2019年度冬学期当時)に限定し、アンケートを配布した対象者のほぼ全員にあたる、262人から回答を得た。

調査結果を見る際の注意点

(1)調査結果は1月末から3月上旬に得られたもの

 冒頭で述べた通り、この調査は今年の1月下旬から3月上旬にかけて行われたものであり、調査の完了までににひと月以上の時間を要している。また、調査終了から記事公開までに、既に2ヶ月以上の時間が経っている。この間には、新型コロナウイルスの感染が拡大するなど、大きな社会情勢の変動があった。よって、今回の調査で得られた結果を、直近の世論調査と比較することは適切ではない。

 なお、本記事では、この調査の質問内容や実施時期と最も近い形で行われた全国レベルの世論調査との比較を行っているが、時期のズレがある以上は、完全な比較はできないということに注意しなければならない。

(2)精度について

 大学当局の公表資料によると、2019年5月8日時点でのICUの総学生数は2708名だった。2708名を対象とする調査において、要求精度5%、信頼率90%の調査結果を得るためには、約250程度の有効回答を集めなければならない。換言すれば、90%の確率で、誤差5%以内の調査結果を得るためには、少なくとも250名から回答を得なければならないということである。今回の調査で得られた回答数は262であり、この基準を満たしている。

 

実際に使用したアンケート用紙

※アンケート後半の「学内の問題」の調査結果は、後日別の記事で公表する。

 

【調査結果】 

1. 内閣支持率

 およそ半数の学生が、現行内閣を支持しないと回答した。朝日新聞が2月15、16日に全国で行った調査では、支持39%、不支持40%、その他・答えない21%となっている。全国調査と比較すると、ICU生は現内閣に批判的な傾向が強いことがわかる。一方で、「分からない」と答えた学生は30.3%にのぼっており、政治にあまり関心を持たない人も多いと考えられる。

〈参考〉世論調査―質問と回答〈2月15、16日実施〉(朝日新聞デジタル)

https://digital.asahi.com/articles/ASN2K6HCPN2KUZPS002.html

2. 支持政党

 過半数の学生は、「支持する政党はない」または「分からない」と回答した。特定の政党を支持する人の中では、自民党、立憲民主党、れいわ新選組、共産党の4党のいずれかを支持する人が大半を占めた。その他の政党はいずれも1%に見たない支持率となっている。朝日新聞が行った全国調査と比較すると、ICUでは、①特定の政党を支持しない人が多い ②自民党支持者が少ない ③立憲民主党、れいわ新選組の支持者が顕著に多い、という3点が際立つ。

〈参考〉世論調査―質問と回答〈2月15、16日実施〉(朝日新聞)

https://digital.asahi.com/articles/ASN2K6HCPN2KUZPS002.html

3. 天皇制についてどう思うか

 天皇制に関する質問では、全国調査とほとんど同じ傾向が見られた。毎日新聞が行った全国調査では、「現行の天皇制でよい」と答えた人が74%、「天皇制は廃止すべきだ」が7%、「天皇を現在よりも権威と力のあるものにすべきだ」が4%となっている。ICUでの調査でも、概ねこれと近い数字が出ている。

〈参考〉象徴天皇制「支持」74% 自民支持層も8割超す 毎日新聞世論調査(毎日新聞)

https://mainichi.jp/articles/20190502/k00/00m/010/103000c

4. 憲法第9条への自衛隊明記への賛否

 憲法第9条への自衛隊明記に関する質問では、全国調査と比較して、明記に前向きな姿勢が見て取れた。朝日新聞が昨年5月に全国で行った調査では、「賛成」が42%、「反対」が48%となっている。一方で、今回ICUで行った調査では、「賛成」「どちらかというと賛成」が47.7%、「反対」「どちらかというと反対」が27.9%となり、「賛成」が「反対」を上回った。安倍政権に批判的な傾向が強い一方で、首相が目標とする改憲には前向きな学生が多いというのは、興味深い結果だ。しかし、「賛成」「反対」以外の回答をした者もICUでは多く、十分に議論が深まっていない可能性もある。

〈参考〉9条改憲案、議論広がらず 自衛隊明記賛否、海外活動に注目 朝日新聞社世論調査(朝日新聞)https://digital.asahi.com/articles/DA3S14000370.html

5. 沖縄県名護市辺野古沿岸部の埋め立てへの賛否

 この問題に関しては、反対が多数を占めた。毎日新聞が昨年3月に同様のテーマで行った全国調査では、賛成29%、反対52%となっている。ICUの調査では、「賛成」「どちらかというと賛成」は17.2%、「反対」「どちらかというと反対」が60.8%となった。低調な内閣支持率と合致する結果だ。

〈参考〉毎日新聞世論調査 辺野古続行、反対52% 賛成は29%(毎日新聞)https://mainichi.jp/articles/20190318/ddm/001/010/152000c

6. 夫婦は結婚したら同じ姓を名乗るべきか

 夫婦別姓制度の導入に関しては、前向きな姿勢が見て取れた。「そう思わない」「どちらかというとそう思わない」が56.5%となり、NHKが2017年に行ったほぼ同様の調査で出た43%よりも大幅に高くなった。一方で、ICUの調査では、「分からない」「どちらでもない」などの回答が約4分の1にのぼり、全国調査よりも大幅に高くなった。ICU生は、概ね夫婦別姓制度に賛成する傾向が強一方で、単純に割り切れない問題だと考える層も多いことが分かった。

〈参考〉世論調査 価値観の変化は | 日本国憲法70年 みんなの憲法 |NHK NEWS WEB(NHK)

https://www.evernote.com/shard/s500/client/snv?noteGuid=04aa4ffa-dbad-44df-995b-01cb3a8ae259&noteKey=ed2846c17557835611404e4762308569&sn=https%

7. 死刑制度は維持されるべきか

 死刑制度に関する調査では、全国調査と比較して、死刑制度廃止派が顕著に見られた。近年、全国レベルでは、死刑制度維持派が増加傾向にある。NHKの資料によると、死刑制度維持派は、1992年から2017年の間に16%増加し、2017年には78%にのぼっている。一方、ICUでの調査では、維持派54.2%、廃止派36.7%となり、廃止派が比較的多い。欧米諸国では、死刑制度がすでに廃止された国が多いが、ICU生はそうした海外の傾向に影響を受けた可能性が考えられる。

〈参考〉世論調査 価値観の変化は | 日本国憲法70年 みんなの憲法 |NHK NEWS WEB(NHK)

https://www.evernote.com/shard/s500/client/snv?noteGuid=04aa4ffa-dbad-44df-995b-01cb3a8ae259&noteKey=ed2846c17557835611404e4762308569&sn=https%

8. 日本は積極的に移民を受け入れるべきか

 移民の受け入れに関しては、69.4%が賛意を示した。NHKが2017年に実施した全国調査では、「外国人労働者の受け入れは、今程度に制限すべき」という質問に51%が「そう思う」と回答しており、全国的には移民の増加に対する警戒感がいまだに強い。対して、ICU生の間では、留学生などと接する機会が多いことも影響するのか、移民受け入れに積極的な人が多数を占めた。

〈参考〉世論調査 価値観の変化は | 日本国憲法70年 みんなの憲法 |NHK NEWS WEB(NHK)

https://www.evernote.com/shard/s500/client/snv?noteGuid=04aa4ffa-dbad-44df-995b-01cb3a8ae259&noteKey=ed2846c17557835611404e4762308569&sn=https%

9. 外交・国際関係について、下に挙げた国に親しみを感じるか

(a)米国

(b)中国

(c)韓国

 米国、韓国、中国の順で親しみを感じる者が多いことが見て取れる。しかし、内閣府が昨年実施した全国調査(年齢階級18~29歳)と比較すると、ICU生の間には、米国に対して親しみを感じる者は比較的少なく、韓国・中国に対して親しみを感じる者が多いことがわかる。内閣府の調査では、親しみを「感じる」「まあ感じる」と答えた者は、米国84.8%、韓国45.7%、中国40.8%となった。一方で、ICUでの調査では、親しみを「感じる」または「どちらかというと感じる」と回答した者は、米国71.3%、韓国60.7%、中国46.9%となった。伝統的に、米国との関係が強いICUにおいて、米国に対して親しみを感じる者が比較的少ないという結果は、注目に値するものだ。

〈参考〉日本と諸外国・地域との関係(内閣府世論調査)

https://survey.gov-online.go.jp/r01/r01-gaiko/2-1.html

おわりに

 今回ほどの規模で調査を行ったのは、私たちにとって今回が初めてのことであった。調査結果の集計は、回答結果をExcelに手作業で入力するという、日本政府顔負けの非常に不器用な手法で行われた。調査結果の公表が遅れた背景には、回答結果の集計作業が非常に面倒なために、部員が途中でやる気を失ってしまったことや、キャンパスが閉鎖された影響でWGの活動が一時滞ってしまったことなどがある。今回、やっとのことで、この一大企画の記事化が実現し、部員一同、目の上のたんこぶが取り去られたような心持ちでいる。

【棟梁】【RN】【まっくろくろすけ】