挑戦するICU生
〜誰もが飲み会を楽しめる世界を!〜


 「お酒を飲めない人にも選択肢を」をテーマに今までにないノンアルコールのゆずハイボール、「CAREFREE YUZU」を作っているICU卒業生の吉村卓也さん(ID21)。その行動力の根源に迫った。

ーーインタビューを受けてくださりありがとうございます。早速ですが、CAREFREE YUZU」を作ろうと思ったきっかけを教えてください。

 原点は自分がもう一度飲み会を楽しみたいという、すごい利己的な思いつきだったんです。僕は大学4年生の頃に肝臓の病気になってから、お酒が飲めなくなってしまいました。コロナの影響で留学先から帰国したんですが、ステイホームのストレスで蕁麻疹が出てしまったため病院に行って血液検査したら、あれ肝臓が悪いぞ、と。結構長くなると言われ、昨年の11月中頃に入院、手術をしました。しかし、結局原因はわかりませんでした。朝昼晩と薬を飲んでいても、やはり怖くてお酒が飲めないんです。僕は今まで飲み会が好きで楽しんでいたんですが、この病気になって初めて「お酒を飲めない人」の視点を得ました。飲み会で自分だけ烏龍茶を飲んでいるのは疎外感を感じるし、ノンアルコール飲料はビールしか選択肢がなく、さらにソフトドリンクは高い。「飲み会行こうぜ!」って、お酒を飲めるのが前提で誘われるけれど、自分だけ烏龍茶かソフトドリンクではつまらない。メニューを見ていてもワクワクしないというか。その選択肢の狭さにモヤモヤ感があったんです。飲み会をアルコールの飲めない人も楽しめるものにしたくて、そのためにノンアルの飲み物を増やしたいと思ったのがきっかけでした。

ーーその着想から実現までの流れを教えてください。

 なぜゆずのハイボールかというと、自分が一番好きだからです(笑)。昨年12月初旬に作ろうと決心して、業務スーパーでゆずやノンアルのハイボール、蜂蜜などを大量に買って寮の部屋で実験し始めました。世の中でヒットしているゆずハイボールの成分表示も参考にしながら、こうした実験を商品化が決まるまでずっとやっていました。

 その次に、この飲料を製品化してくれる工場を探し始めました。こっちで提案したレシピを工場に送って作ってもらうOEM(Original Equipment Manufacturer)というシステムがあるんですが、この工場を見つけるために50軒以上にひたすら電話しました。しかし、OEMというのは基本的に企業が利用するシステムなので、一学生が電話してもほとんど相手にしてもらえなかったんです。しかし、佐賀県にある友桝飲料さんだけが話を聞いてくれて、メールでやりとりをするうちに、「100万円ほどあればなんとか作れそう」ということがわかり、ここにお願いするしかないと感じて決めました。それが12月8日のことなので、作ることを決心してから1週間でここまで突っ走ったんです。

 そして、本当に製品化するならゆずを仕入れなくてはなりません。たまたまこのことを相談した友達の地元がゆずの名産地で、この友人の父親経由でゆずの生産者さんと繋がることができました。そして僕の思いを汲んでもらった結果、このプロジェクトのためにゆずを卸してくれることになりました。

 そういうわけでメーカーさんと生産者さんが決まったので、売れるかどうかは僕のレシピ次第でした。時間をかけていろんな商品の研究・調合を繰り返して、最終的に自分が美味しいなと思える味ができました。そのレシピをメーカーさんに送って、この味を量産して欲しいと伝えたところ、完璧に再現された試作品が送られてきました。さすがプロだなとびっくりしました。ラベルのデザインはICU生に頼みました。これも完成するまでだいぶ推敲し、没案は10以上も出ています。

 最後に、資金を入手するためにクラウドファンディングを立ち上げました。これはAll-orNothing(註・設定した金額に届かなかった場合、支援金は全て返却される)方式なので、期限までに目標金額に達しなければ残念ながらプロジェクトは中止です。

(CAREFREE YUZUの試作品)

ーーその過程で苦労したこと、こだわったことはありますか?

 ケアフリーという名前にはいろいろな思いがこもっています。自分がお酒を飲めなくなってから、とても気を使われるようになったんです。「ごめんね、こっちだけお酒で」みたいな。そういう場で、お互いが気を使わなくていいようにという意味でこの名前にしました。自分の課題に素直な名前なので、半年たった今でも良い名前だと思います。

 苦労したことといえば、やはり味です。飲み物を作るのだって初めてでノウハウもないので、自分が「うまい!」と思えるかどうかを一つの評価基準に努力をしました。一度、フレンチのソムリエに飲んでもらったら、「居酒屋料理に合う味だ」という最高の褒め言葉をいただきました。まだ手元にないのでどうしようもないですが、将来的には飲んだ人からのレビューを積極的に受け入れて、このケアフリーという商品をいつまでもアップデートさせ続けなければならないと思っています。

 あと、やはり1人でやってるので工場探しの営業も大変だったし、お金を集めるのにもとても苦労しています。

ーーでは商品の紹介をお願いします!

 一言で言うと、ゆずジュースじゃ「ない」です。ゆずジュースとは全く違って、多分今まで皆さんが飲んだことがないであろうノンアルコールの「ゆずハイボール」に仕上がったと思っています。

ーー質問なのですが、ノンアルドリンクを普及させるのが目的ならわざわざ自分で作るよりも、既存商品を居酒屋に卸すシステムを作る、とかの方が簡単じゃないですか?

 結論から言うと、そっちの方が難しいと思います。大手の企業の販路を変えることは自分にはほぼ不可能なので、自分で作ってしまった方が簡単なんです。なので、最初は地元の小さな店などから初めて少しずつ浸透させていく方が、世の中を変えるスピードは早いと思います。

ーーなるほど。では最後に一言、お願いします。

 まず、支援してくれた人たちの期待に絶対応えたいです。まだ商品もないのに僕の想いだけに対して、安くはない金額を賭けてくれたわけですから。

 二つ目は、僕が思い描くのは、飲めない人に選択肢があるのが当たり前の世界なんです。だから、目先のクラウドファンディングが終わればそれで良いのではなく、どんどん製品を改善して世の中に受け入れられるようなものにします。

ーーありがとうございました!

【インタビューを終えて】

 一つのことに問題意識を抱えてから半年で製品化に漕ぎ着けてしまう、その行動力に驚かされた。多くの人に味わってもらってどんどん発展していくことを願ってやまない。【山本瑛】

吉村さんのSNS

twitter  https://twitter.com/oakhouseboy?s=21

Instagram https://instagram.com/takuya_oak98?utm_medium=copy_link

CAREFREE YUZUのクラウドファンディングページ

https://camp-fire.jp/projects/view/415543?list=search_result_projects_popular

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