[紙版最新号掲載記事]人生22年目、初めて全盲の人と友達になる。三好里奈さんインタビュー【前編】

※この記事は、紙版学内向け新聞 The Weekly GIANTS の最新号、No.1256掲載の記事です。※発行された紙媒体に於いて、『〈できること〉の見つけ方 〜全盲女子大生が手に入れた大切なもの〜』の著者名の、「石田由香理」さんの記載が「石田由里香」さんと謝って表記されていました。訂正してお詫びします。

「こんなところにポツンと、なんの意味があるんだ」と思っていた点字ブロック(新々寮前)。
「ここから曲がり道」という意味がちゃんとあるらしい。

 

今回The Weekly GIANTSは、「世界人権宣言とICU、ICU批判」という特集を組んだ。ちょうどその時、私は『〈できること〉の見つけ方 〜全盲女子大生が手に入れた大切なもの〜(石田由香理・西村幹子著)』を図書館で借りて読んでおり、ICUが大学として障がいのある学生を障がいのない学生同様に受け入れることにも、理念として掲げる世界人権宣言が密接に関連していることを再確認させられたばかりだった。そこで、私がキャンパスでよく見かけていたが、ついぞ関わる機会がなかった三好里奈さん(ID24)にこれを機にインタビューしてみようと思い至った訳である。タイトルにもある通り、全盲はおろか、視覚障がいのある人すら、大学に入るまで私の周りにいたことはなく、里奈さんは私にとって初めての、全盲という障がいを抱えた友人となった。インタビューには、私、花田太郎とSDさんの2人で、里奈さんに話を聞かせてもらった。

太郎:質問は大きく分けて4つ。まず1個目の質問「どういう経緯でICUに来たか。全盲の障がい者としての自分とICUの制度や理念が共鳴することがあったか。」「ICUは自分を当たり前のように受け入れてくれたという他とは決定的に違う感覚を抱いたから、入学を固く決意した」って、全盲の人が書いた本(前述の石田さんについての本)の冒頭にあったから、ICUに来た経緯に関して、ICUの理念とか、他(の大学)との違いとか影響したのかなって。

里奈:なるほど。障がいに関することに寄せて答えた方がいい?

太郎:いや、全然そのままで。

里奈:志望動機は、日英バイリンガル教育と、自分が将来言語をめっちゃ運用したいっていう希望が合致したのと。あと、ちょっと障がいに関係あるかもしれないけど、多様性の実践っていうのを、色んな人がいるところで学ぶ方が、どういう風に多様性実践したらいいかがわかるようになるんじゃないかなっていうのがあって。他にも色々、リベラルアーツもすごい良いなって思った。学びたいことも決まってなかったし。

 でも感覚的な話をすると、オープンキャンパスには合計3回来たけど、高2の夏に初めて来た時は、正直全然ICUと自分って合わないなと思って。私はすごい消極的だったし、ICUの積極的な雰囲気が疲れるし、「えーこんなところにいても全然楽しくない」とか。あと、これは障がいにちょっと関係するかも知れないけど、自転車使う人が多いじゃん?

太郎:あーーーーーなるほど。

里奈:その頃の私何もわかってなかったから、(ICU生には)自転車あったほうがいいとか(皆んなが)言ってると、自分が絶対ハブられるとか思ったのね、全然そんなことないけど今は。2人乗りとかするの絶対恥ずかしいから嫌だと思ってたし。

 でも高2の1月に、3週間タイに留学に行って、インクルーシブ教育制度の中で勉強してみて、視覚障がい者も一緒に教室で学ぶっていうのをやってるうちに、自然な支援に感動する機会があって。あと、留学して、積極的に発信しないと置いていかれるって中で自分の積極性が増したっていう変化があって。それを終えて帰国した後にICUに来たら、すごいICUの景色が(以前と)違って。そこで、ここに入学したいってのを感じた。

 っていうのが一応のストーリーではあるけど、ICUには特別学習支援室ってあるじゃん? あそこですごい手厚くサポートしていただけるっていうのと、あと視覚障がいの卒業生が多いっていうことも、まあ一応理由にはあったって感じ?

太郎:なるほど。俺は、(石田さんについての)本では「支援とか、大学自体の障がい者に対する態度が他とは違う」って理由が志望動機として強いって書いてあったから、勝手な先入観で質問したけど、そういうのはむしろ小さい方?

里奈:あー、一応あるとは思う。だから入ったという訳ではないけど。

 入ってから感じるところはあって、例えば、ICUの支援室は、資料の変換お願いしますって言ったら、私が(音声読み上げ機能で)読めるように、テキストデータに全部変換してくれたり、写真もできる限り言葉で説明してくれるし。今スペイン語を取ってるんだけど、春は(学内バイトの人による)サポートを横でずっとつけてもらったりとかできたし。支援してくれる大学はさ、今時代も変わってきて増えているとは聞くけど、でもやっぱICUはそこが手厚いな、というか慣れてるなって言うのを感じる。

 あとそうだなー、私のことを単に「知って理解したい」とか、私のために「力になれることって何かなー」って考えることがある、って言ってくれる友達がいたり。なんかこう、「直接的な視点だけじゃなく、「自分の日々の生活の中で間接的にできるサポートとかもあるのかな」ってことも聞かれて。私が考えたこともなかったこと言ってきてくれる子もいるから、それを考えると、多様性に興味があるって人、うまく言語化はできないけど(ICUには)多いかなってイメージはある。

太郎:あーなるほど。なんか、他の大学と比べてうちが手厚いってことも理由にあったのかって聞こうと思ったけど、そもそもやっぱり、俺もそうだけど、他の大学とか入ったことないからわかんないよね(笑)。

里奈:そうーわかんないのー。(高校の)先生とかね、勧めてくれたけどねそういう感じで(ICUは支援が充実している、って)。でもほんとかーとか思ったしさー、キャンパスとかめちゃめちゃ歩きにくいよ、上智とかの方が絶対歩きやすいよ。

太郎:へーーー。

里奈:多分ね?(笑)実際生活したことないからわからんけどさー。でも、点字ブロックつけて欲しいですとか言ったら、支援室が管財に言ってくれたり。うーん、ほんとに、過ごしやすいっちゃ過ごしやすい。なんか場所的に過ごしやすいかとか考えてばっかいたけど、どういう人がいるかで過ごしやすさが変わるんだなって入ってからわかった。

太郎:それは次の質問にも繋がるけど、「 ICUの中と外で普段過ごしていて違いを感じる点は何か。」人が接してくれる仕方とかも結構違うって感じたりするの?

里奈:多分、傾向としてはあると思う。とは思うんだけど、期待通りの答えになってるかわからんけど、私自身の考えがICUに来て変わって。なんか高校の時までは、視覚障がいのある人かそれ以外かみたいな考え方をすることがびっくりするくらい多くて。でもここに来て、そんな狭い考え方じゃなくて、もっと色んな多様な人がいて、視覚障がいはその中の一つだって考えるようになって。そういう考えでICUの外とかで周りを見渡すと、見える景色もちょっとずつ変わってきたりとか。もしそうやってあまり理解してくれないような人がいたりしても、前はどうせ住む世界が違うんだなあとか思ってたけど。なんか今は、こういう人がいるんだなあとか、歪んだ考えをしてる人がいたらすごいもったいないなあ、とか。私がICUで感じてることとか伝えたいのになあ、とかそういう気分になる。

太郎:へー、なるほどなるほど。

里奈:はー緊張する。

太郎:(笑)。次、3つめの質問「大学が謳うところの宣言や多様性と自分の実感はどれくらい一致するか。」

里奈:えー、多様性は確かにあると思う。えー難しいなー、これ記事的に大丈夫なのかな。

太郎:いや全然全然。

里奈:いやなんか、障がい者としてはさ、大学で全然うまくいくと思ってなかったけど、一年半過ごしてきて、良い場所だし、良い時間過ごしてんなと思う。けど、何だろ、障がいだけじゃなくてほんとにもっと色んな多様性があるから、ICUがそこを全部カバーできてるとは思わないっていうか。例えば、奨学金制度とかもあるにはあるけど、めっちゃ充実してるかって言われたらそうでもないから。収入が高くない人とかは入りにくい環境になってるんだったりとか。多様だけど、ゆってもisolatedだなってのは普通に感じる。

太郎:なるほどー。それはなんかその、自分よりも、自分以外にもっと目を向けるべきところに向けれてないという批判として?

里奈:そうー、そう感じる。

太郎:逆になんかこう、さっき言ってたみたいに自分の方には目が向けられてるって感じ方もあって、その反動として、みたいな?

里奈:うんー、それもあるかな。私はすごい過ごしやすいなって思ったけど、同時に多様な人がいるって気づかせてもらったから。確かに今まで見てきた世の中よりは多様だけど、ICUが謳うほど多様かって言ったら、それはどうなんだろうかっていうか。

太郎:何だろうなんか、バッサリ言えば、もっと見るべきところあるのに、見えるところの多様性を謳っている感じがするというか……。

里奈:そうそう、国籍とかジェンダーとかすごい大事だけど、うーんなんかそれだけじゃないよねというか。

太郎:なるほど。それで3の質問にかっこで付け加えたところがあるんだけど。さっきその、タイの話あって、自然なケアを学んだって言ってたけど、多様性って言って相手を理解しましょうっていうけど、それに批判ができるわけじゃん。なんかこう、「義務感から優しくされていると感じてしまうことってどれくらいあるのか」なって。よくあるじゃん、ポリコレ的な「みんながダメっていうから」ゲイとかレズの人を悪くいうのはやめる、みたいな。それと同じようなことを自分に関して感じることってあったりするのかなって。

里奈:えー、ICUに居たら、それはほぼほぼない。あるよー、もちろんある。時々ある。私が「大丈夫ー」とか言っても、「ほっとけないしー」とか、「なんかあったら嫌だしー」とか。

太郎:それは俺も同じことやられたら嫌だな。

里奈:時々あるよ、「そうは言ってもほっとけない」みたいな雰囲気感じること、ある。あるけど、えー、でもほぼない。言ったことは「じゃあ助けるね」っていうし、「大丈夫」って言ったら「ああ大丈夫なんだ」って(わかってくれる)。あと、ちゃんと説明して、「でもどうしても私が心配だから、今日は送ってもいい? 」とか頼んでくれたりすることもあるし。えー、そうだね。(嬉しくない優しさは)時々あるけど、割合は少ないって感じかな。

太郎:おーおーなるほどなるほど。まあそうか。とりあえず俺の周りには、ポリコレ的に、みんながダメって言うからゲイを馬鹿にするのはやめようみたいな態度の人はいないけど。実際なんかその、まだポリコレで行動する人もいるんじゃないかなと思ったけど、意外とまあいないんだ、じゃあ。

里奈:まあ私の周りには。

【後編に続く】

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