「チルいジェンダートーク」運営者にインタビュー【後編】

※この記事は前後編から成る記事の後編です。

ーーみなさんにとって、ICUでジェンダー・セクシュアリティ研究を専攻する意義は?

じょん:私はそもそもICUに入学する前はジェンダーを専攻にする気はなくて。もともと障がいに関するマイノリティ性とかを勉強したくて。ただ、ジェンダーに関しては私自身が結構マイノリティ性があると感じていたから、そういう問題にどのような枠組みで取り組むのがいいのかなと考えて、メジャーは社会学や政治学かな……と考えていました。で、一番最初に興味本意で履修したジェンダーの授業で学んだ考え方が、自分の抱いていたもやもやとか疑問とかスタンスにあっていて。既存の男性と女性という枠組みだったり、ヘテロセクシャルとかその他のマイノリティとか、そこにある力関係っていうのが絶対的なものじゃなくて恣意的なものだから今後変わっていく可能性もある、って。(ジェンダー・セクシュアリティ研究の考え方は)絶対視されているものを疑うことを正当化してくれて、じゃあ次はどうしようっていう道標を示してくれるものだなと思う。だから、もともと興味があったっていうのと自分が助かっているという部分が、(私にとっては)大きいと思います。そして、当たり前だと思われていることに、こう思ってもいいんだと言ってくれるところと、より人を傷つけない方向に社会を持っていく考えの自助になってくれるところ。私はこの二つにすごく意義を感じています。

レモン:私も一年の春学期が終わるまでは、そんなにジェンダー専攻にしようとは思っていなくて。でも、ICUのオールジェンダートイレが結構初めは衝撃的で。今少し振り返っていたんですけど、もともと高校の時からジェンダーに興味はあったものの、専攻にしたいとまでは思っていなくて。だけど、自分が感じていた疑問とか不条理だと思うことがジェンダーの視点から考えると説明がついたり。説明がつくというか、ジェンダー専攻で取り上げられる理論とかが説明しようとしていたり。自分の関心があることがより身近になるなと思って。ジェンダーって本当にいろんな分野にかぶっていて、それこそかぶってない学問はないくらい。ジェンダー専攻の人たちの中でも、興味のある部分はそれぞれで方向性も違うけど、他のメジャーと同じようにメジャーとしてジェンダー専攻があることによって、自分の探求したいことの道が開ける感じがしています。例えば、高松先生の授業とかでジェンダーの観点から政治学を掘り下げたりするので、そういうところはICUにジェンダー専攻がある意義だと思います。

りんご:GSSってついた授業がジェンダー学の全てではなくて。さっき言ってくれたみたいに、国際関係学とか政治学とか人類学とか社会学とか、いろんな分野にジェンダーが関わっているから、色んな分野の授業を履修することによってジェンダーを修めることができる。

 前に家族に「ジェンダーだけ学んでいたら偏る」って言われたことがあるんですけど、逆に学ぶことによって偏りに気がついて、たくさんの視点から問題解決のために学ぶことができると思います。(政治に参加することはジェンダー平等を実現する上で大切なことだから)ジェンダーを勉強することによって政治の知識もしつくし、今まで人類学が何を研究してきて、それが今の私たちの性にどう関わっているかとか、そういった色々なことを学べる。ICUの学際っていう観点からしても、GSSは相性のよい学問分野だと思います。

おこめ:私も最初は人類学とか社会学とか、MCC*7 とかやろうと思っていて。でも、どの授業受けていても私の気になることはジェンダーに関することだなって思った。”Personal is political”「個人的なことは政治的なこと」っていう、おそらくジェンダー基礎の授業で知った言葉なんですけど、この言葉が印象に残っていて。ジェンダーを学ぶと自分の中の常識が変わっていくし、自分がもっと良い人間になれる。もちろん、自分が今まで誰かを傷つけてしまっていたという自省とそれを改めていく、自分を変えていく苦しさとかは常にあって、それは個人的にみんなが背負っている重みだと思うんだけど。それはこのGSSという学問の大事な部分だと思っている。自省して次に進めるってことは、自分を見つめ直すことでもあるし。結局ジェンダーを学ぶことは自分を救うことで、自分が誰かを傷つけることからも、自分が他者から傷つけられることからも守ること、本当はそうではないっていう軸を持つことができる。だから私は、自分のためにジェンダーを学んでいると思う。ジェンダーを学ぶことで、もっと自分を好きになれる。自分を好きになれる人が増えて欲しいなってことで、他の大学にも国にもGSSが広がって欲しいと思います。

りんご:専攻分野としてあるっていうのは結構大事な部分だと思っていて。フェミニズムとかフェミニストって思想家って思われがちだけど、あれはちゃんとした研究者で。ちゃんと独立した学問を研究した研究者だしセオリーがあるし。そういう意味で、ジェンダーはちゃんとした学問なんだよって広めて欲しい。

おこめ:それと、ジェンダーを義務教育の段階から教えてほしい! もちろんジェンダーは専門的な学問ではあるけど、社会学とか政治学の基礎を公民とか政治経済とかの授業で勉強するように、ジェンダーの基礎も学校で教えてほしいですね(笑)。

じょん:やっぱり自分のいるところを客観的に分析できるのも強いなと思う。自分のポジションとか自分を構成するアイデンティティとかを客観的に見られるところですね。他者と自分の中で、ここは同じだとかここは違うとかを学問の権威でもって表現することのできるところとか。それは他人を思うことにも繋がってくる。そこが意義だと思います。

ーーICUの他のジェンダー系団体にはないユニークな点は?

りんご:やはり少数精鋭で活動しているところですね。もちろん人数が多いことによるメリットはありますが、やっぱり徒党を組むと難しい部分があるので。なるべく同じ思いを共有していて信頼のある少ない人数で、みんなのやりたいことを汲み取って、楽しくやろうと言うのが私たちのポリシーなので。そこは決定的に違うところですね。毎年たくさん募集して、新しいメンバーを募るとかも予定していないので。

おこめ:あとは当事者性とかかな。今はシス女性を自認している人がほとんどだけど、性的マイノリティの私とかも含めて、そういうマイノリティ性を、もちろん友達だからだけど、お互いに尊重しあっている雰囲気がある。マイノリティのためにこういう活動をしていきましょう! というよりは、できるだけ当事者の声を大事にするようにしています。

レモン:結果的に活動につながっても、アクティヴィズムが私たちの第一の目的ではなくて。啓発だけを目的としているわけじゃなくて、私たちも楽しく話せるし、その話を聞いてもらう。そこは他の団体との違いかな。

じょん:既存の団体でやっている活動は私たちがやる必要はなくて。そこらへんの棲み分けはある。

おこめ:そういう意味では連帯っていうか、他の団体とコラボとかしてみたいね。

ーーラジオやnote以外にやりたい活動はありますか?

りんご:メンバーの一人がずっと性教育に関わりたいと言っていて、私たちもすごく興味があるので、具体的なことは何も決まっていないけど、団体として地域の小学校なり中学校なりでなんらかの形で性教育に関われたらいいなと思っています。

おこめ:ICUのオールジェンダートイレで生理用品無料配布*8 の活動をしている団体があるので、サポートしたりお話したりしてみたいなと思っています。みんなアクティヴィズムのモチベーションは結構しっかりあるから、できそうだったらやっていきたいですね。

ーー最後に、読者の方へ向けて一言お願いします。

りんご:興味を持ってくれたら嬉しい。ジェンダー平等ってどういうこと? とか誰に得があるの? とか思っている人もいると思うけど、そういう人たちにこのラジオを聞いてもらって、こういう風にジェンダーのことを日常の会話として楽しくしゃべっているやつらがいるんだってことを知ってほしいです。ジェンダーは難しいものとか無関係なものではないんだってことを私たちの活動を通して知ってほしいです。

じょん:リスナーがほしいので……(笑)。興味を持ったら1回でもいいので聞いてみてください! あと最近はじょんの諸々が書いてあるnoteも開設しました。あとお便りもほしい!興味持ったらどんどん話しに来てくださいね。フェミニズムは怪物じゃないよ!

おこめ:私からは……BE QUEER! もちろんマジョリティの属性を持っていることが良いとか悪いとかではなく。今はヘテロノーマティヴィティ*9 な世界だし、異性愛者中心の社会だし。その中で聞いてくれているあなたがもしマイノリティ性を持っているのであれば、それはめちゃくちゃ祝福されるべきだし、世の中に必要なので……BE QUEER! これからも一緒に頑張って行こうねって伝えたいです!

レモン:ジェンダーって、結構難しいものとか無関係なものって思いがちだけど、知ることとか知ることを通して見える多様性とかもすごく面白い。少しでも興味があったら、日常会話をするような感じで自分の中に取り入れていってほしいと思うし、その中で私たちと話をしたいってなったら、その人と対話をしていきたいなって思っています。ー

ーー本日はありがとうございました! 【Oliva】


*7MCC:Media, Communication and Culture(メディア・コミュニケーション・文化)。ICUのメジャーの一つ。

*8生理用品無料配布:2022年12月12日〜2023年2月5日の期間にかけて、キャンパス内の複数のトイレで生理用品が試験的に無料で配布された。関連記事▶︎http://weeklygiants.co/?p=10803(2023年1月21日Web掲載)

*9ヘテロノーマティヴィティ(Heteronormativity):異性愛規範。


配信情報

毎週金曜日深夜24:00、ポッドキャストにて公開。SpotifyApple PodcastsAmazon MusicYouTube で聴取可能。YouTubeでは配信の切り抜きショート動画を公開中。noteも開始。

お便りはこちらから▶︎https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSep8lVMCmm8Fu1hs3ivrD8jrMDjMGjjLRwFLux3gyz5nkEqgg/viewform

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