告知 ヤングケアラーをテーマにしたイベント「つながりば in O’s cafe 」が開催されます

ヤングケアラーをテーマにしたイベントがICUで開催されます!

 ヤングケアラーという言葉を聞いたことはありますか。こども家庭庁の定義では、「ヤングケアラー」とは本来大人が担うと想定されている家事や家族の介護などを行うこどもや若者を指します。なおここでの家族は、高齢であったり、障がいをもっていたり、また家族が幼く子育てに相当するケアが必要であったりと、様々なケースが含まれます。「ケア」は、決して身体的な世話だけではなく、精神的なケア、家事、家計を支えることも意味し、そのありかたは多様です。ケアに伴う身体的・精神的な負担の大きさは、人によってはかなりのものとなり、学業や人間関係にも影響をきたしてしまうこともあります。

▲(こども家庭庁のHPより)

  ヤングケアラーは身近な存在であり、青森県の調査では、小中高大の学生のうち4.8%がヤングケアラーにあたるとの調査結果が出ています。また同調査ではヤングケアラーのうち約8割に相談経験がないことも明らかになりました。現状を打ち明け、対話できる場が重要であることはいうまでもないでしょう。

 そして、ICUには「つながりば」という、ヤングケアラーに関して当事者や興味を持つ方がゆるく話あえる場があります。その「つながりば」が企画する特別イベントが、4月17日(水)にオスマー図書館の O’s cafe で開かれます。

「つながりば in O’s cafe」のお二方へインタビュー

 今回、Weekly GIANTS Co. はこのイベントを主催される江田早苗先生(ICUの客員准教授)と氏原拳汰さん(ICUご出身で現在はヤングケアラ―支援の活動に携わる大学院生)のお二方にインタビューを行いました。

——氏原さんの自己紹介と、ヤングケアラーを考えるようになったきっかけもお願いします。

氏原さん)

 僕自身もICUの卒業生で、去年の3月に大学を卒業しました(ID23)。元うぃじゃん(Weekly GIANTS Co.)社員で、編集長もやっていました。現在は筑波大学の大学院で臨床心理学を勉強しながら、ヤングケアラ―支援を行う複数の団体で活動を行っています。

 僕はICU在学時、レビー小体型認知症の祖父の介護を行っていました。祖父の認知症の症状がはじまって、生活がおぼつかなくなりはじめたのが1年生の冬ごろでした。そこから祖父を家に一人にしておくことが段々と難しくなっていきました。当時両親が共働きの中、僕は実家に住んでいたため、祖父の病状が芳しくないときはその見守りのために授業を時々遅刻、欠席することがありました。2年生になると、祖父の体調が悪化すると同時に、コロナ禍で大学もオンライン授業となりました。そのため、家にいる時間が長くなったこともあって、祖父の身体介助や排泄、通院、服薬、食事から精神的なケアもするようになっていきました。そんな日常の中で、うぃじゃんの活動は、当時の自分にとって貴重な心の支えだったことを覚えています笑。一度うぃじゃんでも、自分の介護体験についての記事を書き、それをWebサイトに掲載しました。すると掲載から1年ほど経った3年生の冬頃、NHKのスタッフの方がたまたまその記事を読んでくださり、そのご縁から番組の取材に協力させて頂きました。そのやり取りの中で、ヤングケアラ―という言葉を知り、自分が若者ケアラーであることに気づきました。そこからケアを担う子どもや若者に対する支援の活動に興味を持ち、また自分の経験からケアラーへの心理的なサポートの不十分さに気づいたこともあって、心理学を志しました。そこからICUでは心理学を専攻し、現在は大学院で臨床心理を勉強しています。

▲氏原さん (一社)ヤングケアラー協会・(一社)ケアラーワークスにて活動している

——「つながりば」を立ち上げた経緯や、「つながりば」の活動について江田先生が考えていることを教えてください。

江田先生)

 教授会の皆さんも私も、ケアを担うICUの学生に対してなにか支援ができないかと考えました。しかし、ICUのカウンセリングセンターや学修支援センターも、ヤングケアラーに絞った支援を行っているわけではなく、大学としてなにかヤングケアラー向けに支援を行うことは難しいということでした。そこで、抱えている悩みを打ち明けられる場所をつくることができればと個人的に考えるようになりました。カウンセリングセンターや当時学生部長であった加藤恵津子先生と相談し、ジェンダー・セクシュアリティについてゆるく話あえる「ふわカフェ」(CGS ジェンダー研究センターが開催)から着想を得まして、ヤングケアラーについて語り合える場所をつくることにしました。しかし、その名前は「かたりば」ではなく、みんながケアのことをゆるく話し合えるようにという想いを込めて、「つながりば」になりました。

 一言でヤングケアラーといっても、状況は人によって異なり、ケアの種類や程度にも多くのグラデーションがあります。したがって、いろんな方がいらっしゃるので、それぞれの悩みの内容や話したい事柄も様々です。こうしたイベントを開いていく中で、ケアを担うICU生の皆さんが学業などとケアを両立するために、とても努力をされていることが分かりました。普段話すことが難しいケアの話だからこそ、「安心」して自由に話して、自分のありのままの想いをさらけ出せるような場所が大事だと感じますし、「つながりば」もそういう場所であれたらと思っています。ケアラーの皆さんは日々、大変な努力をしていらっしゃいますが、そのような中でも活き活きと学生生活を送っている学生さんもいて、彼らの姿は輝いていると感じています。決して、ケアを担う学生の皆さんは、自分の存在をかわいそうだと思われたいわけではないし、自分のやっていることを一方的に褒められたいというわけでもないと思います。

 こうしたイベントを通じて、ヤングケアラ―という存在について知っていただくことで、ケアを担う学生の皆さんに対して敬意と想いを向けられる、ICUがそういうキャンパスになったらいいなと考えています。

▲江田先生

—最後に、読者の皆さんへメッセージをお願いします。

氏原さん)

ヤングケアラーと言っても、子育てや直接的な介助が必要なケースから、直接的な介護は行わないものの、常に家族の見守りが必要となり自分の生活に間接的に影響が生じるケースまで、ケアには様々なグラデーションがあります。家族のことで、自分の生活の中で何かしらの制限や、影響を受ける方は、ICU生のなかにも少なくないと感じています。少しでもモヤモヤしている方や、自分のやっていることが「ケア」とまで言えるかどうか分からない……という方も、「つながりば」は大歓迎です。また当事者ではなくとも、少しでもそのトピックについて考えたことがあったり、関心を持っていたりする方もぜひお越しいただければと思います。

インタビューを快諾してくださいました江田先生、氏原さん、ありがとうございました。

おわりに ~「つながりば in O’s cafe」イベント情報

 最後に、「つながりば in O’s cafe」についての説明です。

日時:4月17日(水)12:45~13:45

場所:国際基督教大学 オスマー図書館内 O’s Cafe

*Cafe の一部を借りて行います。当日の途中参加・途中退場もオッケーです

*イベントに参加しないcafe利用者の方もカフェ内にいらっしゃいます。

内容:ICU卒業生(氏原)のケア体験談の共有やおしゃべり会を予定しています。

対象: この会には、どんな方でも参加できます。例えば…

・自分はヤングケアラー(若者ケアラー)かもしれない

・これまでに、家族へのなんらかのケアの経験がある

・自分自身はケアしていたと思わないが、これまでに家族の中でケアの必要な人がいたことがある

・ケアに関する自分の経験を話したり、人の話を聞いてみたい

・このトピックについてもっと知りたい

など、どのようなきっかけの方も歓迎します。

その他:

・予約不要、途中入室退室自由。

・食べながら・飲みながらの参加で結構ですので、どうぞ気軽にご参加ください。

・詳しい情報は以下のQRコードから

 この記事を通して、「ケア」が身近なトピックであり、誰もが経験する可能性があることを伝えられたらと思います。少しでもヤングケアラーについて知っていただき、「つながりば」に興味を持っていただけたなら幸いです。またWeekly GIANTS Co. では、このイベントの取材記事も予定していますのでご期待ください。この記事を執筆するにあたり、インタビューにご協力いただき、またヤングケアラーについてご教示して頂いた氏原さん、そして江田先生に深く感謝します。

【TKD】

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