香港に出会う
|一人旅とは、まさに偶然の出会いの連続である。そして同時に、偶然を自ら掴みに行くことも旅を充実させるコツである。
2023年の11月末。秋学期終わりの休暇に私は初めて香港へ1人で飛び立った。旅のきっかけはたまたま当たった香港政府主催の観光キャンペーン。ネットで見かけて何となく応募していたのが、忘れた頃に当選メールが届いた。私は日本と香港の往復チケット1枚をひょんなことから手にしてしまったのだ。チケットが手元にあるのなら行く他ないだろう。何から始めれば良いのかわからないが、とにかく私は日本の外に初めて1人で行くことになった。
さて、香港に行って何をしようか。ディズニーくらいしか思いつかない。唯一わかることは、現地での宿泊先確保が必要であること。初めての海外一人旅におっかなびっくりしながら、Airbnbで”Female Only”のマンションの一室を予約した。
寝るところは確保した。ひとまずこれで野宿は避けられる。しかし、向こうに行って具体的に何をしよう。ネットで香港について調べてみる。楽しそうだけど、土地勘が全くないので、自身の旅のプランとしてはあまりピンとこない。プランを立てずに行くのも一興だろうが、この貴重な機会を無駄にはしたくない。
香港でやりたいことについて、一つだけ心当たりがあった。交換留学先の視察である。ICUの入学当初から交換留学だけは行くつもりだった。あれこれ尤もらしい動機を並べることもできるが、ぶっちゃけ本心は「ここじゃないどこかで何かを学びたい」に尽きる。海外の大学であれば、香港に限らずどこでも興味はあったが、せっかくの機会なので香港の提携大学もぜひ見ておきたい。手始めに、香港にある提携大学のうち3つの留学生窓口に問い合わせのメールを送った。すぐに返信のあった2校からは、構内はオープンなので自由に見ていってください、とのこと。何か大学案内のような特別な対応をしてくれる可能性に少し期待をしていたものの、私が思うに、これが一般的な対応である。とはいえ、知らない大学に行ったところで何をすればいいんだろう。誰かに案内してほしいと願うのは人任せすぎるか。残りの1校からは少し遅れて返信があり、大学ツアーをしてもらえることになった。実際、現地では懇切丁寧な大学及び留学プランの説明をしてもらい、現地学生とICUの交換留学生に構内を案内してもらった。
同時に、先に返信のあった2校のうち1校に関しても、国際交流室に問い合わせ、現在香港に留学中のICU生に繋げてもらえることになった。こちらは結局香港の大学を介さずに、現地のICU生の案内で大学見学をすることができた。しかも、現地のICU生の紹介で、留学中の日本人他大生とも繋げていただいた。入学して初めて、ICUのコミュニティを有効活用できている実感を得た。旅の最終日に先輩方と朝飲茶を楽しんだのは非常に良い思い出である。
以上2校の大学を実際に見学したことで、自身の留学計画に具体性を持つことができた。安直ではあるものの、現段階における留学先の第一志望は勿論香港である。
大学見学の他にも、旅の処処において多くの人にお世話になった。5日間の滞在で得た個人的な印象ではあるが、香港の人々は異国の若い旅人にも非常に親切かつスマートな対応をしてくれたように思う。一人旅ゆえに道に迷うことや、言葉が通じなくて困ることも多いが、そんな時でも安心だった。香港では英語が公用語という事になっているが、年配の方は広東語しか喋れないこともあるのだ。そんな時には、通りすがりの香港人のお兄さんに通訳をしてもらったり、ついでに美味しいお店を教えてもらったりしていた。ちなみに、香港の食べ物は値段に依らず、どれも美味い。帰国後も現地の味が恋しくなって何度か飲茶をしたが、やはり現地の味には勝らない。
最終的に、香港では多くの人々との出会いに恵まれ、目的地の第一候補であったディズニーに行く時間は無くなってしまった。しかし、偶然の出会いによって得た価値は何よりも大きい。
一度掴んだ偶然はしっかりと掴んで自らの手で有益な機会にすること。そうすることで、その機会がまた新たな偶然を産む。今回の一人旅で得た所感である。さて、次はどこへ行こうか。
【髙瀬】