性別不問のフロアを設置 ICUの新しい寮の形とは

▲建設予定地には重機が入り、作業が進められている

2015年12月15日、毎日新聞がICUに関するあるニュースを報じた。「性別問わない学生寮建設  性同一性障害対応進むICU」という記事だ。

その報道によると、ICUがこれから新築する2寮には入寮者の性別を問わないフロアが設置されるとのことだった。このフロアは実際にはどのようなコンセプトで設置され、どのような設備を備えたものになるのだろうか。学生サービス部の岸本誠部長にお話を伺った。(※インタビューは再構成済み)

 

――まず、このフロアが設置されることになった経緯について、教えてください。

ICUにはいろいろなバックグラウンドを持った学生、教職員がいます。海外で教育を受けた人もいれば、国籍もいろいろで、育ってきた背景も違えば、ものの考え方も違います。ICU自体がそういう多様性の上に成り立っています。その中で様々な価値観に触れつつ過ごすことで、学生がグローバルな感覚を身につけることが可能になるのだと思います。

ICUで一番古い寮は、献学から2年後の1955年竣工の第一男子寮と第一女子寮でした。第二男子寮は2015年の6月に閉寮し、現存する最も古い寮は第二女子寮です。その当時の寮は男子と女子がまったく違う建物に分かれて居住するというものでした。

その一方、2001年に開寮したグローバルハウス、2010年にできた欅寮、2011年の銀杏寮、樫寮などの新寮では、男女で同じ建物の違うフロアに分かれて居住しています。

2017年4月に開寮する新しい2棟の寮は、5階建てと7階建てからなります。10の居住フロアがあり、男子のみのフロア、女子のみのフロア、そして大学院生を含め性別を問わないフロアを設ける予定です。

一部の報道では、LGBTの方への対応ということだけが取り上げられていますが、我々としてはあくまで宗教や文化的背景も含めて、多様なニーズに対応することを目的としています。

 

――具体的にはどのような設備を備えた寮になるのですか?

全体では320人が収容でき、5階建てと7階建ての2つの棟で構成されます。 2つの棟がつながっている1階部分はセミナールームや共用ダイニング、そして大浴場が入っており、セミナールームについては寮に入っていない学生も使うことができます。

2階以上が居住フロアになっていて、1フロアあたり32人の学生が住めるようになっています。2人部屋と1人部屋が混在し、上級生が1人部屋、下級生が2人部屋を基本に、部屋の割当はそのフロアの学生たちで話し合って決めてもらう予定です。このような2人部屋と1人部屋が混在するフロアが全体10フロアのうち8フロアで、残りの2つのフロアはほとんどの部屋を1人部屋にして、性別でフロアを分けることをせずに、大学院生や多様なニーズを持った人に提供します。

一昨年から、学生十数名をメンバーとする新々二寮建設支援委員会を立ち上げて、公聴会などを開催してきました。2015年度からはその委員会を引き継ぐ形で、建設準備委員会を設け、学生委員を入れて話し合いを行っています。建設については大学が責任を持って、最終的な決定を下しますが、そこになるべく学生の意見を取り入れていこうとしています。たとえば、これまでは施設や設備などについて意見を聴いてきましたが、これからは実際にどのような運用規則や組織で寮を運営するのかなど、学生委員と話し合いをしていきます。

 

――性別を分けないフロアを設置する場合、お風呂はどうなりますか?

各フロアには個室のシャワーブースが8つ設置されます。湯船がついた浴室は1階にあります。トイレもすべて個室式です。

 

――入寮希望者の審査の規準は、性別を問わないフロアとほかのフロアとで違いなどはありますか?

それについては未定です。

 

――性別でフロアを分けないとなると、今までの寮で培われてきたノウハウがそのまま応用できない場合もあると思うのですが、それについて何か具体的な対策などをする予定はありますか?

海外などでは、性別で分けない学生寮も多くあるようですし、そういう事例も参考になると思います。また、開寮した最初の年から寮生活の経験がある人に上級生としてその寮に入ってもらって、そのような人たちを中心に、どのような問題があるか、どうしたら解決できるか検討していく予定です。

 

――ICUの寮は2人部屋やコミュニティーを重視した「教育寮」というコンセプトを強く打ち出していますが、この寮では1人部屋など、今までの寮とは違う点があります。そういった違いがあっても「教育寮」というコンセプトは維持できるのでしょうか。

1人部屋が多いフロアであっても、基本的な考え方は同じで、ICUの寮は教育の一環であるという点は変わりません。自室の中で生活が完結できるようにはせず、今度の寮も共有スペースを広く取っていて、ダイニングやソーシャルルーム、スタディールームなど、他の学生と交流する仕掛けは多く用意します。ほかにも、みんなで分担して掃除などをおこなう「デューティー」はどのフロアでも同じように行っていく予定です。

 

――ありがとうございました。

 

今回の新々二寮のコンセプトについて、ICU生からは賛否両方の意見が聞かれた。「『多様なニーズ』が何を想定してるのか曖昧。実際にどんな具体的ニーズを想定してこういう設計になったのか不透明だと思った。『どういう経緯で一人部屋や性別不問フロアを作ることになったの?』というのが素朴な疑問」(ID19 女性)、「トイレやお風呂などの掃除当番の決め方が少し大変そう」(ID19)というコメントもあった一方、「多様なニーズに対応する場所を作るということは前進だと思う。完璧な対応は無理だから。方向性としてはいい方向に向かっていると思う」(ID19 女性 バイセクシュアル)や「新寮は個室のシャワーブースしかなかったが、新々寮では浴槽もあるそうなので、両方のニーズに答えられていいと思う。寮生だけではなく、通学生や教員も含めた交流の場になってほしい」(ID19 男性 ゲイ)という意見も聞かれた。

今までとは違った形の寮となる新々二寮。学生の反応にも見られたように、課題は多くあるかもしれないが、それを乗り越え、ICUの寮の新しい形を作っていくことを期待したい。