【連載】新任さんいらっしゃい 心理学・直井望先生

Ms. Naoi
新しく赴任された先生を対象に行うインタビュー企画「新任さんいらっしゃい」。今回は、今年度からICUに赴任された直井望先生にお話をうかがった。

(※インタビューは再構成済み)

――まず始めに、ICUについてどう感じたか教えてください。

ICUに赴任して1ヶ月ほどですが、自然が豊かで良い環境だなと感じています。また、学生さんの勉強への意欲が高いので楽しく授業をやっています。
――ICUに赴任されるまでの経緯を教えてください。

慶應義塾大学で心理学の博士号をとった後は、JST(科学技術振興機構)という領域融合のプロジェクトが多くある機関で研究員をしていました。
――ICUを選ばれた理由を教えてください。

物心ついた頃から、父方の祖父が「ICUはリベラルアーツとキリスト教の精神に基づいた良い大学だから、ICUに行きなさい。キリスト教の精神に基づいてこそ、教育の民主化ができる」ということをずっと言っていたので、どういった大学なのか詳しくは知らなかったものの、とても身近に感じていました。最終的に、応募を決める時は祖父のその言葉にすごく影響を受けました。
――心理学を志したきっかけを教えてください。

高校生のときに、色々調べていくうちに心理学がおもしろそうだなと思い、心理学を志しました。そして、大学に入って色々な授業を受けたり、心理学の専門的な本を読んだりして、興味を深めていきました。また、サークル活動で児童養護施設の子に学習ボランティアをしていくうちに、自分が授業で教わったように教えても上手くいかないことが多々あるということを実感して、児童の発達や発達障害などに興味を抱いたことが現在の研究につながっています。
――先生の研究分野について教えてください。

発達心理学と神経科学の融合領域に関する研究です。簡単に言うと、赤ちゃんの言葉やコミュニケーションに関する能力が発達していくなかで、その発達に脳の発達がどのように関わってくるか、脳機能の働きがどのように変わってくるか、ということを研究してきました。
――先生の修士論文が自閉症についてのものだとお聞きしたのですが、簡単に内容をお聞かせいただけますか。

卒論に取りかかるまでは生物心理学で鳥類の研究をしており、修士課程以降に発達障害の研究を始めました。一般的に障害は固定的なものだと思われがちですが、実は発達支援で障害が軽減されたり、生活しやすくなったりすることがあります。低年齢の自閉症の児童にいろんな発達支援をすることで、自閉症の児童に見られる特徴的な行動がどのように変化するかといったことや、その変化に伴って脳の活動や視線反応がどのように変わるのかといったことを研究してきました。
――ICUでは生物心理学に関する授業も担当されるのですか。

はい。「心と行動の生物学的基礎」という授業があります。そこで生物心理学の内容にも触れます。
――最後に心理学メジャーを考えている学生にアドバイスをいただけますか。

心理学は科学的手法をとるので、心理学メジャーは大変なメジャーだと思われがちなようです。しかし、科学的手法は心理学を研究するときだけでなく、人生の様々な場面で役立つので、ぜひ挑戦してもらいたいと思っています。特に心理学で用いる科学的手法は問題解決能力を身につけるうえでも役立ちます。例えば、実験では変数を操作して、それがどのように行動に影響するかを調べるという手法をとります。その変数操作は、人生のいろいろな問題を解決していくうえで大変有効です。日常生活と学問的な実験や研究を切り離さずに、生きていくうえでも役に立つものだと捉えて勉強していくと面白いのではないでしょうか。
――ありがとうございました。