イベントバー境界線 開業者に徹底インタビュー

 先日、ICU生がキャンパスに程近い場所でイベントバーを開業するという噂を耳にした。詳細を調べてみるとびっくり、数人の知り合いをはじめ教職員までがバーテンダー・ゲストとして立ち、少人数でゆっくりお話しできるというではないか。これは画期的な事業だと直感した筆者は、イベントバー境界線(以下、境界線)の開業者兼代表者である高橋秀幸さんにインタビューを行った。

▲イベントバー境界線を経営する高橋秀幸さん(ID19

――はじめに、境界線を開店するまでの経緯をお聞かせください。

 Cafe Utopia*¹(以下、Utopia)の閉店がきっかけでした。Utopiaの経営に直接関わっていたわけではありませんが、10月末に閉店予定だということを知りました。そのことを聞いた当日にはUtopiaの店長には連絡を取り、後継の可能性も含めてお話させていただきました。最終的には、家賃等の条件からUtopiaの後継として開店することは断念し、以前からご飯をいただいていた、たんとさんやBimboさん*²に助言をいただくことになりました。そこで、Bimboのオーナーの方に場所を貸すからやってみる? と提案していただき、この場所で開店する運びになりました。Utopiaの閉店を知ってから、丁度一か月後に営業を開始することができました。


――僅か一か月で開業とは、驚きました。では、境界線はどのようなアイデアをもとに始められたのでしょうか。

 境界線には三つの基本的なコンセプトがあります。知的な好奇心を刺激すること、学内の境界線を越えること、そしてICUと学外の境界線を越えることです。

つまらない状況、同期の鬱、「ICU生は世間知らず」……

 はじめに、ICU生が学生同士で中に固まっていっている印象が自分の中にあり、学内外の人々と交流する機会が極端に少ないことに危機感を覚えていました。教職員の方とも、異なるコミュニティの方とも、もっと関われば良いと思ったのです。そんな「つまらない」状況を捉えた問題意識と、経営を経験してみたいという自身の興味とが合わさって思いついたのが、イベントバーでした。考えてみると、自分の考える境界線は、学内では学生同士や、学生と教職員の間、学外ではICUに在籍する者と他大学に在籍する者の間など、いたるところに存在しました。

 しかし、それだけでなく、自分は特にICU生と社会(人)との間の境界線に関心がありました。ID19の私ですが、社会人として働き始めた同期が心を病むのを多く目にしました。自身よりも能力があり、精神的にも強いと思っていた友人が、社会に出た途端に何故か鬱状態になってしまうのです。このギャップに違和感を覚えたことに加え、学外の人々と話した際に「ICU生は世間知らずだ」という発言を聞くこともありました。社会に出たICU生は、環境に馴染めないことをひたすらに愚痴っているだけだとも何人かから言われました。私はこれでは誰の幸福にも繋がらないと感じ、ICU生と社会人との間など、様々な所に見られる境界線を越える場をつくらなければと考えました。

対話を大切にしたい

 知的な好奇心を刺激することをコンセプトに挙げているのには、自分の信条的な理由と経営的な理由があります。まず、自分の信条的な理由としては「一般的な大学生」から連想されるかもしれない、バカ騒ぎをして楽しむこととは異なったことをする場にしたいという一種の反抗心がありました。そして、経営面の話をすれば、当店で300円のお酒を出すと大手チェーン店に勝てないということは明らかです。席数は12席と少なく、話をするために回転も悪い、そして主に学生が相手のために客単価が安い点も挙げられます。普通のメニューを提供しているだけでは経営が成り立たないのです。そこで、場としての価値を高めていくことが必要となります。


――成る程。「境界線」という名前はICUに存在する、あらゆる境界を越えるためのバーということに由来しているのでしょうか。

境界線に位置する、ハブとしての機能

 はい。もう少し詳しく言うと、以下のような説明もできます。ICUには、学生の構成するサークルや部活、大学側の学生サービス部や総務部など、あらゆる団体があります。その中には、例えばWeekly GIANTS Co.もそうですが政治色の強い団体も存在するでしょう。私は「境界線」を特定の立場に固定された場にしようとは考えていません。過去のICUにおける学生運動がそうだったように、学生側のみに立つのではなく、むしろその頃と同じ轍を踏まないようにしたいのです。私がしたいのは、あくまでも中立の場、行政、教職員、学生、そして学外の人々が集まって話ができる場を提供することです。そういった意味で、境界線に留まって機能することを目的としています。

あと、実は武蔵境の「境」もかけていたりしますね。


――イベントバー境界線のシステムに関してお聞かせください。

 1日バーテンダー募集要項を確認していただけると、大体のことが書いてあります。バーテンダーの方には飲食物を用意してもらい、報酬は売り上げから一万円を引き、残りを折半させて頂いています。興味のある方は、募集要項をご覧ください。

他大学の方々、地域の方々、少しずつですがいらしています!

 境界線の営業も私が担当しています。これまでゲストとしてお呼びした教職員の方々には、オフィスアワーを利用したり、ガッキでお食事をされている際にお声がけさせて頂いたりしました。1日バーテンダーの方々には相手方から連絡をいただいたり、誘ってみたりと様々です。参加者としてですが、これまで、東京大学、早稲田大学、上智大学の学生の方々、そして本屋を経営する地域の方など、様々な人がいらしてくださいました。SNSで境界線の存在を知って来てくださる方も多いかもしれません。


――境界線のこれからのヴィジョンについてお聞かせください。

 一番大切にしているのが、持続可能性です。(前述の)三つのコンセプトも、この第一優先項の後にくるものですね。Utopiaの閉店を目の当たりにしたこともあり、続けることに意味があると感じています。経済面も含め、経営者のモチベーションが保たれる状況を維持していかないと、事業は長続きしません。赤字は誰の幸福にも繋がりませんし、適当な仕事はしたくありません。やりたいことは沢山ありますが、それも何かの見返りがあってこそ、目一杯挑戦できることだと思います。


――最優先は持続可能性ということでしたが、そのための具体的なアイディアなどはありますか。

1日バーテンダーを欲しています

 はい。持続可能な運営を進めるためには、私側の都合のみならず、参加者に満足していただくことも必要です。先日、Twitterでも今後の方針に関してアンケートをとりました。より頻繁に開催することを求める声が一番多かったわけですが、そのためには多くの参加者がバーテンダーとして来店することも必要となってきます。教職員の方を呼ぶ際には私がキッチンに立ちますが、それを週何回もやるということは中々負担できないからです。バランスを考えても、1日バーテンダーには是非応募して頂きたいところです。気軽に声をかけてほしいですね。


*¹Cafe Utopia:ICU生有志が経営していたカフェ・バー。「ICU生はもちろん、近隣のみなさまにとって理想の空間になること」(Cafe Utopia公式ホームページから引用)を目標とし、2017年11月から今年10月まで営業していた。

*²たんと、Bimbo(旧HAPPY ばーぐ DAY!):高橋さんも通う飲食店。三鷹深大寺郵便局のとなり、ICU正門から徒歩約2分。イベントバー境界線はBimbo(旧HAPPY ばーぐ DAY!)を間借りして営業している。


高橋秀幸さん

ID19。哲学・宗教学メジャー。

イベントバー境界線の立ち上げから営業、運営まで全てを担う。ICUボルダリング部設立者でもある。

名古屋市出身。小学5年次に『ガリア戦記』を読んで感銘を受け、ローマ考古学に関心を持つ。その後学者を志してICUに入学し、1年次秋には自身が言う「素質がないこと」を自覚し、大学でやることを思索し始める。趣味は山登り。実家が漁師ということもあり、好きな食べ物は魚、特にブリ。境界線でも豊洲市場で仕入れた魚をさばき、調理する。ただし、生ガキは苦手。

就活や当イベントバーの体制を整えることも考慮し、卒業を伸ばすことも検討中。


イベントバー境界線

2019年11月14日開業。1日バーテンダーやゲストを迎え、毎度ICU学内外のから参加者で賑わっている。好奇心をそそるテーマや、代表者である高橋さんの魚料理にも定評がある。現在は約週2回のペースで営業。1日バーテンダーの応募・相談は各種SNSまで。

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