オンラインELAの悲喜こもごも

 

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ケース1: ゑゐの場合

 こんにちは。ID24のゑゐです。

 入社して初の単独記事ということで少々緊張していますが、どうぞお付き合いください。

 今回の内容は「オンラインELAを受けてみて」というものですが、まず用語や背景の解説をしましょう。

 

・ELA English for Liberal Artsの略。要するに英語を死ぬほどやります。

・Zoom授業 ヘンテコウイルスCovid-19の感染拡大を受け、従来の対面授業が行えなくなった結果、導入された授業スタイル。全員が参加するメインセッションと少人数にグループ分けをするブレイクアウトルームの二つがあり、メインセッションで教授による授業、ブレイクアウトルームで学生同士のディスカッションをします。

・ストリーム、セクション ELAを受講する全ての学生はテストを受け、レベル別に最も英語ができるストリーム1からそうではないストリーム4に分けられます(ちなみに筆者はストリーム4です)。そして、そのストリームの中でもまたランダムに20人くらいのクラスに分けられ、アルファベットを振られます(例えば、僕が属しているのは「セクション4F」です)。このクラスメイトのことをセクションメイト、略してセクメと呼びます。

 

 2020年はウイルスの流行もあり、4〜月の春学期は完全オンラインで登校禁止、9〜11月の秋学期、12〜3月の冬学期は寮に入ることも許可され、オンラインとキャンパス両方で授業が受けられるハイブリッド授業が行われました。

 さて前置きが長くなりましたが、皆さんは「ICUでの英語の授業」と聞いて何を思い浮かべますか?単語の暗記?文法の習得?

 いやいや、そんな甘いものではありません。ICUでの英語の授業では「英語を使って」学術論文を読み、内容をディスカッションしてエッセイにまとめるということをします。なので、英語の授業というより、英語を使って文章を読み、最終的に自分の意見を英語の文章で主張する、という一連の流れを勉強します。「難しそう」ですって? 心配ご無用。難しいのは確かですが、自分のレベルにあったクラス分けと頼りにできるセクメたち、そしてとことん教えてくれる教師の下、やる気さえ持ち合わせていればあなたの英語力は飛躍的に上がるでしょう!

 ……とまあ、例年はこうだったようです。しかし、皆さんご存知のヘンテコリンなウイルスが流行り、ICUも少人数で密度の高い授業から一気にオンライン授業へと舵を切りました。確かにやる事は変わっていないのですが、完全にオンラインの授業というのは誰にとっても全く新しい授業スタイルで、賛否両論あるようです。それでは、以下にオンラインELAについて見聞きしたり感じたりしたことを書いていきます。

 

・オンラインで授業、実際どう?

 個人的にはオンラインでは授業に集中しにくく、勉強があまり捗らないと感じました。それは個人の問題だろ、と思う方もいらっしゃるでしょうし、実際それは正しいと思います。しかし、僕にとって自室から受けるオンライン授業は「さあ授業だ」という気持ちの切り替えがしにくく、画面には顔しか写らないため手元で別のことをしてまうことが多々ありました。あるセクメは「自室は勉強をするところではなかったのに、そこで授業を受けなければいけないことは気持ちの切り替えができずとても苦痛だ」とも言っていました。

 しかし逆に言えば、長い時間をかけて登校する必要がなくなり、時間を効果的に使えるようになったというのも事実です。また、朝に弱い人にとっては授業5分前に起きても間に合うオンライン授業は素晴らしいスタイルのようです。

 

・友達を作るのが大変?

 僕にとって、オンライン授業の中で友人を作るのは非常に難しかったです。授業が完全にオンラインだった春学期には、このセクメ以外の友人は一人もできませんでした。そのセクメも、本来であれば食堂などに集まって課題を協力して解決したりするため、卒業してからも集まることがあるというほど仲間意識が強いものだと聞きます。しかし、今年に関しては秋、冬学期もキャンパスに来れない人もおり、このままだと全員が集合することがないままELAの授業が終わるということもあり得そうです(ストリーム3の場合、セクションでの授業は単位を落としさえしなければ(ここ重要)遅くとも2年生の春学期に終わります)。これに関しては、オンラインでは代わりになる方法を提供できないと感じました。

 しかし安心して欲しいのですが、ICUは他大に比べて学生数がとても少なく「友達の知り合いが自分の友達」などということが頻繁にあり、ウイルスの流行が収束してキャンパスに来れさえすればいくらでも友達を作ることができます。無責任ですが、あとちょっとの辛抱だ!

 

・IT関連

   皆さんはコンピュータ関連をいじるのは得意ですか? 僕は高3までスマホを持たず、高校の情報の授業のたびにセーブデータが「なぜか」消えている人間だったので、オンライン化によりますます使う機会の増えたパソコンがとても苦手で、苦労しました。というか今もしています。

 まず、覚えておかなければならないのは「学生用メールアドレス」の存在です。春学期の初め、僕が知らぬうちにいろんな情報が回っていて、「これはおかしい」と思って大学に電話したところ「全ての学生には大学用の新しいメールアドレスが配られており、全ての情報共有はそこで行われている」という驚愕の事実を知らされました。今から考えれば「なんでそんなことに気付かなかったのか」という感じですが、右も左も分からない、ましてや受験以外でキャンパスに行ったこともない1年生には勝手が分からず、大変な苦労をしました。これは主題とは関係のないアドバイスですが、何か少しでも分からないことがあったらすぐに大学の事務室に電話をしましょう。懇切丁寧になんでも教えてくれます。僕は「ああ、また君か」と名前を覚えられるレベルで電話をしました。

 

・アドバイス

 さて、ここからは僕がやらかしたいくつかの失敗をお話しして、今年から新1年生になる君たちの門出のお手伝いをしたいと思います。

1.変にボケようとしない

 初めてのELAのクラスで、オンラインとはいえ新生活に舞い上がっていた僕は「自己紹介でボケる」という最悪の選択をしました。具体的に書くのは心の傷をえぐられるのでやめておきますが、普段通じているボケもオンラインだと伝わらないことがある、というのを覚えておいてください。僕の場合誰一人として笑う者はなく、本っ当に恥ずかしかったです。

2. 音楽を聞かない

 これは本当に気をつけましょう。サボり屋であった僕は、一応出席はするものの授業を聞いているような顔をしてイヤホンで音楽を聴いていました。全くひどい行いですね。しかし天罰は降りました。それも「音が漏れていた」とかではなく、「いつの間にか音楽にノッて体が揺れていた」のを見られていたのです。いやそんなん普通気づかないやん。結果、クラスに「あいつ授業中に音楽を聴いてたらしい」と噂が広まり、僕のセクメの中での立ち位置はさらに低いものとなったのでした。

3. 画面シェアに気を付ける

 Zoomで行うディスカッションで、我々学生はよく「画面シェア」ということをします。これをすると、自分がパソコンで見ている画面を相手に見せることができるので、自分の書いた文章を相手に見せたりするのに便利です。ただ、これにもよく気をつけなければなりません。というのも、授業に慣れててくると「画面をシェアしていることを忘れる」のです。その結果、全く関係ない画面を開いてどうでもいいことを検索しているのを友人に公開することになり、大変恥ずかしい目にあいます。僕の場合、Amazonを開いて本を調べようとした結果、少しの間「アマゾンの人」と呼ばれるという目に遭いました。もちろん賢明な諸君はそんなアホなことしないとは思いますが、意外と注意した方がいいのは「検索エンジンのタブ」です。前に調べたものを残しておくとそれが見えてしまったりするので、毎回消すなど方法を考えた方がいいかもしれません。

 

・終わりに

 いかがでしたか? ふざけたことも書きましたが、少しでも皆さんの助けになっていれば幸いです。

 オンラインELAについて様々書いてきましたが、結局一番大事なのは「やる気」です。いきなり始まったこの不自由な状況に不平の一つや二つ言いたくなりますが、いったん吐き出したら気持ちを切り替えて、できることを精一杯しましょう(自戒の念も込めて)。新しい年度がどうなるかは神のみぞ知るですが、一刻も早く感染が収束して活気あふれるキャンパスで学問ができるようになることを祈っております。

 かれこれ1年近く厳しい情勢が続いていますが、その中でも勉学を怠らず今日の受験に備えてきた皆さんの努力と忍耐が報われて、それぞれが望んだ大学に受かりますように! もしICUに通うことが決まって「そういえばふざけ散らかしたELAの記事を書いてる人がいたなぁ」と思い出すことがあったらぜひWeekly GIANTSに会いにきてください!その時は「初回の授業でやって大スベリした伝説のボケ」を教えてあげましょう! 【ゑゐ】

 

ケース2 : 折合極兼の場合 ―テクニカル・プロブレム―

 毎年末に清水寺が「今年の漢字」を発表するならば、突如ICU教会が「今年の英単語」を発表すると宣言したとしても何の不思議があるだろうか。今年ICUを賑わせた数多くの英単語のなかでも、”technical problem(以下、テクニカル・プロブレム)”に勝るものを見つけるのは容易ではない。

 テクニカル・プロブレムとは、オンライン授業を受けるうえで発生する「技術的問題(直訳)」のことである。具体的には、今年一躍有名になったビデオ通信アプリ・Zoomを利用する際に、相手側の声が聞こえなくなってしまった、突然接続が切れてしまった、パソコンのウェブ・カメラがまったく機能しない、などの有象無象の障害のことをいう。

[例文1] I’m afraid some technical problem’s making your voice choppy.

(すみません、パソコンに何かしらの技術的問題[ルビ:テクニカル・プロブレム]があるせいか、あなたの声がとぎれとぎれに聞こえてるんですよ。)

 しかし、そのようなパソコンの障害は、10年代のインターネットにどっぷり漬かってきた我々大学生にとって、簡単に解決できるものも多い。実際、私にもそういう経験がある。朝一番のELAの授業に臨もうとしていたところ、私のZoomが突如としてウェブ・カメラをデバイスとして認識できなくなった。本来私の顔が表示されるべき四角形の枠のなかには、「カメラをオンにする」ボタンをいくらクリックしても、灰色の画面が表示されるだけだった。しかし、「Zoom カメラ 認識されない」などという単語を検索エンジンにかけると、Zoomの公式ホームページや、同じ問題に遭遇した人びとが、どんな設定に問題があるのか、どんな解決法を試せばいいのかを懇切丁寧に教えてくれる。結局、パソコンのセキュリティに関する設定をすこし弄っただけで、ウェブ・カメラは再び私の顔を映してくれるようになった。

 一方で、ELAの先生方の目に映るZoomは、かなり複雑なアプリだったのかもしれない。、インターネットの様相はここ20年で劇的に変化した。ことにZoomのような新しいアプリへの対応力に関しては、人間とチンパンジーのごとき雲泥の差があろうものである。大学生がその埋めがたい溝を体感したいのならば、2000年代初頭の大学教授が更新していたホームページを訪れてみるといいだろう。その素朴なレイアウトと、今なお色褪せない内容の面白さとの鮮烈なコントラストによって、「兵どもが夢のあと」と口ずさみたくなるような浮世の儚さと学問の不変性が、見事に体現されている。

 

▲初めてのオンライン授業に臨むELA Teacher[側近に教えられてエンターキーを押す→拍手喝采のシーンだけ切り取りたい] 

 

 さて、ここからはあくまで推測でものを語ることになる。かたや「インターネットの障壁」を熟知している大学生と、かたや時代の流れに必死についていこうとするELAの先生がいる。その力関係は、あたかもベトコンとジャングルの奥地で戦うアメリカ軍のようなものだ。そして、学生のなかには、まことに遺憾なことながら、ELAの授業に楽しさを見いだせない者もいるだろう。テクニカル・プロブレムを装って、退屈な授業から「エスケープ」を試みた、あるいは、そういう可能性に思いを馳せたことのある学生が、果たして何割ほど存在するのか。その実数は定かではない。【折合極兼】

 

▲Technical problemによるエスケープの一例(” South Park: The Pandemic Special ”より)