ICUの普遍性を再定義する – Rethink ICU主催者インタビュー

 4月6日、キャンパスにて「Rethink ICU」が開催される。当イベントは学生と大学共同で、対面とZoomにて開かれる予定だ。次号紙版The Weekly GIANTSで「ICU 2022」と称して、「いまのICUらしさ」を探る特集を組んでいた偶然もあり、主催者に取材を行った。

今回インタビューした人

スティーブン(ID22)

経済学メジャー経営マイナー。人間に興味を持ち、資本主義をこよなく愛する、元カナダ生。愛読書はフロムの「The Art of Being」、「The Art of Loving」。

伊藤(ID23)

政治学メジャー文学マイナー。鹿児島出身の悩ましいクリスチャン。インカレでアイスホッケー。最近は美大院に行きたくなり血迷ってる。 大学最後の一年は勉強を頑張りたい。

S (ID 23)

ICUの好きなところは自然。気付いたら、ICUよりもインカレサークルに染まってしまいICUを再考したいと思うようになる。


ーーはじめに、三人はどうやって知り合ったんですか。

スティーブン:僕とSがセクメで。で、僕と伊藤は元ルーミー。Sと伊藤はGEILっていう政策立案をする団体で一緒で。

ーー企画の発端は何だったんでしょうか。

伊藤:ぶっちゃけると、たまたまだったんです。僕が学生サービス部長と仲が良くて理事長を紹介していただき、話すことになって、意気投合して。最近ICUはちょっとお堅いし、「Isolated Crazy Utopia」じゃないよね。ちょっとでっかい、楽しいイベントやろうよって。最初はホームパーティとか良いかもと話していたんです。ご飯奢ってくださいよとか言って。良いよ、理事長の好きなカツサンド200人分奢るよ、みたいな。そんな風に始まったんですよ。そうしたら議論を重ねていくなかで、問題意識とか、今のICUでやりたいことが大きくなっていって。色々な学生たちと話した結果、今回の企画になっていったという感じですね。

ーーそれで二人に声を掛けたわけですね。早速ですが、本企画で問われる「ICU文化」、「ICUの普遍性」というのは具体的にはどのようなものであると考えているのか、教えてください。

伊藤:三年生の終わり頃に、何でICUに来たんだろうというのを誰かと話していて、あれ? となって。昔だったら語れていたはずなのに、全然わからない、見失っていると。僕は残り一年間をICUで過ごすけれど、このままだらだらと終わりたくないと思って。じゃあ、何が今足りていないんだろう、或いは何に惹かれて入学して、何を楽しんでいたんだろうと考えて。

 一年生の頃を思い出したんです。当時、僕は生き急いで300番台とか大学院の授業とかに行っていたんです。そこで衝撃を受けたんですよね。何故生きるのかとか、神はいるのかとかについて、先輩たちは本気で向き合っていた。社会では「何そんな考えてんの」「面倒くさい」とか言われるようなことに対して、言葉を詰まらせながら粘り強く、自分と社会と向き合って自分の思いを語って。各々、きっと家族の問題だったり、不条理な出来事だったり、個人的な理由が裏にはあったんだろうけど、それとちゃんと向き合ってそのなかを生き抜いていくために、自分と相手に妥協せずに学び合っていた。それからインスパイアされて皆で考えたり。そして、向き合っているからこそ、傷ついていたり、傷つけていると自覚していたりする先輩もいて。それでも学び考え続けようとする姿勢が教室ではあった。だからこそ、ある哲学者の思想を皆で読んだときに、急に「これは許せない」と怒り出す先輩がいたり。或いは、悲しんでいる先輩がいたり。そういう人たちがうじゃうじゃいたんですよね。

 今になってそれを思い返して、ああいう熱い学びをしていないなって。そもそも教室で授業をやっていて行けることもあったのに、僕はそれすらも一歩踏み出せていない。画面越しで受けて、疑問とか思いはあるけれど、向き合いたい、向き合わなければいけないこともあるけれど、もう画面の中なので退室して終わるっていう。環境のせいにしちゃいけないと思う。だけど、実は一年生の頃やっていたことって簡単にできることではなかった。自分、他者と話したり向き合ったりすることって、痛みや不安が伴うものだから。それはやっぱり「ICUらしさ」を感じていた、学びへの姿勢だったなと。

S:私はノスタルジアみたいなのが全くなくて。一年生の頃に印象的な授業もなければ、そもそも授業にあまり行けていなかった。これは、勝手な私の良くない感情なんですけど、「良いな、カナダハウスの人は学生サービス部長や理事長と繋がってて、会って話して」とか思っていたんです(笑)。私にとってのICUには、そこまで熱い先輩とかもあまりいなかった。一部の人たちが享受している、或いは享受していた、「ICUらしさ」を戻そうという議論には疑問を感じるんです。それだけが「ICUらしさ」じゃないって思うんですよね。そもそも、大学にそこまで帰属意識を持つべきなのかというところも疑問だし。実際、イベント準備のためにICU生にヒアリングをしたところ、別のコミュニティで活躍しているから「ICUに思い出はない」と言い切る人もいたんです。オンライン授業だからこそICU生であることにそこまで意味を見出さない人もいるのは事実だと思います。

 それでも、私がこの企画に参加したいと思ったのには、ICUとの関わり方の多様性を踏まえた上で「ICUとは」と、議論をしたいと考えたからです。

ーーなるほど。WGでも「啓蒙的なイベントにはなってほしくない」「今の学生が昔に戻ることを本当に望んでいるのか」というような意見が挙げられていました。

スティーブン:個人的な思いはあるんだけれど、「ICUらしさ」みたいなものが本当に存在するのかというのもわからないというのが、前提としてある。でも、昔のICUを知る人に聞いてみると、「あ、良いな」って思う瞬間の話とかはあったり。あとは、伊藤が言っていたような議論、討論というより対話ですよね。そういうのがあったなと思って。それは良い「ICUらしさ」かなとやはり思う。

 Sが話すことも仰る通りだなと思うけれど、時代が変わるなかで変わらないものって絶対あると思うんですよ。そこは絶対あるなって。何かが変わっているからと言って、全部が変わったわけではなくて。本質的な普遍性というのは、絶対存在し続けるなと。そこが何なのかというのが今回問いたかった部分です。一つの集合体としてのICUという、そこには普遍性が絶対あるんじゃないかなと思う。そこを再考したいという思いです。

ーー春学期から対面の授業が増える予定です。授業が対面に戻れば、「ICUらしさ」は戻ってくると思いますか。

スティーブン:難しいと思います。というのは、「ICUらしさ」が存在するとして、それが薄れてきた現状があり、感じていない、体験していない世代が大多数であるからです。

S:私はこのイベントを通してこれからの「ICUらしさ」を再興する、つくりあげることはできるかなと思っていて。今までの何かを取り戻すというよりも、これからはこうなんだというのを何となく提示して、それをどんな風に毎日の生活のなかで体現していけるか、みたいなところを議論すれば、そこに全く希望がないという訳ではないと思うんですよね。なので、皆に本当に来てほしい。

伊藤:うんうん。結局はICUを作るのは、現役の僕たち3000人足らずなわけで、ICUらしさは僕たちから立ち現れていくものだと思う。だから今のICUのみんなともっと会いたいし、僕たちだから楽しめるICUでの生活を盛り上げていきたいな。イベントの最後には、バカ山で対面で出会って話せるような場をつくろうと思っていて。僕は僕で、自分の好きなICUらしさを卒業するまでは貫きたいと思ってるよ。ID26の新一年生たちが、ICUに来てよかったと思ってもらえたら嬉しいな。

ーー以前、オープンハウス境界線(現在休業中)の店主にインタビューをさせていただいたことがありました。そこでも「対話」や「ICUファミリー」がモットーとされていましたね。

スティーブン:あれ、良い取り組みでしたね。

S:私もnoteとか読んでましたよ。内容にめっちゃ共感しつつも、行く機会はなかったけれど。私にも色々な理想があるけれど、日常では毎日オンラインで部屋にいる。そのなかにどう落とし込むのかっていうところまで議論して、現実的にならないと結局何も変わらないなって思っているんです。そこまで考えるようなイベントにしたいと思っています。

※オープンハウス境界線へのインタビュー記事はこちら

ーー当日の流れを教えてください。

スティーブン:はじめに、Smooth Steppersの方々にパフォーマンスしてもらいます。イベントの背景とか、ICUらしさとかを基に自由に表現してほしいとお願いしたんです。ここで参加者の心にざわつきを、一つこう、さざ波みたいなものを立てて。

 その後、トークセッションで理事長にお話をしてもらう。さっき言ったように、「ICUの普遍性」、変わるものがあるなかで、変わらないものが何なのかということに関して。それって特にICUのなかだけではなくて、世間でも今よく言われていることで。コロナ禍で変わっていくものが多く、またデジタル化が進むなかで、変容の激しい社会になっているけれど、だからこそ変わらないものをきちんと見据えてフォーカスできるような人材とか、生き方が大事だよねという。ICUに拘わらず、そうした場所での普遍性について考えると。

 それを基に、パネルディスカッション。放送ぎりぎりの対話を理事長、学長、学生でしてもらうと。学生に関しては、今までキャンパスに来た事のない人とか、「THE ICU」みたいな人とか、色々な方面から連れてきて。ざっくばらんに話してもらう予定です。

伊藤:クロージングでは学長に詩を朗読してもらうんです。実は皆知らないけれど、学長はすごい詩人なんですよ。

 その後は、キャンドルフレーム。来てくれた参加者同士には実際に出会えるような場をつくれたら、一歩踏み出す機会にもなるかなと考えていて。梅の木の広場ありますよね、そこに丸太を幾つも置いておくんですよ。そこを5人とかで囲んで、元は小さいキャンドルが、本館から旧Dまでばーっと繋がる。きっかけとしては、僕がその眺めをみたかったというだけなんですけど。学生皆がばか山で出会って話して、交換し合って、その間には火があって、それって絶対美しいだろうなって。コロナ禍でそういったことが出来ていなかったけれど、ここに一歩踏み出し始めるきっかけがあれば、僕も一年間また違う意識でちょっと勇気をもって授業に励める、対話に踏み出せるんじゃないかなと思って。

ーーなるほど。学長の詩の朗読はどういった運びで。

伊藤:そうですね、僕は詩を読んだり書いたりするのが好きで。学長の詩集も持っているんです。学長がICUについて、或いは今の学生に対して詩を書いたら、何を言うんだろう、それ聞きたいぞって思ったんです。

ーー全体の流れは以上のような感じですね。この企画は一日のみの開催なんですか。

伊藤:夢としては……。

スティーブン:あれだよね、10年続くイベントにしたいっていう。

伊藤:そう、毎年できたら。ICUの大学全体版リトリートじゃないけど。

スティーブン:それこそ、アクションがつながるイベントになればいいかなと。やはり一回で終わるとね。そこも含めて企画を頑張っています。

伊藤:どう継続していくのかが大事、毎学期やってくれよって言ってくれた先生もいましたね。職員の方々も結構熱くて。

スティーブン:前のめりで沢山手伝っていただいてね。

ーーところで、招待状には理事長の奢りがほのめかされていました。最後に、例のカツサンド作戦についてお聞かせください。

伊藤:そう、カツサンドは頑張って実現しようと思っている。因みに、試食させていただいたんですけど、めちゃくちゃ美味しい。

S:良いなあ。色々企画しているけれど、やはりこれだけじゃ人は集まらないと思うんですよ。ライトなもの、理事長の奢りとかがないとね。

伊藤:火も……。

S:火も楽しいと思うし、もっとみなさんが楽しめるような取っ掛かりを工夫中です。楽しみにしていてくださいね!

 当日の対面での参加は既に100人以上の応募を受け、募集を終了している。少しでも関心を持った方には、オンラインで是非参加していただきたい。Weekly GIANTS Co.では、イベントレポートの執筆や「Rethink ICU 特別号」の発行等、今後も本企画の展開を追う予定である。

【Sylvie】

FOR MORE INFORMATION : Rethink ICU Instagram / Rethink ICU Facebook

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