ICU Compostインタビュー

 新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます! 突然ですが、ICUキャンパス内にコンポストサークルがあるのはご存知ですか? そのサークルが学生寮で出た生ごみから堆肥を作っているのはご存知ですか? 更には、その堆肥でキャンパス内の樹木や植物を育てたり、ナラ枯れ対策に使ったり、三鷹市の農家さんに活用してもらったりしているのもご存知でしょうか……? 今回は、そんな素敵な活動をされているICUコンポストさんに座談会形式でインタビューさせていただきました。

※インタビューは再構成済み

【座談会に参加してくださったICU Compostメンバー】

内藤敬花さん(ニックネーム:けいか、ID27)

人類学、心理学、環境研究、MCCなど……迷い中

一言:北海道出身で自然は身近にありましたが、このサークルに入るまでコンポストの存在は知りませんでした。今では、皆でわいわい話しながらやるコンポストが一週間の楽しみの一つです。

鈴木奏美さん(ニックネーム:かなみ、ID26)

環境研究メジャー

一言:このサークルに入って、初めてコンポストを知りました。サークルへの参加を通して、ゴミ問題や自らの食について考えることが増えたことをありがたく感じています。

高岡愛果さん(ニックネーム:あいか、ID27)

環境研究、社会学に興味あり

一言:小学校、高校3年でコンポストに関わる機会がありました。皆で考えて、工夫しながらコンポストをする時間が好きです。

丸山結実子さん(ニックネーム:まる、ID25)

歴史学メジャー、環境研究マイナー

一言:生ごみを堆肥にするのは地味な作業だけど、compost は人間とごみ・食の不可視化されたつながりを再発見させてくれるもの。コンポストは、sustainabilityの体現だと思ってます。

渡邊菜々子さん(ニックネーム:菜々子、ID27)

人類学か環境研究メジャー

一言:もともと農業も堆肥作りもあまりしたことはなかったけど、コンポストに興味があってこのサークルに入りました。コンポストを通して自然に関わる事ができてうれしいです。

Caverly Daichi(大地)さん (ニックネーム:大地、ID24)

文化人類学メジャー、文学マイナー

一言:アメリカの高校で初めてコンポストを始めました。自然に近い生活をしたいと思って農業やコンポストに興味を持ちました。

活動の軸は「循環」〜キャンパスで生まれるサイクル〜

ーーICUコンポストの活動について教えてください。

大地:ざっくり言えば、ICUのキャンパス内に「循環」を生み出す活動です。そのために、寮の残飯を集めて堆肥にしたり、キャンパス内の木に堆肥をあげたり。最近はちょこっと畑もやっています。

生ごみの循環(インタビューを元に作成)

現在の主な活動

  1. 寮内で回収した「生ごみ」の行き先を確保
  2. 有機ゴミから堆肥を作り、キャンパス内の植物を育成、ICU祭にて販売
  3. フィールドトリップや自主勉強会、三鷹市の農家(冨澤ファーム等)との交流、堆肥の受け渡し
  4. ナラ枯れなど、キャンパス内の環境問題への積極的な取り組み

けいか:2023年度のICU祭で、実際に堆肥を売りました。考古学の先生や藤沼先生とかが買ってくれましたね。ひと袋500円で販売して、最終的に総額7千円くらいで全て売れました! 堆肥以外にもローズマリーを売りました。キャンパス内の竹を切って、それにローズマリーを植えて。

まる・大地:旧理学館前にあるみかんとグレープフルーツの木もコンポストの土を食べて成長しているんです。噂ではめちゃめちゃ美味しくなったらしい……!

▲2023年度ICU祭にて実際に販売の様子
コンポストパイルが出来るまで(インタビューを元に作成)

ーーICUコンポストはいつ、誰が始めたのですか?

大地:僕とリラ(現在は留学中)で始めました。僕は樅寮に住んでいるんだけど、コンポストのことを話していたらリラとここでもコンポストやろうってなって。最初は僕らのフロアだけだったけど、しばらくしてもっと広げたいとなって。今の形、規模感につながっています。

まる:たまたま三女(第三女子寮)と四女(第四女子寮)の交流会があって、そこでリラと出会いました。何興味あるの〜って話していて、環境に興味あるよって話をしたらコンポストの話になって。私も、家でも高校でもコンポストをやっていたから、そこで意気投合して一緒に参加させてもらうようになりました。

大地:クラブとして形づいたのは2022年の秋(11月)ですね。

けいか:(寮の生ごみ提供について)メンバーは基本的に寮生で、今のところ参加率は60%くらいです。

【取材当時 参加している寮またはフロア】

樅(Momi)6F, 5F / 楓(Maple)) 5F, 3F, 2F / 樫(Oak) 2F /

欅(Zelkova) 3F, 2F, 1F,  / 銀杏(Gingko)3F, 2F, 1F / Canada / 第四女子寮(4WD) /

第三女子寮(3WD) / グローバルハウス(grobal house)1ユニット

ーーほぼ一年でそれだけ活動の輪が広がっているのはすごいですね。どのような呼びかけをしましたか?

大地:寮代表者会議で議題にしてもらって、そこでプレゼンしたり(寮やフロアごとで参加の是非を決定する)Google formを送ったり。

ーー寮の管理人さんとの軋轢とかはなかったですか?

まる:コンポスト自体をやるなとは言われていません。ただ、銀杏寮の前にあるダイアログハウスは偉い人が泊まるから、ゴミはゴミステーションの中に入れといてくれ、みたいなことは言われたらしいです。逆に宣伝になるからいいじゃんって思ったけど、基本的に規制されてはいません。

取材経緯

 取材者の一人が中嶋財務理事のゲストレクチャー『書を捨てよ、森へ行こう』にて、丸山結実子さん(ID25)にお会いし、ICU Compostを知る。その後、人類学の講義がきっかけでICU Compostの活動に2週間、フィールドワークとして参加させていただいた。実際に、活動に参加することで一層ICU Compostやメンバーへの関心が高まり、今回、サークルの活動内容を中心にICU Compostのメンバーにインタビューをお願いする運びとなった。

寮外にも広げていきたい、コンポストの輪

ーー基本的に寮ベースで活動されていますが、今後の活動として、寮生だけなくICU職員やキャンパス周辺に住む学生のゴミも回収する可能性はありますか?

まる:まだまだ少ないけど、寮生じゃない一人暮らしの学生のゴミを受け入れたことはあります。

菜々子:大学院生の方で最近入部したグレイスさん(大学院生)の生ごみを回収しているね。

ーーガッキの生ごみは回収していますか?

まる:ガッキ(学生食堂)で出る生ごみを全て回収するのは難しいと思います。毎日30キロくらい出るので、畑まで運ぶのが大変。それこそ軽トラが必要な量ですね。ただ、2024年春学期から、調理過程で廃棄される野菜くずを週1回のペースで回収しています。

ーー活動に参加させてもらった時、私も生ごみが入ったバケツを持ちながら走ってたんですけど、足手纏いすぎて……(笑)。結局、自転車の人にバケツを持ってもらって私はただ走るだけになりました。

まる:生ごみの重さを計測してバケツに入れて運ぶとなると結構大変なんです。運んだ後も、バケツを洗って返す作業が残っている。なので、「生ごみ」があるのは嬉しいけど、ありすぎても困ってしまいます。土地も人員も限られているので。

ーー(コンポストについての)勉強会はしますか?

大地:先日、熊本と大分にフィールドトリップに行きました。その後から、温度測ったり、重さ測ったりするようになって。あのフィールドトリップは結構重要でした!

ICU Compostフィールドワークの様子

バケツが罪悪感を軽減している? メンバーが抱える葛藤

まる:コンポストのバケツがあるから「もったいない」という罪悪感なく、食品を捨てることができるんじゃないかって。この活動が逆に食品ロスを助長しているかもしれないと思う時があります。これをある寮生から言われたときハッと気付かされましたね。APU(立命館)でコンポストの活動をしていて、オンラインで話した時にも、そういうディスカッションをしました。

菜々子:生ごみの重さを測る時、バケツの量が多いとちょっと嬉しい(笑)。でも、生ごみの量が多いほどいいというほど単純なことじゃなくて。もちろん、果物の皮とかはいいけど、まだ食べらるものが捨てられている時もあるので。

かなみ:たしかに。でも、バケツを渡しているけど、そもそもバケツをもらえない寮もあります。だからバケツの寮が多いと、それだけ協力してくれた寮が多い証拠。私は嬉しいと感じます。

ーーなるほど。そのようなジレンマが……。実際に(食品ロスが)助長されていると感じますか?

まる:はい。結構感じますね。まだ食べられるはずのキャベツとか玉ねぎとかがまるまる一個捨ててある時もあるし。

ーーキャベツとか玉ねぎとかがゴミとして捨ててある画は結構衝撃でしたね。

大地:どういう考えで(まだ食べられるものを)捨てたんだろうって思ってしまいます。捨てたらまた新しく買わなきゃいけないじゃん。ちょっと腐っていると嫌だなって考えになりがち。僕のひいおばあちゃんは、腐ったものを食べるくらい勢いのある人だったから、僕も食べ物やものを最大限に使おうっていう意識があるんだと思います。考え方の違い、背景の違いは結構大きいかも。

まる:農家さんとかにお邪魔させていただくと、その野菜がどれだけの時間をかけて作られているかとか、どれだけの愛情が注がれているかとか、そういうところに気付かされます。今自分が持っているものが当たり前になっているけど、その背景にはたくさんの知らないストーリーがあって。私はコンポストを通して、当たり前の裏にあることを知ることができました。

大地:コンポストはそれ自体独立した世界じゃなくて、この食べ物がどこから来ているかとか知るようになるんです。自然の中にある「循環」を見ることができる活動です。

まる:ただ環境に良いから、SDGsだからってこの活動をしている訳じゃなくて。人間が自然の一部として、私にできることがコンポストなんです。生きる上でどうしても出てしまうものをどうしようかって考えた時に、できることがコンポストかもってところに行き着きました。

あいか:日本語だと、調理中にでたゴミも、食べ残しも全部「生ごみ」って言うけど、私はそれを分けたいと思っていて。英語だと調理中のゴミはScraps、食べ残しはleft overといって言い方が分かれています。調理前のゴミは環境に返せるし、食べ残しは個人で減らしていける。言葉って意識的にも無意識的にも意味を限定してしまうから難しいですよね……。

ーーLeftって言っている時点で、された、(Left)した人がいるっていうことだから、比較的重たい言葉ですよね。よくSDGsって言われているけど、実際に自分の手を動かしてみるともっとリアルなものとして、もっと違うものとして、環境問題や保全の仕方が見えてくる。バケツから見える世界。コンポストにしか見えないルートがあると思います。

大地:やりなさいじゃなくて、コンポストっていうチョイスもあるよ!って伝えたい。りんごは腐ってる部分を削ればまだ食べられるし、フルーツの皮も天日干ししてたくわんにすることもできる。

菜々子:高校の時、Ugly food (見た目が良くないもの)を好きになるっていう授業があって。たしかに、見た目が悪い=体に悪いって思いがちだけど、たとえ葉っぱの色が少し悪くなっていても、別に体に害があるわけじゃない。まだ愛せるものだって感じられたらいいなって思っています。

生ごみってなんだろう。メンバーが思う「生ごみ」って。

ーーみなさんにとって「生ごみ」はどのような意味を持つのでしょう?

大地さん:分解できるもの全部。生態系の循環に害なく入ることができるもの。プラスチック以外。木材とかも含まれます。

丸山さん:一手間加えたら宝になるもの。自分たちが少し労力をかけるだけで、食べ物を育てる材料になる。そういう認識かな。

▲生ごみを回収するバケツ

けいか:コンポストに入部するまでは、生ごみはただのゴミって思っていました。でも今では、生ごみというと色々な意味を持つようになりました。例えば、私とみんなを繋げてくれたもの。自分と食べ物との関係について考え直させてくれるもの。食べ物の分身。ゴミっていう言葉を使わずに「生ごみ」を表現する言葉があればいいな。

かなみ:私は実家にいるので平日は料理をしないのですが。コンポストに入る前は、生ごみはゴミ箱っていうのが当たり前だったけど、今は次に繋がるもの。あって当たり前のもの、あっても良いもの、なくてはならないもの。みたいな認識になりました。

ーーよく「no waste」って言いますよね。でも、そのwasteってなんなんだ?って思うんです。普通に考えたら、物質的に(ごみを)なくすってことになるけど、それは自分がwasteって思っているからwasteになるわけで。そういう考え自体を変えていくって意味も込められているのかなと思います。そもそも、それがwasteなのかって一回立ち止まること。生ごみって名前がついているけど、それと距離が近くなればなるほど、解釈の余地が生まれるし、仲間になれるようになれるような気がします。

最後に読者の皆さんに伝えたいこと

大地:興味持ったら、一回来てちょうだい。一緒に土いじろうぜ。learning by doing 。実際やらないとわからない!初めは生ごみいじるって抵抗あるかもしれないけど、そんなに嫌なことじゃない! 人間そんなに弱くないから、生ごみ触ったくらいで死にやしません。一回偏見を捨てて、来てみて欲しいです。まあ実際ちょっとくさいけど(笑)。

まる:ものごとの背景や過程を知ること、当たり前だと思っていることが実は当たり前じゃないということに思いを馳せること。こういうことが、大量生産・大量消費の時代でこそ、大事だなと思うんです。私はコンポストを通して、大事なことを学ばせてもらっています。そして、そこに意識を一緒に向けたいと考えています。ぜひ、一度畑に来てください。

▲実際の活動の様子
▲温度を測っているところ

インタビュー【小室・大澤】

記事編成【小室】

イラスト【大澤】

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