「リベラルアーツ講座」開催 村上陽一郎先生が語る、リベラルアーツの歴史と役割とは

▲講演会後の懇談会の際の村上先生。参加者ととても近い距離で交流されていた。
▲講演会後の懇談会の際の村上先生。参加者ととても近い距離で交流されていた。(photo by Shotaro Tsuchibuchi)

11月14日(土)、日本プレスセンターにて、国際基督教大学同窓会が主催で行う「ICU同窓会リベラルアーツ講座」第1回講演会が行われた。テーマは「大学とリベラルアーツ」。東京大学名誉教授であるとともにICU名誉教授であり、日本アスペン研究所副理事長である村上陽一郎先生を講師としてお招きし、大学という組織の歴史や、リベラルアーツとは何か、大学におけるリベラルアーツの役割について講演していただいた。

村上先生は、「リベラルアーツは教養教育として認識されているが、実は違うもの」と言う。そして、大学という組織の成り立ちや特徴にも言及した上で、現在のリベラルアーツ大学とは、「広く様々な可能性に触れる、『later specialization』であるべきだ」と述べた。また、そこから生じる「学生が自分が何を専門に学んだかの意識が希薄であり、リベラル・アーツ教育に対する社会からの認知も不足している」という問題については、大学院の活用を提言した。先生は、「自分の中に評価基準がしっかりあり、多面的にものを考え、どんなときでもどのような相手に対しても、自分の考えを相手に伝えることが出来、相手の考えを理解することが出来る人間」が現代の知識人であり、また、大学はリベラルアーツ教育を通じて、そのような人間を作る場所でありたい、と熱のこもった口調で述べた。

今回の講演を受けたとあるICUの学生は、「大学で学ぶ者として、大学の意味や、リベラルアーツの意味を学べました。今(ICUが)行っている教育に近いと思いました。専門性というものは薄いと思うが、長い目で見たとき、変動する世の中に対応できる、考える力を作るのがリベラルアーツだと思います」と述べた。また、高校生として参加した山下麻日さんは「前半のリベラルアーツの歴史のところは正直難しかったけれど、後半のリベラルアーツの授業は共感するところが多かったです。高校でも理系・文系どちらかに偏りすぎるのはよくないと思っていました」と述べた。

 

ICU同窓会の副会長である宮武久佳さんに、第1回講座を開こうと思った理由、その反省点、そして次回への構想を伺った。

「ICU関係者でない人に、ICUのことや、リベラルアーツの価値を広く知ってもらいたいという願いから企画しました。ICUを卒業し、社会人として仕事をしていく中で、自分たちの受けたリベラルアーツ教育の良さを実感している同窓生は多い。もしかしたら、この価値を身をもって知っているのは同窓生だけかもしれない。ならば、同窓会がリベラルアーツをICU以外の人に知ってもらう機会を作ろうと企画しました。それと、『小さくてもきらりと光るICU』を宣伝したいな、という思いもありました。

感想としては、村上陽一郎先生のご講義が本当に素晴らしかったということです。アンケート調査によると、来場していただいた方の多くが感動して下さったたため、関係者一同、実施して良かったなと思いました。一番大きな反省点としては、講演の時間が足りなかったこと。先生の『規矩』に関する説明がきちんと聴けなかったことです。

第二回講座に関しては、具体的な構想はまだありません。しかし、予想以上に好評でしたので、第2回目をあまり時間をおかずに実施したいと思っています。『村上陽一郎先生の話をもう一度聴きたい』という声が強かったことだけ、この場でお伝えしておこうと思います。次の講演では、現役のICU生にもっと来てほしいです」

 

今回の講演は「大学とリベラルアーツ」という、現役のICU生もよく知っているテーマを扱った。リベラルアーツが大学に、そして学生にどのような役割を果たしているのかが再確認できる講演であった。次のテーマがどのようなものになるのかは分からないが、ICUの良さを伝えてくれるものであるのは間違いない。この記事を読んでいるあなたも、ぜひ次回の講演には足を運んでみて欲しい。