平和憲法と安保法の行方:SEALDsとともに

"Peace cannot be achieved through violence, it can only be attained through understanding."" by Ginny is licensed under CC BY 2.0
“Peace cannot be achieved through violence, it can only be attained through understanding.” by Ginny is licensed under CC BY 2.0

12月5日(土)に国際基督教大学平和研究所主催で安保法についてのシンポジウムが行われた。定員180人の教室が満杯になるほどの熱気の中で、白熱した議論が行われた。当日の詳しいプログラムについては以下の通りである。

 

<第1部>

千葉眞(平和研究所所長)による挨拶

基調講演:「戦後憲法史のなかの<いま>――そのパラドクスを解くことの意味」

樋口陽一(東京大学名誉教授・憲法学)

基調講演:「2015年武力行使法――国際立憲主義の視点から」

最上敏樹(早稲田大学教授・国際法)

<第2部>

パネルディスカッション:「平和憲法と安保法の行方――SEALDsとともに」

司会:千葉眞

参加者:樋口陽一、最上敏樹、稲正樹(平和研究所所員)、小林叶、元山仁士郎(ICU学生、SEALDs)

(敬称略)

 

【登壇者経歴】

樋口陽一氏:宮城県仙台市生まれ。憲法学、比較憲法学を専門とする。東北大学名誉教授、東京大学名誉教授。日本学士院会員。日本学士院賞受賞。近著に『安倍流改憲にNOを!(山口二郎氏との共著)』がある。

最上敏樹氏:国際法、国際機構論を専門とする。早稲田大学教授。国際基督教大学名誉教授。近著に『国際立憲主義の時代』がある。

千葉眞氏:宮城県生まれ。専門は政治思想史、プロテスタント神学。国際基督教大学教養学部特任教授。「立憲デモクラシーの会」の世話人を務めている。近著に『「未完の革命」としての平和憲法――立憲主義思想史から考える』、『連邦主義とコスモポリタニズム――思想・運動・制度構想』がある。

稲正樹氏:憲法学、アジア比較憲法論、平和研究を専門とする。国際基督教大学教養学部客員教授。近著に『北東アジアの困難な過去―集合的記憶論集』がある。

小林叶氏、元山仁士郎氏:ICUの学生であり、SEALDsのメンバーである。SEALDsは、自由で民主的な日本を守るための、学生による緊急アクションを称する学生団体であり、安保法に反対して精力的に活動を行った。来年夏の参院選をめどに解散を宣言している。

 

シンポジウムは、第1部の講演会、第2部のパネルディスカッションともに滞ることなく行われ、最後には質疑応答の時間も設けられた。参加者はほとんどがメモを熱心にとっており、議論への関心の高さがうかがわれた。

樋口氏は講演で、日本国憲法がアメリカによって与えられたものであるのにそれを使い続けていることが、戦後日本が抱えてきたパラドクスであると指摘する。そのパラドクスを安倍政権がどのように扱うか、が大きな問題だと語った。続く最上氏は、自衛という言葉の解釈が定まっていないために、その言葉により、どのような行為が正当化されてしまう危険があるとの懸念を示した。

参加者からは「大学外の聴講者の多さ、意識の高さに驚いた。平和研究所は理想に向かって走り続けて欲しい」といった声や「わたしたちの求めている日本の姿に関して考えさせられた。声なき者の声を聞くことのできる日本になって欲しい」といった感想が寄せられた。

今回の講演会では、安保法についての真摯な議論が行われた。講演を聞くことによって、考えを深めることのできた参加者も多いであろう。私たち個人が問題を看過せずに向き合うことによって、日本がより良い方向へと進んでいくことを切に願う。