ATLAS対策のTips&Advice
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寒さが肌を刺す今日この頃、受験生の皆さんはいかがお過ごしだろうか。ICUの入試も目前に迫り、いよいよ大詰めといった雰囲気も漂ってきた。キャンパス内には雪が積もり、アスファルトは凍り付き、中間試験やレポートに追われる学生が忙しい日々を送っている。この記事では、ICUの一般入試で2015年度から導入された「総合教養(ATLAS)」について、アドバイスをお届けしたい。
ATLASってどんな試験?
総合教養(ATLAS)について、ICUの公式ホームページでは教養学部長の毛利先生によって以下のような説明がされている。
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新入試科目「総合教養(ATLAS)」
一般入試A方式とB方式の両方で使われる「総合教養」は「講義を聴き、それを基に設問に答える」という新しいスタイルの入試問題となっています。
実際の「総合教養」の試験では、まずあるトピックについて15分程度の短い講義(ミニ・レクチャー)を聴き、それに関する学際的な設問に解答します。その後、講義トピックについて人文科学、社会科学、自然科学の観点からの論述等を読み、それぞれの設問に解答します。これら4つの領域における設問は合計40~45問です。実際の試験時間は講義部分を含めて80分です。
「総合教養(ATLAS=Aptitude Test for Liberal ArtS)」は、ICUのリベラルアーツ教育の世界を俯瞰する地図。ICUから受験生の皆さんへのメッセージでもあります。
楽しくチャレンジしてください。
教養学部長 毛利勝彦
(https://www.icu.ac.jp/admissions/april/general/atlas.html)
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このページには2017年度の問題も掲載されているので、ざっとどういった試験なのかを理解するためにATLASの音声を視聴しておくことをすすめる。もちろん過去問にチャレンジするのもよい。筆者は現在2年生で、2016年度の入試を経験した。その際に解いていたのは「BUCHOのICU受験対策/国際基督教大学受験情報(https://icu.bucho.net/)」 の過去問だ。筆者はこれのオンラインレクチャーの受講生だったので、とにかく過去問や、ATLASの類題を解いてみることが、筆者にできた唯一の対策だった。幸い合格はできたので、少なくとも間違った方法ではなかったのだろう。
疑似的な講義を体験するには?
「講義の音声を聴いて内容を理解することへのイメージがわかない」という方もいらっしゃることだろう。筆者が個人的におすすめしたいのは、「視点・論点」と「時論・公論」というNHKの番組を視聴することだ。大切な入学試験の前にテレビ番組の視聴なんてとんでもない、とお思いになるかもしれない。だが、この番組ではATLASに慣れるために重要な、「なじみのない事柄についてのミニ・レクチャーを聴き、理解する」ことが練習できるのだ。「視点・論点」では広範な事柄についてのまとまった説明を聴くことができるし、「時論・公論」はNHKの解説委員による時事問題のレクチャーを聴くことができる。ATLASで聴くことになるミニ・レクチャーは「15分程度の短い講義」で、いま紹介した番組よりは少々長いけれど、参考になる点は多いだろう。
そして、ICU自身も、外部からのアクセスで視聴できる講義の動画を提供している。それが、ICU Opencourseware(以下OCWと表記)というサイトだ。どういうサイトなのか、以下、”About ICU OpenCourseWare”より引用する。
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世界中の教員、学生、そしてすべての学習者のために、講義録や講義ビデオなど、実際の大学のコースの情報を無償で公開する画期的な取り組みが、マサチューセッツ工科大学を起点として始まり、世界に広がっています。国際基督教大学(ICU)は、この取り組みを日本で推進する日本オープンコースウェア・ コンソーシアム(JOCW)の一員です。
「知識」に誰もが自由にアクセスできるようにすることは、リベラルアーツ教育へのICUの強いコミットメ ントを反映するものであり、ICUのコースを公開することは、今日の世界が直面している複雑で多岐にわたる課題に世界の人々とともに取り組もうとする意思 の表明でもあります。 これらのコースが、先入観にとらわれず「知識」を得、自由に思考し、学びたいと願うすべての人にとって刺激となることを願っています。(http://ocw.icu.ac.jp/about/#Japaneseより)
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このように、これはICU生以外の学習者に向けて講義を公開する取り組みである。ATLASのミニ・レクチャーは当然ICUの教員が作成すると思われるので、これは一見の価値がある。特に、公開されている様々なコースのなかでも、分野ごとの専攻の授業よりも”General Education(一般教育科目)”を参考にするのがベターだと感じる。なぜなら一般教育科目は、それぞれの学生の専攻でない分野について触れる機会として想定された授業が行われるため、専門科目より一般的なアプローチで学ぶ科目であるからだ。
そして、もう一つおすすめなのが「高校生向けコンテンツ」というページに掲載されている、ICUの教員が自身の専門分野について、短い時間(とはいってもどれも1時間弱はあるが)で行った講義を視聴することだ。筆者が視聴したなかでおすすめしたいのは「美術・文化財」メジャーで教鞭をとられている伊藤亜紀先生による「縞でなにが悪い」と、文学メジャーの生駒夏美先生の「文間を読む、構造を見る:文学研究の醍醐味とは」である。どちらも、実際のATLASのミニ・レクチャーより長い時間である。しかし、考えてみてほしい。ICUの授業は1コマ70分で、「スーパー4時限」(通称ロンフォー)の授業は105分(!)もぶっ通しで行われるのだ。入学後のことを考えてみればATLASの約15分間のミニ・レクチャーなんて怖くないという気がしてこないだろうか。
「視点・論点」と「時論・公論」、OCWの講義を聴く際にはメモを取りながら聴き、あとで自分なりに何が重要だったかを書き出してまとめる練習をしておくと、ATLASのみならず今後の大学生活で授業を受ける際にとても役に立つだろう。
「トピックが広範すぎてカバーしきれない」という問題をどう解決するか
さて、ATLASでは人文科学、社会科学、自然科学の各分野から文章が出題され、それぞれ10問程度の設問に答える必要がある。受験生の皆さんはあまりにもざっくりしたジャンル分けに辟易しているかもしれない。だが、ICUの公式ホームページの教員一覧を見てほしい。そして、それぞれの先生の名前をクリックすると先生の経歴や専門分野が書かれた、プロフィールのようなページが出てくる。これは、「人文科学」「社会科学」「自然科学」と大きく括られているなかで、大きなヒントになりうるのではないか。1989年度以降の入試問題を全て解いた筆者は、ICUに入学してから「あの先生がこの年度の問題を作ったのかな?!」などと、もちろん明確な答えはないのだが、心の中で驚くことがままある。筆者には当然、次はどの先生が問題を作られたのかなど知る由もない。そのため、これは参考になるかもしれないとお伝えすることしかできないが、調べてみても損はないだろう。
長くなってしまったが、ここまで読んでくださった方に厚く御礼申し上げたい。受験生の皆さんは、体調を崩さずに今まで勉強してきたことの成果を発揮できるようにしてほしい。春にキャンパスでお会いできることを楽しみにしている。