【宣伝記事】劇団黄河砂2019年春公演『暁之夜』の裏側を探る
|5月12日(日)から14日(火)までの3日間、ディッフェンドルファー記念館東棟オーディトリアムホールにて劇団黄河砂2019年春公演『暁之夜』の公演が行われる。今回、劇団関係者の協力の下、本誌記者が通し稽古(リハーサル)に潜入取材。公演の全貌や魅力に迫った。
物語の舞台は仮想世界の中の幕末の日本。長引く革命により、疲弊した江戸の街。そこでは、カネのため、ガス抜きのため、倒幕運動が幕府や一部の志士に利用される茶番へと成り下がっており、幕府は「暁」という機関を設立して動乱を企画、運営していた。物語はそのような時代の、老婆を殺したある女のシーンから始まる。高い志を持つはずの彼女はカネの為に人を殺したことを悩み、葛藤する。その裏でうごめく志士と「暁」によって、倒幕運動に巻き込まれていく彼女。そして、暗躍する坂本の影。「ええじゃないか動乱」をきっかけに幕末の江戸は大きく揺れ動き、傾いていく。
観劇して、記者は推理小説を一冊読み終えたような気分になり、本作がとても練られた物語であると感じた。物語の序盤に散りばめられた謎が、終盤に一気に解明していく様は圧巻の一言だ。それは、表の顔と裏の顔をうまく演じ分ける役者の功績でもあると言っていいだろう。
通し稽古終了後、演出担当のカズヒロさんに意気込みを伺った。
▲『暁之夜』演出担当のカズヒロさん
――今回は完全にオリジナルストーリーということですが、どのように脚本を作りましたか。
まず自身が歴史が好きということから、時代ものにしたいという思いがありました。その中で人の感情を描きたいと思い、何をテーマにすれば一番描きやすいかなと考えたときに思いついたのが、社会体制の変容がある倒幕でした。物語の一部にはドストエフスキーの『罪と罰』の要素を加えてあり、 物語の重要人物である橘をめぐる人間関係について参考にしました。
▲幕末にも、かの有名なシチュエーションは浸透しているようだ。
「じゃあ俺が人斬り以蔵をする」
――役柄においては一人で複数の役を演じていますが、どういう理由があるのでしょうか。
演劇でできることの可能性を広げたいという思いがありました。演劇の面白いところは同じ舞台の上であるのに場面転換で違う場所に飛んだり、同じ人が複数の役を演じたりするという、変化できるところだと思います。今回の劇がまさしくそうで、なるべく見ている人にとって分かりやすい人物像や場所を作ることを心掛けています。
▲橘(右)に倒幕に参加するように説得する安吾(左)。
「あいつらは志に酔っているだけだ。しかし君には行動する勇気がある」
――観劇者が想像しやすいように気を付けていることは何ですか。
できるだけ舞台機構をシンプルにしています。今回は舞台に常に置くものは箱馬のみで、背景も抽象的な柄にしています。これは場面転換が多い劇なので、一つのイメージに固定しないためです。また、脚本を書く上では、場面のつながりにひと工夫を加えています。前の場面から次の場面に移る際に、何かしらの共通点を残すということです。例えば、前の場面の最後に花火の音が鳴ったら、次の場面では別の場所で花火を聴いているところから始めるといったことです。
▲一蘭(左)にかけ寄る橘(右)
「馬鹿。落ち着いていられるか。久しぶりにあったんだぞ」
――見どころや、注目してほしい点はありますか。
やはり、劇の最終部における人の感情のぶつかり合いや、その最中の役者の表情に注目してほしいです。脚本を作り始めた当初は、社会体制が変わる物語を描きたいという思いでしたが、ただ倒幕するだけでは劇として単調なものになってしまうと気が付きました。最終的には、物語は人の感情の動きをベースにすることでしか書けないと考え、そこに力を入れました。ただ倒幕を、というのではなく、倒幕を企てる人々の関係や感情を楽しんでもらえたらと思います。
▲木阿弥が銃を構えるシーン。銃口の先には誰がたたずむのだろうか。
「この銃声一発で、新たな扉が開く」
――最後に、今回の公演の意気込みを聞かせてください。
新入生にとっては初めて黄河砂の演劇を観る機会になると思います。ぜひ新入生も含めた多くの方に、面白い、入りたいと思ってもらえるようなものが作れたらなと思います。
――ありがとうございました。
劇団黄河砂『暁之夜』
公演日時
5月12日(日) 16:00開場 16:20開演
5月13日(月) 18:55開場 19:15開演
5月14日(火) 19:00開場 19:20開演
場所
ディッフェンドルファー記念館東棟 オーディトリアムホール
チケット価格
前売り券500円 当日券600円