【後編】卒業論文虎の巻

前編(http://weeklygiants.co/?p=5058

引き続きライティングサポートデスク(WSD)の利根川さんに、卒業論文のいろはをうかがった。大ボリュームの前後編・後編の今回は、文献の役割と探し方の極意、WSDから伝えたいことをお伝えする。

 

知っていますか?文献の役割と探し方

――卒論のテーマに関する基礎的な文献の探し方を教えて下さい。

卒論に使う文献の探し方は執筆者のメジャー、研究方法、テーマによってもいろいろだと思います。ここでは一般にいえることを述べますね。卒論につかう文献の種類ごとに、卒論を書くときどんな風に役に立つのか、どこを探したらいいのかを簡単にお伝えします。これらは、RSCでみなさんからのご質問を受けながら、自分でも論文を書いてきた知識・経験にもとづいてまとめたものです。研究課題によってはもっと違った文献の使い方もあると思います。

文献は大きく5つに分けて考えるのが便利ではないかと考えています。

  • 辞書・専門事典・ハンドブック類: 用語の定義、概念などを正確に厳密に理解し、用いるときに使うものです。図書館本館1階のレファレンスエリアの書架にあり、請求記号(Call No.) の頭にR(ReferenceのRの意味)が付いています。データベース化された電子版辞書・事典類は、[図書館HP> Search Resources> データベース> データベース一覧> レファレンス資料]からアクセスできます。
  • 新聞・一般雑誌: 事実や世相などの証拠に使いうことが多いです。紙媒体のものは図書館本館1階と地階にあります。請求記号の頭にP(PeriodicalのP)が付いています。DBも含めた新聞を探すには、図書館HP(トップページ)、「Search」欄の「新聞一覧」をクリックしてください。ICU図書館が購読している新聞が一覧できてDBへのリンクもあり便利です。
  • 図書: 特定のテーマについて深くあるいは体系的に知り、用いるのに適しています。ご自分の研究課題(Research Question)に関する先行研究調査(Literature Review)にも使います。ご承知のとおりICU OPACを検索し、請求記号をメモして書架から取り出しお使いください。電子版の本であるeブックはOPACで検索できますし、[図書館HP> Search Resources> データベース> データベース一覧> 本]からもアクセスできます。
  • 学術雑誌・論文: 論文はそれまでの研究にない新規性が求められるので、最新の研究成果を閲覧できます。最先端の研究は論文でしか手に入りません。ご自分の研究課題(Research Question)に関する先行研究調査(Literature Review)にも過去の論文を調査して用います。

紙媒体のものは図書館本館1階と地階にあります。請求記号の頭には新聞・雑誌と同じPが付いています。eジャーナルやインデックスのDBを検索すれば、研究課題についての電子版の論文を入手できます。その場合は[図書館HP> Search Resources> データベース> データベース一覧> 学術雑誌・インデックス]にアクセスし、自分の研究課題にあったDBを選んでから、検索してください。

非常にたくさんのeジャーナルやインデックスのDBがあります。自分の研究課題の論文を探すにはどのDBを検索すればいいのか迷うこともあるでしょう。そんな時は卒論指導教授に相談してください。WSDチュートリアルではチューターさんが相談にのります。RSC(Refernce Service Center)でもご質問にお答えします。

  • その他: 上記以外にもさまざまな種類の文献があります。例えば、統計情報、年鑑類、企業情報、法令文献などです。紙媒体のものはOPACで検索できます。電子版は[図書館HP> Search Resources> データベース> データベース一覧]で、探したいカテゴリーをクリックしてアクセスしてください。

「その他」を除き(1)~(4)までをまとめたイメージ図を以下に作成しました。

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なお、ご自分の探している文献がICU図書館では紙媒体でもデジタル媒体でも入手できない時は、①所蔵館から本を取り寄せ、論文のコピーを注文することができます。MyLibraryにログインして所定のリンクをクリックし手続してください。②TAC加盟図書館にあるときはTLLサービスで本を取り寄せることができます。TLLサービスの利用方法は図書館本館の出入口すぐそばのDSC(Document Supply Center)に聞いてください。③他の所蔵館へ行って自分でコピーを取りたいときは、[図書館HP> Services> 外部サービス> 紹介状> 紹介状発行申込フォーム]で紹介状を申し込んでください。

 

データベース、活用している?

――データベースについて補足することはありますか? 

強調しておきたいのが、ICU図書館が契約しているデータベースの豊富さです。ICU図書館の学術データベースは70を超えており、学生数3000人くらいの大学としてはこの数は非常に多いです。これらを活用しない手はないと思いますよ。

データベースの使い方はELAプログラムやCollege Compositionでの図書館員による資料収集法・DB検索法レクチャーで学んだことを参考に活用してもらえればうれしいです。ゼミ・クラスの担当の先生のリクエストによる専門分野に合わせたデータベース・レクチャーも実施しています。また、もしも分からないことがありましたらお気を楽にしてRSCにいらしてください。図書館員がお答えいたします。

 

学生のみなさんに伝えたいこと

――ありがとうございました。最後に、学生に伝えたいことがありますか?

WSDのマスコットキャラクター募集については別記事で取り上げてもらっています(http://weeklygiants.co/?p=4886)。(マスコットキャラクター募集の最新の続報をここでお知らせしますと、18点の応募がありました。今後の予定ですが、まずは応募作品を対象に「学内投票」を実施する予定です。図書館HP、WSD HPで近々お知らせしますのでお楽しみに!)ここではWSD自体についてご紹介します。

WSDの目的は、みなさんがアカデミックライティングの書き手としてすばらしく成長されますようサポートすることです。ですから、WSDチューター(研修を受けた大学院生)は相談のレポートや卒論に赤入れの修正や、具体的な指示出しはしません。それをすると、学生さんは自分で考えずに指示されたとおりにするだけです。つまり、ご本人の成長には結びつかないのです。

専門の訓練を受けたチューターさんにライティングのいろいろな疑問や悩みを話し、質問に答えていく過程で、みなさんが納得しながら解決策を導き出し、自分では知らなかった方法を試してみる手助けをしています。自分は書けているからチュートリアルは必要無いと思っている人にも、きっと得るものがあると思います。ぜひ、みなさんにWSDを試してもらいたいです。

日本語ばかりでなく英語でレポート・卒論を書きたい方や英語のライティング力を向上させたい学生さんも大歓迎です。 卒業後さらに修士課程への進学を考えている人にとっては、英語で論文を書けることは重要です。国際的な場で活躍することの多いICU生が、英語論文作成法のスキルを身につけておくことは、将来とても役に立つと思います。

学生さんの英語ライティング力向上の観点からみたICUの教学プログラムとWSDチュートリアルの関係は次の図にようになります。

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WSDでは、平日のランチタイムと4、5限に「予約不要チュートリアル」の時間帯を設けています。オスマー図書館地階の「WSDエリア」で、チューターさんがみなさんをお待ちしています。予約制もありまして、オスマー図書館1階のRSC内でWSD予約をすれば希望に合うチューターさんに相談が出来ます。予約の受付時間は月曜から金曜の8:50-17:30です。

先生方の授業・卒論指導とライティングサポートのチュートリアルはクルマの両輪であり、両者によって効果的にライティング・スキルを向上させることができる―これは日本のアカデミックライティング支援のパイオニアのひとり、佐渡島紗織先生(早稲田大学ライティングセンター准教授)の見解です。わたしも同感です。この秋にICUに短期滞在され、ライティング指導・サポートに多くの示唆を与えてくださったDr. Nancy Sommers (Director of the Harvard College Writing Program) も、アカデミックライティング・チュートリアルには教員による授業や卒論指導とは異なる独自の存在意義があるという見解でした。この言葉に励まされました。

 

最後に、ライティングのどんなことでもけっこうです。書き始めどころか1行も書いていない構想段階から最終段階まで、あらゆる疑問や立ち止まって考えていることなどをもって、どうぞ「WSD予約不要チュートリアル」(オスマー図書館地階WSDエリア)やチュートリアル予約(オスマー図書館1階RSC)にお顔を見せてください。提出前に書いたものをさらによくしたいというご相談、成績の付いた後のレポートの振り返りにも対応しています。

 

――ありがとうございました。

 

いかがでしたか? 卒論を書いている人には仕上げ前の確認に、卒論を来年以降書く予定の人にはこれから卒論のためにやりたいこと、するべきことを意識するきっかけになったでしょうか。困った時も、そうでない時もWSDさんはきっとあなたのICUライフを質の高いものにしてくれるでしょう。